被害額3000億円以上!? 「海賊版漫画サイト」の問題点とは

2018.7.13
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「海賊版漫画サイト」です。
社会のじかん

漫画は無料で読むものと勘違いしていませんか?

漫画やアニメを違法にアップロードし、ユーザーに無料で提供する海賊版サイト。10代を中心に大人まで、利用者はウナギのぼりに増え、被害額は3000億円以上。状況を改善するべく、4月、内閣府は「漫画村」をはじめとする3つの大手海賊版漫画サイトを対象にブロッキングの要請を検討すると発表。漫画やアニメは日本のクールジャパン政策には欠かせないもの。積極的な輸出をはかるためにも著作者を守っていかねばなりません。これを受け、NTTグループは3サイトに対してブロッキングを実施しました。

しかし、サイトのブロッキングは、憲法で保障されている、「通信の秘密」「検閲の禁止」に抵触するのではないかと、法律家やメディア業界から反発の声が上がっています。これまでも児童ポルノなど人権に関わり、ほかに手段がない場合には実施してきました。しかし、たとえブロッキングしても、サーバーやアドレスを変えればまた立ち上げられるので、いたちごっこにすぎないところもあるのです。

海賊版サイトを立ち上げるには、資金も労力もかかります。それでもなかなかなくならないのは、莫大な広告収入が得られるからです。優良企業の広告が、知らぬ間に海賊版サイトに掲載されていたケースも多々。そこで、海賊版サイトへの出広をなくし、資金源を断つことがサイトへの大きな打撃になると考えられています。悪質サイトの撲滅にはまず、(1)サイトに中止を要請。(2)ユーザーに利用しないよう要請。(3)広告掲載中止を要請。(4)検索にかからないよう制限を要請。そして最後に「サイトブロッキング」という手段を選ぶのが適当なのではないでしょうか。

私たち読者に求められているのは、海賊版サイトを利用しない機運を高めることです。たとえ使いやすく無料で読めたとしても、利用者が増えれば漫画は売れなくなり、制作者にお金が回らず、制作続行が困難になり、将来、新しい漫画が作られなくなるかもしれません。また、ブロッキングが広がれば、国によって通信の自由が奪われる事態に陥らないとも限りません。結果、私たちに跳ね返ってくる問題であるということを忘れないようにしましょう。

社会のじかん

堀 潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。新刊『堀潤の伝える人になろう講座』(朝日新聞出版)が好評発売中。

※『anan』2018年7月18日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)


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