不動産会社の女性経営者が教える! 初期費用でわかる「選んではいけないNG賃貸物件」

文・市岡彩香 — 2024.1.20 — Page 1/2
初めてのひとり暮らしは、どれくらいお金がかかるのか不安ですよね。今回は、女性に特化した不動産会社を経営する 平出雅美さんに「初期費用」について教えてもらいました。プロのアドバイス、ぜひ物件選びのヒントにしてください。

不動産会社の女性経営者が教える! 今さら聞けない「賃貸物件の”初期費用”」基本のき

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【女性が知っておくべき「賃貸物件」基本のき】vol.40

――初めてひとり暮らしをする方に向けて、初期費用とは何か教えてください!

平出さん 初期費用とは、賃貸物件を借りる際の契約時にかかる費用のことです。初期費用は全ての物件で同じ金額ではなく、同じ家賃だとしても初期費用が大きく異なるケースも珍しくありません。「同じ不動産会社に紹介してもらっているのに、物件によってなんで初期費用が違うんだろう?」と思われるかもしれませんが、1つの契約には大家さんや管理会社、仲介会社や保証会社などいくつもの会社が関わっているため、それぞれの方針や規定によって項目や費用は異なります。

――具体的に初期費用には、どのようなものがあるのでしょうか?

平出さん 賃貸物件を契約したらこの7つを支払うことが一般的です。

【1】敷金

平出さん 入居時に大家さんに預け入れるお金で、退去時の修繕費や家賃滞納時などにこのお金が当てられます。基本的には退去時に原状回復にかかった費用を差し引きして、余った敷金は戻ってくるお金です。

【2】礼金

平出さん 礼金は敷金と異なり、入居時に大家さんへ支払うお礼の意味を込めたお金のため返還されません。戦後住宅の供給不足だった時代に、住む場所を与えてくれた大家さんへのお礼として始まった慣習のようです。

【3】前家賃

平出さん 前家賃は、契約時に支払う家賃。契約月の日割り分の家賃と、次月1か月分の賃料を初期費用としてあらかじめ支払うケースが一般的で、2か月分は初期費用としてまとめて支払い、家賃引落しや振込は、3か月目からとなるケースが多いです。

【4】仲介手数料

平出さん 契約に関わる不動産会社へ支払う手数料です。上限は家賃の1か月分+税と決まっているため、それ以上の請求があった場合は支払う必要はありません。

【5】火災保険料

平出さん 賃貸物件に住む際、火災保険に入ることは必須になっており、万が一の事故や災害時に備えて加入します。ひとり暮らしの場合2年間で1.5~2万円程度が相場です。

【6】鍵の交換費用

平出さん 鍵の交換費用を入居時に支払います。物件によっては大家さんが負担してくれたり、交換が任意の場合もあります。

【7】保証会社の利用料

平出さん 連帯保証人をつけなくていい代わりに、保証会社の利用が必須になっている物件が増えています。保証会社は、家賃支払いが滞った際などに立て替えてもらったりと保証人の役目を担い、利用する会社により異なりますが、保証会社利用料は家賃+管理費の50%の金額に設定されている場合が多いです。

――初期費用を支払う際に、”敷引き”という記載を見たことがあります。これは何を指しているのでしょうか?

平出さん 敷金のなかで、退去時に戻ってこないお金のことです。「敷金3か月敷引き1か月」とある場合は、実質的には「敷金2か月礼金1か月」と同じ意味になります。「敷引き」といった表し方は店舗や貸事務所、関西方面で使われることが多いです。

――初期費用は、合計でいくら必要ですか?

平出さん 物件やエリアによって大きく差があり、引越し時期によっても初期費用の変動はありますが、一般的には月々に支払う家賃の4~5倍の金額がかかります。支払う直前になり「初期費用の用意が間に合わなかった!」とならないためにも、家賃の5倍はかかると見積もっておいた方がいいです。

――初期費用をできるだけ抑えたい場合、節約する方法はありますか?

平出さん 賃料や敷金、礼金はタイミングによっては交渉できる場合があります。あまり交渉しすぎても悪い印象をもたれたり、他の入居希望者を優先されることにも繋がりますので、必要な部分だけ相談しましょう。また、火災保険は指定のものではなく、自分で保険商品を選んで加入できる場合もありますので、少し手間はかかりますが、安いプランを自分で探して契約することで初期費用を抑えられます。物件によっては、鍵交換費用が任意で、交換しないことを選べる場合もありますし、家族を保証人に設定することで保証会社を利用しなくて済む物件も。不動産会社の担当者に、初期費用のなかで外せるものがないかどうかも確認するといいです。

――初期費用でわかる「選ばない方がいいNG物件の特徴」があれば教えてください!

NG1. 「初期費用が安すぎる物件」

平出さん 敷金礼金無料、フリーレント付きの物件は、初期費用が安い代わりに賃料が上乗せされて相場より高く設定されている場合もあります。安いと思ったけどむしろ割高になってしまったというケースも。初期費用だけで判断せず、初期費用+2年間の合計賃料を出して比較すると、本当にお得な物件なのか比べやすいです。

NG2. 「事務手数料など、他の物件にはない初期費用項目が多い物件」

平出さん 敷金、礼金、前家賃、仲介手数料、火災保険料、鍵の交換費用、保証会社利用料、こちらは一般的な初期費用の項目です。こちら以外に聞き慣れない項目がいくつもある場合は、管理会社などでオプションや費用が上乗せされている場合があり、初期費用が他の物件に比べて高くなります。

NG3. 「仲介手数料を、家賃の1か月分以上請求される物件」

平出さん 賃貸物件の場合、仲介手数料は上限が家賃1か月+税までと決まっています。もしもそれ以上の金額を請求されている場合は違反なので、その仲介会社は選ばない方がいいです。

――平出さんが、もしこれから初めてひとり暮らしをするなら「これだけは妥協せずに選びたい」ということはありますか?

平出さん  できるだけ交通の便がいい場所を選びます。毎日の通勤時間も合計すると膨大な時間ですし、交通の便がいいとフットワークも軽くなり新生活の充実度が上がると思っています。また、お部屋の新しさや設備は妥協したとても、インテリアは妥協せずに選んでお気に入りのお部屋にしたいですね。


楽しいひとり暮らしを始めるために知っておこう

いかがでしたか。初めての物件探しは、慎重に丁寧に。引っ越しを検討している方は、今回のポイントをぜひ参考にしてみてください。


教えてくれた人
株式会社東京女性不動産 代表取締役社長 平出雅美さん

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宅地建物取引士所持。不動産歴3年目、2021年11月に「東京女性不動産」を開業。
東京女性不動産は、安心してお部屋探しができることを第一に、相談から契約まですべて女性スタッフが担当。女性一人での東京のお部屋探しを、女性ならではの視点で親身にサポートしています。LINEでの相談もできます。安心して新生活を始められるように、ストーカー保険の提案やRefaプレゼントなどのサービスもあって、さすが女性にやさしい! 電子書籍「宅建の教科書」がKindleにて好評発売中。


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文・市岡彩香
anan web、anan Beauty+を中心に活動するフリーライター。これまでに取材した人数はタレントや経営者を含め500名以上。週7で自炊をするグルメ女子。


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