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何気なく使っている言葉、“免疫力”に迫る。

【免疫力知識1】免疫力は3つのシステムの総合力。
免疫とは、病原体からカラダを守る能力のこと。それに“力”のついた“免疫力”は何を指す?
「免疫は、さまざまな器官と連携してカラダを守っています。それらを円滑に機能させるための総合的な力が、免疫力といえるでしょう。それを支えるシステムが、“免疫系”“内分泌系”“自律神経系”の3つ。これらのバランスが崩れると免疫力が弱まり、病気にかかりやすくなってしまいます」(石井先生)
・システム1:免疫系
カラダを病原体から守る免疫システムの総称で、自然免疫と獲得免疫がある。関わる器官はT細胞が成熟する場所である胸腺や、T細胞やB細胞が集まるリンパ節など。
・システム2:内分泌系
カラダの働きを調整するホルモンの分泌を司る器官の総称。日中はノルアドレナリン、夜はアセチルコリンなど、さまざまなホルモンが分泌される。自律神経系とも密接に関わる。
・システム3:自律神経系
無意識のうちに、体内の状態を安定的に保つ働きを担う神経のこと。交感神経と副交感神経からなり、活動時は交感神経が、リラックス時は副交感神経が優位になる。
【免疫力知識2】免疫力は筋トレとは違う。
免疫力には個人差があるという。
「例えば、筋トレをするほど筋肉は鍛えられますが、免疫力はそうではありません。いくら免疫力をバランスよく整えても、自分に不利な病原体が体内に侵入すると撃退できずに罹患してしまいます。人それぞれ不利、有利な病原体が異なるのは、人類が滅亡しないための宿命。免疫力を整える際にも人と同じではなく、自分に合った方法を見つけることが重要です」
【免疫力知識3】免疫力は一日の中でも変化する。
最近の研究で、時間帯により免疫力の変動があることが明らかに。
「それには3つのシステムが関わっていますが、最も影響しているのは自律神経系。交感神経が優位になると、リンパ節の中に免疫細胞がとどまり、結果として増加。免疫力が高まります。交感神経は活動時に優位になることから、免疫力は夜より昼のほうが高いといえるでしょう。病原体には活動時に遭遇することが多いため、理に適っています」
【免疫力知識4】アレルギーと免疫力の高さは関係しない。
花粉症などのアレルギーも、免疫と関わりがあるという。
「アレルギーは、免疫細胞の誤作動により起こる現象です。本来、攻撃する必要のない異物に免疫が過剰反応することで、カラダにさまざまな症状が表れます。このように免疫が関係しているものの、実は免疫力とは無関係。いくら免疫力を整えても、特定のアレルギーに対して体質的に不利だったり、閾値を超えたりすると発症してしまいます」
【免疫力知識5】免疫力低下の大きな要因は「加齢」「乾燥」「ストレス」。
なかでも最大の要因は加齢。
「T細胞が成熟する胸腺が加齢とともに萎縮するため、免疫細胞の生産機能が低下し、数も減少します。また、乾燥も大敵。皮膚の乾燥により、細胞間のすき間が広がって異物が侵入しやすくなります。さらに、喉や鼻の粘膜の異物を排出する機能も低下してしまう。ストレスにも要注意です。強いストレスは、粘膜の機能低下を招き、胸腺の萎縮にもつながります」
あなたの今の免疫力は?
□朝スッキリ起きられない。
□在宅勤務で一日中家の中にいる。
□イライラしたり悲しくなったりすることが多い。
□つい同じ食品ばかりを食べてしまう。
□寝る直前までスマホを見ている。
□湯船に浸からず、シャワーで済ませがち。
□乾燥対策は後まわし。
→1つでも当てはまったら、自分に合う免疫ケアのはじめどきかも…
PROFILE プロフィール
石井 健先生
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ワクチン科学分野教授。『やさしくわかる! 文系のための 東大の先生が教える 免疫と感染症』(ニュートンプレス)を監修。
写真・藤原 宏(Pygmy Company) スタイリスト・岡本さなみ ヘア&メイク・伏屋陽子(ESPER) モデル・武田玲奈 取材、文・保手濱奈美
anan2439号(2025年3月19日発売)より