Q、眠気はどうして起きるの?
A、蓄積した眠気のピークと、体内時計のWの影響。
眠くないのに眠ることはできないので、睡眠には十分な眠気が必要。覚醒している間、眠気は疲労のように脳に蓄積して、最大になったところで入眠する。また、体内時計のリズムも大きく関係。朝、日を浴びることで体内時計がいったんリセットされて覚醒度が高まり、14時間くらいすると眠くなるようにセットされている。
Q、必ず眠るべきゴールデンタイムはある?
A、深い睡眠が得られれば、時間はほとんど関係なし。
午後10時~午前2時は睡眠のゴールデンタイムといわれていたが、最近では時間帯は関係なく、深い睡眠を得ることが大事だという見解がメインになっている。体の修復に必須な成長ホルモンが分泌されるのは、睡眠後最初に訪れるノンレム睡眠の最も深いステージの時。眠り始めにちゃんと深い睡眠がとれているかどうかに着目を。
Q、朝型人間、夜型人間って本当にあるの?
A、遺伝や年齢の影響で2つのタイプに分かれる。
早寝早起きの朝型の家系があるという海外の報告があり、時計遺伝子が関係している可能性が考えられる。また年齢も影響していて、思春期は最も夜型で、加齢とともに朝型の傾向が強まるとされる。幼少の頃から朝が苦手だった人は、夜型の可能性大。自分の型に合った仕事を選べば、心身へのストレスを減らすことも可能。
Q、睡眠時間は、やっぱり8時間がベスト?
A、平均6~7時間を目安に、ベストな睡眠を見つけて。
男女数十万人を対象に、睡眠時間と死亡リスクの関係を調べた米国の大規模な調査でも、日本の調査でも、平均睡眠時間7時間の人が最も死亡率が低く、短くても長くても死亡率が高くなることが判明。平均6~7時間を目標にしたいが、大切なのは自分にとってベストな質と量。日中眠気やだるさの出ない睡眠のとり方を模索したい。
Q、寝落ちするのは、深い睡眠をとれている証し?
A、睡眠の借金が多いサイン。眠りの質、量の見直しを。
寝落ちは、眠気がいつでも溢れそうな状態で、睡眠の借金が多い証拠。また、自分のパワー以上のことをこなし、眠気に鈍感になってしまった状態でもある。本来は、うつらうつらと眠気を感じながら、ゆっくり眠りに入っていくのが良質な睡眠をとる流れ。“眠気を感じてから眠る”というリズムを意識し、環境を整えることが大事。
Q、嫌なことがあっても、朝目覚めるとある程度スッキリできるのはなぜ?
A、脳の働きのおかげと、良質な睡眠がとれた結果。
睡眠中、脳は日中に起こった出来事に対する、記憶の整理を行っている。そこでいらない情報は捨て、重要なものを固定するので、嫌なこともある程度忘れられる。またスッキリした気分で目覚められたのは、心身の疲労がしっかり取れ、良質な睡眠ができたという証しでもある。一方、毎日朝一番に気分が落ち込むなら、うつ病の心配も。
Q、目覚ましが鳴っても起きられない人、希望時間に自然と目覚める人の違いは?
A、睡眠リズムがいい人は、自然に覚醒できる。
平日に睡眠負債を溜めず、休日に寝坊することもないなら、睡眠リズムが良いので、目覚ましに頼らず希望時間に起きられる率が高い。ただ、眠りが浅すぎて目覚めてしまう場合もあるので要注意。目覚ましより早く起きられても、スッキリ感がないなら、睡眠時無呼吸症やいびきの影響で、眠りが一晩中浅くなっている可能性アリ。
Q、夢遊病やおねしょが子供に多いのはなぜ?
A、脳の神経系の働きが未発達だから起こるもの。
子供によく見られるのが、寝ぼけたまま夜歩き回る“睡眠時遊行症”や、無意識の状態で突然泣き叫ぶ“夜驚症(やきょうしょう)”。また子供時代は、睡眠を妨げないよう、尿を濃縮させるホルモンの分泌機能も未発達なので、尿を我慢できずおねしょをしやすい。いずれも、脳が睡眠をコントロールする機能が十分に発達する頃には自然と治ってくる。
Q、大人になると、なぜ長時間眠れなくなるの?
A、子供の頃に比べて、必要時間が減るから。
子供の睡眠で特徴的なのが、脳の発達に重要なカギを握るレム睡眠の占める時間が、大人に比べて長いこと。子供が長く眠れるのは、脳の成長に不可欠で、日中の活動量が多く、休息に長時間必要だからというわけ。また、加齢に伴って体内時計のサイクルは徐々に短くなるので、早寝早起きに変わり、睡眠時間も減っていくのが一般的。
Q、寝相が良い、悪い、どちらが睡眠の質は高い?
A、寝返りを打つのは普通。でも過剰な状態は問題。
睡眠中に滞りやすい血の巡りを改善しているので、ある程度寝返りを打つのは必要。ただ、寝相は悪すぎても良すぎても問題。悪すぎる人は、睡眠時無呼吸症の影響を懸念。酸素不足で苦しくなり、寝返りを何度も打っている可能性がある。また、全く動かない人も心配。沈み込みすぎたり、体にフィットしすぎの寝具が原因かも。
渋井佳代さん 日本睡眠学会専門医。「スリープクリニック銀座」院長。患者のライフスタイルや職種に応じた、多様性に富むアドバイスに定評あり。女性ホルモンバランスの変化がもたらす睡眠への影響にも精通。共著に『女性のための睡眠バイブル』(主婦と生活社)。
※『anan』2022年8月31日号より。イラスト・髙橋あゆみ 取材、文・板倉ミキコ
(by anan編集部)