予約の取れないカレーの名店、千歳船橋『Kalpasi』が下北沢に新たなお店を……と聞けば高まらずにはいられないが、それがジェラート屋さんだった時の嬉しい裏切りったらなかった。ラインナップするのは、カルダモンピンクグレープフルーツ(気になる…)、レモングラスヨーグルト(爽やか…)、マサラチャイ(絶対うまい…)など定番と週替わり含めて約8種。カレー作りで培ったスパイスやハーブ使いが炸裂するなめらかなジェラートは夏の大正解だった。
「うちは2種盛りのダブルで味を選んでもらってます。シングルは置いてないの。南インドのミールスと同じで、混ぜて味を変化させるところに醍醐味があるから」と、店主の黒澤功一さん。店のコース料理の最後で出していたジェラート作りに夢中になり、いつか“カレー屋のジェラテリアを”と夢想してきた。マサラチャイはパキスタンの茶葉をしっかり煮出し、数種のスパイスにピリリとブラックペッパーの刺激が走る爽快さ。焦がしマスタードシードココナッツは南インドの定番ソース・ココナッツチャトニが発想源だという。「スパイスは熱してこそ、という視点もありますが、氷点下でもこれだけ香りと味が広がる驚きを味わってほしいですね。冷たくて甘い。だけどこれもカレーの一部だ! なんて言う人もいます(笑)」。カレーの鬼才が拓く道で出会うのは、未知と好奇心に満ちたおいしさだった。
ジェラートW 各¥530と共にカレーも楽しめる。こちらはクートゥ(野菜のカレー)にレモンチキンカレーとマトンキーマカレーをセットにしたカレー3種盛り¥1,390。カレーで口を燃やし、ジェラートで冷やし、また燃やし冷やしの永遠ループにハマりそう。
Curry Spice Gelateria KALPASI 東京都世田谷区北沢2-12-2 サウスウェーブ下北沢1F 11:30~19:00(カレーは16:00LO) 木曜休 インスタグラムは@kalpasi_shimokitazawa
ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)
※『anan』2020年7月29日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子
(by anan編集部)