
綾瀬はるかさん
『ひとりでしにたい』とは不穏なタイトルだが、本作は30代後半独身女子が、いつか訪れる死を安寧に迎えるよう模索する前向きコメディ。
「今をどう生きるかが見えてくると思います」
「原作漫画を読んだときに、共感できるところがたくさんありました。私自身もこの作品の主人公と同じく、結婚願望もなく、この歳まで仕事が大好きでやってきました。でもコロナ禍のときに身近な人も含めてたくさんの方が亡くなられて、死というものを身近に感じるようになって。このままひとりで死んでいくかも…と心配になり、孤独死の本を読んだこともあったくらいです」
綾瀬はるかさん演じる鳴海は、キャリアウーマンだった伯母が孤独死をしたことから、自身の将来に不安を感じ始め、終活に勤しむ。
「身近な人の死は絶対的に悲しいものです。でも、誰もが同じように歳をとって死に近づいていくわけで。死というものを、よくないものだととらえて怖がらずに、そういうものなんだと受け入れていくのって、すごくポジティブですよね。そうすることで、この限られた時間をどう自分らしく、楽しく生きるかが見えてくる気がするし、今の自分や時間を大切にしようという気持ちにシフトできるんじゃないかと思います」
原作は、カレー沢薫さんによる漫画。役を演じるにあたって、コミックに付箋を貼って臨んだという。
「原作の面白いところが結構ドラマでもそのまま描かれていたので、どういう表情をしているのか確認しながら演じました。でも、どうしても自分には再現できない表情もあって、悔しい場面もありました(笑)。逆に、漫画では成立しても、実際にやったらリアリティがなくなる部分もあったりして、どこまで原作を取り入れるかは難しかったです」
驚いたりショックを受けたり喜んだり、婚活&終活をしていく中でさまざまなことにぶち当たる鳴海を、綾瀬さんが表情豊かに演じている。作中には、なんと歌い踊る場面も。
「そんなにダンス経験はなかったのですが、曲も覚えやすいものでしたし、練習から楽しんでやれました。撮影の途中から、監督に自由に動いていいですよと言われて、わりとオリジナリティ溢れる動きになっているのですが、映像で見たらすごく楽しそうで面白かったです」
本作のプロデューサーが綾瀬さんにオファーしたのも、まさにそんな、どんなことも楽しんで取り組む明るく前向きな姿勢から。この撮影も、「こうかな?」とお茶目な笑顔でさまざまなポーズをとってくれた。
「今日かわいくしてもらったなとか、今日の洋服がかわいいなとか、そういうことで嬉しいんです。単純なんです。だから逆のときもきっと顔に出てると思います(笑)」
仕事においては「いろいろ挑戦させてもらえることが楽しい」とも。
「自分ひとりだけでやれること、考えられることってほんの少しです。だからどんな現場でも、できるだけ人の意見を聞きたいし、そうでいたいと思っているかもしれないです」
Profile
綾瀬はるか
あやせ・はるか 1985年3月24日生まれ、広島県出身。主な出演作に、ドラマ『義母と娘のブルース』シリーズ、『元彼の遺言状』、映画『ルート29』など。放送中の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』で語りを担当。
Information

NHK 土曜ドラマ『ひとりでしにたい』
30代後半を迎えた鳴海(綾瀬)は、愛猫と暮らし、推し活に勤しむ独身女性。ある日、憧れだったキャリアウーマンの伯母が孤独死したことをきっかけに、婚活を始めるが…。毎週土曜22時~、NHK総合にて放送中。ⒸNHK
写真・小笠原真紀 スタイリスト・山本マナ ヘア&メイク・栗原里美(ThreePEACE) インタビュー、文・望月リサ
anan2452号(2025年6月25日発売)より