
撮影:田中聖太郎
グローバルに活躍するStray Kidsが5月11、12日、そして翌週の17、18日の4日間にかけて静岡・エコパスタジアムにて「Stray Kids World Tour <dominATE JAPAN>」を開催した。昨年8月にソウル・KSPO Domeでの公演を皮切りにスタートしたこのツアーは、日本では昨年11月と12月に東京ドームと京セラドーム大阪で3日間ずつ公演しているものの、その時とはセットリストをガラリと変えて、スタジアム用にアレンジを加えた楽曲も多数用意。4日間で22万人を動員したStray Kidsの初スタジアム公演、その最終日の模様をレポートします。
この日はあいにくの曇天模様。そんなエコパスタジアムに「Stray Kids」のシャウトが鳴り響く。それに呼応するかのようにペンライトを上下に揺らすSTAY(Stray Kidsのファンネーム)。ステージに設置された大型モニターには巨人のごとき大きさでメンバーたちが次々と映し出され、Lee KnowとSeungminがモニターから身を乗り出すように客席を覗くシーンも。ステージに剣をふるう男が現れ、その動きに合わせて太鼓が打ち鳴らされる中、Stray Kidsと書かれた旗を掲げるマーチ姿のダンサーたちが登場。ふと音が止まり、スクリーン中央の巨大な口が開くと、中から金で縁取られた真っ白なナポレオンジャケット衣装のメンバーたちが現れた。

撮影:田中聖太郎
Felixが「やっほー!」とごきげんに挨拶してはじまったのは「MOUNTAINS」。ステージ中央から端に向かって火花が打ち上がると、Changbin、そしてHyunjinへと力強いラップがバトンタッチしていく。スタジアムサイズにスケールアップされたパフォーマンスに圧倒されているまもなく青い稲光がスクリーンに走ると、「Thunderous」がスタート。STAYが発する大きなコールがスタジアムを揺るがしたと思えば、続く「JJAM」ではHyunjinが早くもジャケットを脱ぎ捨て、気合をみなぎらせる。曲が終わっても歌い続けるBang Chan とChangbinにSTAYのコールも止まらず、コンサート序盤から早くも熱く盛り上がった。
5月10日と11日、そして翌週の17日、18日の4日にかけて行われた今回のスタジアム公演だったが、最終日を除くすべての日で雨に降られた“雨男”なStray Kids。そのせいか、曇りの最終日にも「いい天気です」とBang Chan がにっこり。自己紹介タイムでは坊主頭から少し髪が伸びたHyunjinが「俺のこと最強の雨男だとか、てるてる坊主だとか…。俺、大人気だね?」と愛嬌たっぷりに挨拶すると、晴れ男を自称するLee Knowは「ついに00ズ”(2000年生まれのHyunjin、HAN、Felix、Seungmin)に勝ちました。Lee Know様がいればいつも晴れですね」とうれしそう。
MCではメンバー同士わちゃわちゃ楽しいトークを展開するStray Kidsだが、ひとたびFelixが「Are you ready?」と叫ぶと、スタジアムの空気が一変。花道を歩きながら「District 99」をパフォーマンス。彼らがモットーとしている「Stray Kids everywhere, all around the world」の歌詞を持つこの曲はスタジアム公演においてもやはり特別な意味を感じさせる。センターステージに移り、STAYに少しでも近い場所から目を合わせ、手を振りながらもパフォーマンスになれば本気モード。畳み掛けるように始まった「Back Door」ではドアを叩く仕草を取り入れたダンス、そして会場の全STAYが力いっぱい叫ぶコールが会場にこだまし、Stray KidsとSTAYが一緒になってスタジアム公演を盛り上げていく。
ブラックのビジューが両胸を彩る真っ赤なジャケットにブラックのレザーに着替え、真っ赤なオープンカーに乗り込んだメンバーがステージに登場すると、ラテンなメロディがテンションを上げてくれる「Chk Chk Boom」。曲の合間にHyunjinがHANの頬をぷにぷに突いたり、Bang Chan はHANをバックハグしたり、パフォーマンスの最中にも余裕を感じさせる瞬間がいくつもあった。素肌にジャケットを羽織っただけのBang Chan は見事に仕上がった腹筋が激しいダンスの合間にチラ見せしたかと思えば、続く「DOMINO」ではI.Nがジャケットを脱いで黒いタンクトップ姿になり上腕二頭筋を披露する。花道を駆け抜け、客席に向けて水を撒きながら披露した鬼気迫るパフォーマンスはスタジアムの温度をどんどん引き上げていき、その勢いのまま始まった「God’s Menu」でさらに勢いは加速。最後にはメインステージいっぱいに広がったメンバーとダンサーたちで嵐のようなパフォーマンスを見せ、メンバーがステージを去った後もしばらく余韻が醒めず、スタジアムにはどよめきが残ったままだった。

撮影:田中聖太郎
ここからはユニットステージへ。これらのユニット曲はStray Kidsのデビュー7周年を記念してリリースされたデジタルシングル『Mixtape : dominATE』に収録されているもので、HANとFelixが披露したのは「Truman」。淡いブラックデニムに同じくパールをあしらったジャケットと同色のデニムパンツのHAN、パールをあしらった淡いデニムのロングッジャケットと同色のデニムパンツのFelixというリンクコーデの2人は、その声色もラップスタイルも対照的。低音で重いラップのFelixと中高音で速射砲ラップを放つHANのコントラストが魅力のステージだった。
続いて登場したChangbinとI.Nが披露したのは、バンドサウンドに軽快なサックスが走るメロディラインが印象的な「Burnin’ Tires」。マイクスタンドを手にメインステージを飛び出した2人、I.Nがメロディアスラップを叩き込めばChangbinは負けじと速射砲ラップでそれに応じる、盛り上がり必至のロックチューン。最後には息の合ったダンスで締めくくったかと思えば、Changbinがセンターステージにスイッチを発見。押そうかどうしようか悩んだ末に押してみたが、何も起きずに「なんで!?」と困惑するChangbin。I.Nも押してみるがやはり何も起きず…「今日もSTAYのみなさんの力がもっと必要です!」と合唱を要求。こうして会場のSTAYがアカペラで「Burnin’ Tires」を歌い、I.Nがボタンにヒップアタックをかますと、無事にステージに火花が上がった。おんぶをねだるI.NをChangbinが置いていくところまで、コントのような一連の流れもStray Kidsのコンサートならではのお楽しみだ。
ほのぼのとした笑いに包まれたスタジアムの雰囲気は、Bang Chan とHyunjinの登場で一変。2人が披露した「ESCAPE」はまるで一編の映画を観ているかのような濃密さ。センターステージに立ち並ぶダンサーたちと同じ白いガウンを着せられて曲が始まると、湿度の高いR&Bに2人の妖艶な動きが重なる。最後に2人がぎゅっと手を掴んでパフォーマンスが終わるまで、一瞬たりとも目が離せないステージは、のちのMCでHyunjinが「俺たち、最強だから!」と自信満々にコメントしたほど。
ユニットステージ最後を飾ったLee KnowとSeungminによる「CINEMA」は、高らかに想いを歌い上げるバラード。花道で互い違いに寝転んで空を見あげたまま歌う2人の美しい声がスタジアムにこだまして、空に吸い込まれていく。花火が打ち上がる中、客席のSTAYたちが一丸となって歌ったこの曲は、Lee Knowいわく「すべての瞬間をSTAYといっしょに歌うよ、という意味が込められています」だそうで、そんな言葉通りこのスタジアム公演の中でも特に美しいシーンとなった。
コンサートもいよいよ中盤へ。荘厳なホーンと重厚なドラムが打ち鳴らされる中、燃え盛る建物の中から巨人が姿を表すと、Stray Kidsの楽曲中もっとも壮大なスケールを誇る「GIANT」がスタート。今回のスタジアムツアーでは日本語楽曲として「GIANT」以外にも6月18日にリリースされる日本で3枚目のミニアルバム『Hollow』のタイトル曲「Hollow」、そしてLiSAのフィーチャリングが話題になった「Social Path (feat. LiSA)」が披露され、日本の公演ならではのスペシャルなステージとなった。

撮影:田中聖太郎
雷鳴が轟き、「また雨か…」というHANのつぶやきから始まった「TOPLINE (feat. Tiker JK)」からはいよいよクライマックスへ。疾走感あふれるメロディで最後まで駆け抜けた「Social Path (feat. LiSA)」、続く「LALALALA」ではスタジアムの観客が一斉にジャンプ! コンサートの盛り上がりが最高潮に達したところで、「今日一番の歓声を聞かせて」とSeungmin。しかも「ミッションをクリアしたらごほうびがあります」ということで、客席のSTAYから今日一番の大きな歓声を引き出していた。メンバーも納得の大きな歓声を聞いて無事ミッションクリア。そのごほうびは、現在ショート動画で大バズり中のラブライブ!の「愛♡スクリ〜ム!」の一節をLee Know、Hyunjin、Seungminが完全再現。しかし自分たちだけやるのではもったいないと、Lee Knowが「他のメンバーでもう一回見せてあげますよ」と言うと、「打ち合わせしてない」と渋るBang Chan、Changbin、HANの3RACHAが自分たちの筋肉を見せつけるオリジナルバージョンを披露。すると今度はBang Chan が「まだやってない人がいる」とFelix、I.N、そしてLee Knowを指名して再び披露。Bang Chan は「Lee Knowの新しいデビューを見てみたいです」とご満悦だった。
そんな楽しいお遊びを終えると、公演もすでに終盤。Lee Knowの「遊ぼうぜ!」という掛け声で始まった「MEGAVERSE」で雰囲気をガラリと変えると、Felixの低音ラップから始まる「MANIAC」では末っ子のI.Nが「レッツゴー!」とシャウト。刻んだギターが印象的な重厚なロックサウンドはStray Kidsの真骨頂。Bang Chan のシャウトを合図に全員が花道を駆けてセンターステージへ殺到すると、広いスタジアムを圧倒する覇気を放ちながらパフォーマンスし、クライマックスに相応しい盛り上がりを見せて本編は終了。

撮影:田中聖太郎
アンコールではツアーグッズのベースボールシャツにタオルなど、グッズを身に着けたメンバーがトロッコに乗って登場。SKZOOのきぐるみたちがトロッコを先導し、後ろにはSKZOOの巨大なバルーンが浮かびながらトロッコについていく様が見ていて楽しい。まるまる3曲を歌いながら広いスタジアムを1周し、遠くの席にいるSTAYたちとのふれあいを楽しんだ。「BLIND SPOT」ではそれまでSTAYが掲げていたペンライトをおろし、代わりにスマホのライトを付けてスタジアムを光でいっぱいに満たす一幕も。その光景を見ながらメンバーもうれしそうに笑顔を見せていた。
エコパスタジアムでの公演をすべて終えて、「最強のSTAYのみなさんと最強な時間を過ごすことができて本当に幸せでした」とHyunjin。実はスタジアム公演前から雨が降らないようにとてるてる坊主をつけて出国したそうだが、4日間公演のうち3日までが雨。自身を含めた2000年生まれの“00ズ”の雨男っぷりに「やっぱり00ズ(2000年生まれのHyunjin、HAN、Felix、Seungmin)は強いなと思いました」と苦笑。でも公演の時は小雨になったり、最終日は晴れてホッとしたと言い、「みなさんが僕の最強のてるてる坊主です。そんなSTAYのために今日は雨のように汗を流しました。僕が流す汗はみなさんに対する愛です」と愛あるコメントで締めくくった。
Bang Chan は去年のドーム公演から今回のエコパスタジアムまでを振り返り、日本で2週連続、同じスタジアムで公演できたことについて「僕たちを支えてくれるスタッフのみなさんとSTAYが見守って支えてくれたからこそ実現できたんだと思います」と感謝を述べた。そして来月に発売されるアルバムについて、「個人的に本当に名盤だと思います」とアピールも。今年はStray Kidsデビュー8年目、この8人でまた戻ってきます。ハッピーな気持ちで待っててね」と語りかけると、STAYからは大きな歓声があがった。
そんなStray Kidsのために、ここでSTAYとスタッフが用意したサプライズ動画がスクリーンに映し出された。STAYが語る「推しの好きなポイント」はマニアックな視点が愛情の深さを感じさせ、メンバーもニコニコ笑顔で、時折涙をにじませながらその動画を見守っていた。映像が終わり、STAYがインタビューで語っていた「Stray Kidsが幸せならSTAYは幸せ」というコメントを受けて、「僕たちも同じ言葉をみなさんにお返ししたいです。STAYのみなさんが幸せだったら僕たちStray Kidsも幸せです」とBang Chan 。そして「メンバーからBang Chan さんにビッグハグしてください」という要望を受けて、メンバーがBang Chan を囲んでぎゅっと抱きしめる。最後に「I.NさんはHANさんにポッポ(キス)してください」というコメントで会場は「ポッポへ(キスしろ)」コール一色に。I.Nが意を決したようにHANのほっぺにちゅっと口をつけると、今日一番のSTAYの大歓声が沸き起こった。
スタジアムの広いステージに散らばって客席を見つめながら歌い上げた「Stray Kids」ではウォーターガンを手に客席に向かって水を放ち、続く「MIROH」ではLee Knowの「一緒に叫んで踊り狂いたいです」という言葉通り、メンバーもSTAYも最後の力を振り絞って飛び跳ねて盛り上がる。そんな中、すっかり暮れた夜空に色とりどりの花火が次々と打ち上がって、スタジアム公演のフィナーレを飾った。しかしこれでは終われないとアンコールが響く中、メンバーが再び登場。ダブルアンコールではBang Chan がI.Nを肩車したり、Seungminは寝っ転がったまま歌い、Felixは自分に水をかけてびしょ濡れになるなど、思うままにスタジアム公演の余韻を楽しんだ。

撮影:田中聖太郎
初のスタジアム公演を大盛況のうちに終えたStray Kidsはこの後、7月30日のイタリア・ローマで公演までアメリカ・ヨーロッパをまわる予定だ。世界34の地域で55回の公演という自身最大規模となった「Stray Kids World Tour <dominATE>」。このワールドツアーを終えた時、Stray Kidsは今まで以上に大きくなっていることだろう。