ゾフィー・トイバー=アルプはスイス生まれの芸術家で、テキスタイルデザインから幾何学的模様による絵画や空間、建築まで手掛けた。その夫ジャン・アルプはドイツ生まれ。詩人でもありながら、コラージュやレリーフ、彫刻を制作した人物だ。


二人で時代を切り開いたアーティスト夫妻の偉業に迫る。

本展では20世紀前半を代表するこのアーティスト・カップルの創作とともに、二人がお互いの制作に及ぼした影響やデュオとしての作品にフォーカス。夫婦というパートナーシップがどれほど創作の可能性を広げたのかを紹介している。

1889年に生まれたゾフィーは、スイスとドイツの応用芸術学校(日用品に美術を活かす技術を学ぶ学校)を卒業した後、1915年にジャンと出会い33歳で結婚。テキスタイルデザイナーとしてのキャリアを歩みつつ、色彩理論と幾何学的抽象の研究を重ね、円や直線、多角形が印象的なモチーフを使った作品を発表。家具デザインや建築設計、絵画など多方面で活躍した。

一方、1886年生まれのジャンは、ドイツの芸術家グループ「青騎士」や美術運動ダダの活動に参加。1920年代以降は、シュルレアリスムと抽象とを往来しつつ、偶然生まれるフォルムを用いてコラージュや彫刻などを手がけた。

本展ではゾフィー作品を45点、ジャン作品36点、両者のコラボ作品7点という、かつてない規模で夫妻の作品を紹介。そこから、二人がダダやシュルレアリスム、抽象芸術などの前衛芸術で成功した秘密に迫る。

特にゾフィーは、当時女性も携わることができた応用芸術からキャリアをスタートし、前衛芸術の最前線で活躍するまでになった、いわば女性芸術家のパイオニア。スイスでは紙幣にも描かれるほど有名な存在で、20世紀前半の抽象芸術の作家として、今その評価が高まっている。

夫婦による創作の化学反応はもちろん、当時の女性アーティストの地位や芸術分野のヒエラルキーについても、きっと発見があるはずだ。

左・ゾフィー・トイバー=アルプ、ジャン・アルプ《デッサン(デュオ=デッサン)》1939年、アルプ財団、ベルリン/ローラントシュヴェルト Ⓒ VG BILD-KUNST, Bonn & JASPAR, Tokyo, 2024C4772 右・人形劇「鹿の王」のための人形の前のゾフィー・トイバーとジャン・アルプ、1918年、チューリッヒ

互いを刺激し合った、アーティスト・カップル。
訪れた展覧会で偶然出会ったゾフィーとジャン。二人は実に多くの共作を残した。不慮の事故でゾフィーを亡くしたジャンは、ショックのあまり鬱状態で4年間修道院にこもっていたが、そんな彼を触発し元気づけたのも妻の作品だった。

左・ゾフィー・トイバー=アルプ《パッチワークのズボン》1920-24年頃、アルプ財団、クラマール 右・ゾフィー・トイバー=アルプ《抽象的なモティーフによる構成(手帳カバー)》1917-18年頃、アールガウ州立美術館、アーラウ(個人より寄託)

再評価が進む、ゾフィー・トイバー=アルプの多彩な創作活動。
夫ジャンに比べて、日本では紹介される機会の少なかったゾフィーの活動を今回初めて包括的に展示。手帳カバーやズボンなどキャリア初期に手掛けたテキスタイル作品から、絵画や家具など作品の規模が拡大する様子も見応えあり。

左・ジャン・アルプ《7 アルパーデン:アルプ・アルバム(『メルツ』第5号)I口髭=帽子》1923年、アルプ財団、ベルリン/ロ ーラントシュヴェルト ⒸVG BILD-KUNST, Bonn&JASPAR, Tokyo, 2024 C4772 右・ジャン・アルプ《貝殻=帽子》1965年、アルプ美術館バーンホフ・ローランズエック Photo:Mick Vincenz

ユニークさが際立つ、ジャン・アルプの作品。
有機的なフォルムの彫刻作品が有名なジャンだが、その創作の原点は絵画と詩。従来の手法を無視し偶然のイメージやコラージュ画に関心を向けた彼を、マルセル・デュシャンは「アルプその人がアート」と評価。

Information

ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ

アーティゾン美術館 6階展示室 東京都中央区京橋1‐7‐2 開催中~6月1日(日)10時~18時(金曜は~ 20時。入館は閉館の30分前まで) 月曜(5/5 は開館)、5/7休 一般2000円ほか※日時指定予約制 TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)

文・山田貴美子

anan 2437号(2025年3月5日発売)より
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No.2437掲載

今、わたしたちにできること。

2025年03月05日発売

特集は“いま、私たちにできること”。SDGsやエシカルという価値観が定着して久しいですが、自分レベルで実践できる地球にやさしい情報をアップデートしてお届けします。第2特集はフェムケア。CLOSE UPは笑福亭鶴瓶さんと重岡大毅さん。Travis Japanカレンダーへの道には川島如恵留さん、Aぇ! groupプレ連載には小島健さんが登場します。

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