『ヒプノシスマイク』6ディビジョンの声優たちが語る、思い出とお気に入りの曲

エンタメ
2025.03.13

上段左から、速水 奨さん、木村 昴さん、浅沼晋太郎さん、岩崎諒太さん 下段左から、白井悠介さん、葉山翔太さん

2017年9月よりスタートし、音楽と音声ドラマを収録したCDを原作として様々なメディアで紡がれてきた『ヒプノシスマイク』の物語が、ついに現在公開中の映画をもって集大成を迎える。しかも日本初の「インタラクティブ映画」として、映画館を訪れた観客が結末を選ぶことに。どんなラストへつながるか、決めるのはあなたの一票。

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映画『ヒプノシスマイク‐Division Rap Battle‐』

音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク』は、人の精神に干渉する特殊な“ヒプノシスマイク”を駆使したラップバトルが武力に取って代わった世界の物語。女性党首が率いる“言の葉党”が政権を握り、男性を排除したエリア“中王区”では言の葉党が主宰する“ディビジョン・ラップバトル”が繰り広げられる――。『ヒプノシスマイク』の世界には6つのディビジョンから総勢18人のキャラクターたちが登場。声優がキャラクターを演じながらラップするという目新しさはもちろん、国内のヒップホップ・アーティストに楽曲を提供してもらうことで相互のカルチャーに化学反応が巻き起こり、瞬く間に人気コンテンツへと成長した。

スタートから約7年半が経ち、昨年には記念すべき10回目のライブも大成功を収めた。2期にわたるTVアニメ放送を経て、過去の因縁にも決着がついた今、この映画が最後のディビジョン・ラップバトルの舞台となる。

木村 昴
IKEBUKURO DIVISION Buster Bros!!! 山田一郎役

ヒプノシスマイクはゼロから始まったプロジェクトですし、僕も最初の頃から携わってきましたが、ずっと好きだったラップミュージックに声優として関わることができたというのはもちろん、ヒプマイというコンテンツがどんどん大きくなって、いろんなことができるようになっていくのが嬉しかったですね。ヒプマイは今までに前例がないことをたくさんやってきているんですよ。大きなステージでたくさんの人の前に立てたし、こうやって映画化も実現しました。ただ単に映画になることが嬉しいというよりも、ファイナルディビジョン・ラップバトルを映画でやるというアイデアに震えますよね。観客の投票でバトルの結果が変わるシステムも日本では初めてのことですし、そういう前代未聞なことに挑戦するのがヒプマイの醍醐味だと思います。ラップに魅せられた一人としては、ヒプマイがきっかけでヒップホップのアーティストに興味を持つ人が増えたり、逆にヒップホップのアーティストから「ヒプマイのファンはすごい」と言われるのが嬉しいです。一見交じり合わなそうな2つのカルチャーが交流するきっかけになれたのかな、と思っています。

今までの楽曲の中で個人的に好きな曲は「Survival of the Illest」。この曲はイントロを聴いただけでテンションが上がりますね。一郎のバースのフロウが完璧で、とにかく単純に好き。スチャダラパーさんが作ってくれた「SUMMIT OF DIVISIONS」もゾクゾクするくらい好きな曲で、血が騒ぎます。

浅沼晋太郎
YOKOHAMA DIVISION MAD TRIGGER CREW 碧棺左馬刻(あおひつぎ・さまとき)役

ヒプノシスマイクは自分といろんなものをつなげてくれた架け橋です。ヒプマイだからこそ出合えたものがたくさんあったし、こうしてananにも出させていただけたし(笑)。普段からキャラクターコンテンツに慣れ親しんでいるコアなターゲット層以外にも届いたという意味でも、架け橋的な存在だと感じています。今でも忘れられないのが、“第一回韻踏闘技大會”の最終結果発表を見るために、新宿アルタ前にありえない数のファンが集まってくれた時のこと。あの風景はまさにヒプマイの中の世界みたいでしたよね。

(木村)昴がラップグループを組んでいたこと、ラップメインでの仕事をやりたがっていたことは以前から知っていたので、ヒプマイの先頭に昴がいることは、僕の中では感慨深かったです。声優はどの仕事よりもいろんなジャンルの歌を歌わなくてはいけない職業だと思っているんですが、ヒプマイは楽曲を提供してくれるアーティストさんたちの間でもバトルが勃発しているんじゃないかと思うくらい、曲の難易度がどんどん上がっているんですよね。そして僕らはそれに応えなくちゃいけない。その中で培われたものは大きいと思いますし、曲も難しくなっているだけにきっとスキルは上がってます。むしろこれだけやって上がってなかったら困りますよね(笑)。個人的には「SUMMIT OF DIVISIONS」が好きなんですが、楽しくなりすぎちゃってたびたびトチリがちなのが難点(笑)。簓とデュエットした「Double Trouble」はまだライブでは一度も歌ったことがなくて、自分の中でとても貴重な楽曲になっています。

白井悠介
SHIBUYA DIVISION Fling Posse 飴村乱数(あめむら・らむだ)役

僕にとってヒプマイは“チャレンジ”という言葉が一番しっくりきます。ポップでかわいい飴村乱数というキャラクターを演じることもそうだったし、ラップすること自体も僕には“未知との遭遇”だったので、いい経験になりました。もともとラップは嗜む程度に聴いていて興味もあったので、仕事として携われるのは嬉しかったです。ただ、乱数には今までの自分にない部分が多くて、そんな乱数を演じながらラップしなきゃいけないというのもあり、最初の頃は余裕がない状態でした。そんな中で迎えた池袋サンシャインシティ噴水広場での1st LIVEは、僕が初めて乱数として出演したライブでもありますが、ファンのみなさんの熱量に圧倒されて、これはすごいことになるぞと確信しました。それから回を重ねるごとに観客もヒップホップのライブに慣れ、僕も余裕が出てきました。Fling Posseは乱数が幻太郎と帝統を誘って作ったディビジョンですが、この二人が支えてくれたおかげで乱数は素の自分を受け入れてくれる場所を見つけるんですよね。そういう変化を歌で表現できるようになったかなと思います。

僕が個人的に一番好きな曲は「Stella」ですね。これはFling Posseのメンバーがまた別の物語を演じるという二重構造になっている、不思議な世界観の曲なんです。「Black Journey」は彼らのドラマに歌詞がリンクしていて、歌っていて感情が込めやすい曲。その後にリリースした「キズアトがキズナとなる」はFling Posseが優勝しなければ歌えなかった曲なので、感慨深いです。

速水 奨
SHINJUKU DIVISION 麻天狼 神宮寺寂雷(じんぐうじ・じゃくらい)役

私が思うヒプノシスマイクとは、自分でも想像していなかった扉を開けてくれる存在です。最初にヒプノシスマイクについて話を聞いた時、ラップをするコンテンツです、ファンの前でライブをしますと言われて、全力で後ずさりするような気持ちでした(笑)。でもふと、僕もそれを観てみたいという好奇心が湧いたんですよね。ヒプノシスマイクというコンテンツに自分が交ざったらどうなるんだろうという興味が勝って、扉を開けてしまったんです。でも、そこから一歩踏み出したらいろんな道が広がっていて、初めて寂雷の楽曲をステージで歌唱した品川ステラボールでの2nd LIVEの熱狂と興奮は、今も脳裏に焼き付いています。ラップに関しては、最初に歌った「迷宮壁」から、ライブで歌うのは無理だと思ってました(笑)。去年出た「威風颯爽」は曲を作ったMicroさんが「生では歌いませんよね?」と言ってたくらい難しかったのに、気づけばライブで歌うことになっていたんですよね…。でも、努力したらなんとかなるんです。ただ歌うのではなく表現すること、そしてそれを楽しむための努力というのは、年齢やキャリアに関係なく必要なんだな、ということをあらためて教えてくれたヒプマイは素晴らしいコンテンツです(笑)。

好きな曲はたくさんありますが、特に「パーティーを止めないで」は大好きですね。初めて踊った時は息切れしてしまって、それから体を鍛え始めたんですよ。鬼龍院翔さんらしいメロディがライブですごく映えて、あの盛り上がりはダントツだと思っています。

岩崎諒太
OSAKA DIVISION どついたれ本舗 白膠木 簓(ぬるで・ささら)役

どついたれ本舗はヒプマイが始まって3年目にナゴヤと共に追加されたディビジョンで、初めて僕らが発表された時の爆発的な熱気がとにかくすごかったです。それまではみなさんに受け入れてもらえるか不安でしたが、Creepy Nutsさんが作ってくれた一発目の「あゝオオサカdreamin' night」から関西弁でラップをカマセて、オオサカのディビジョンだということを印象付けられたかなと思います。僕自身、高校生の時からSOUL'd OUTさんが好きでラップには少し自信があったんですけど、レコーディング前に昴さんから大阪のラッパーさんを教えてもらって、そういう方々のフロウを研究しながら自分なりに踏襲できたらと思っていました。簓は飄々としながら難易度の高いラップをぶちかますところがいかにも“強キャラ”な感じで魅力的なんですよね。短いバースの中にとんでもない量のリリックが詰め込まれていたりするんですけど、それが逆にワクワクしました。課せられたものの大きさにプレッシャーを感じつつ、求められていることを感じて嬉しかったです。

カラオケでラップを歌うことも多く、ヒプマイ楽曲では「RISE FROM DEAD」がお気に入り。全パート一人で歌います(笑)。「Laughin' hope」は初めて簓の内面に触れた曲。簓が自分の弱い部分をさらけ出しているんですが、それでもみんなを笑かしていくんやという心意気と、人間くささみたいなところをやっとラップに込めることができて…。(横にいた浅沼さんの視線を感じて)「Double Trouble」もすごくカッコよくて好きですっ!

葉山翔太
NAGOYA DIVISION Bad Ass Temple 波羅夷空却(はらい・くうこう)役

個人的に、この作品には言葉で言い表せないくらいの感情があります。あえてひとことで表現するなら“複雑”。いろんなことを教えていただきましたし、たくさん刺激をもらいました。Bad Ass Templeが初めてお披露目された2019年の4th LIVEは今でも忘れられないです。前日にどついたれ本舗が発表されて、きっとファンは盛り上がっているだろうなとナゴヤの3人で会場に向かいながらSNSをチェックしてました(笑)。当日はとても緊張したんですけど、(山田二郎役の)石谷春貴さんが楽屋に来て励ましてくれたんですよ。それに、空却として出演したラジオ番組! リスナーの方から寄せられるお悩み相談に、空却だったらどう答えるだろうと僕自身も悩みながらの収録でした。空却は見習いとはいえ僧侶なので、普段の破天荒な性格とのバランスは常に考えていました。一郎とのいざこざを乗り越えるというストーリー的な変化もありましたし、いろんなメディアから生まれた一面もあるんですけど、そうやって“味変”しつつも芯の部分はブレないのが空却。その塩梅が彼の魅力であり、演じるにあたって一番大切にしているところでもあります。

ナゴヤの他の2人もそれぞれ過去を乗り越えて今があるんですけど、「開眼」はそんな変化が感じられる曲。自分たちも歌うごとに毎回、味わいが変わるのを感じますし、噛みしめるほどに歌詞の表現も変わってきました。一番曲を理解していると思えるのは「Bad Ass Temple Funky Sounds」。最初のディビジョン曲なので、自然と口から出るくらいなじみ深い曲です。

PROFILE プロフィール

木村 昴

きむら・すばる 6月29日生まれ、ドイツ出身。14歳の時に『ドラえもん』の剛田武(ジャイアン)役に抜擢され、 声優デビュー。現在は声優として活躍するほか、タレント、俳優、MCとしても活動。

浅沼晋太郎

あさぬま・しんたろう 1月5日生まれ、岩手県出身。声優としてはゲーム『あんさんぶるスターズ!!』月永レオ役をはじめ出演多数。俳優、演出家、脚本家などジャンルを問わず活動している。

白井悠介

しらい・ゆうすけ 1月18日生まれ、長野県出身。ゲーム『アイドリッシュセブン』二階堂大和役、ゲーム『A3!』碓氷真澄役など多数。2022年にアルバム『11‐ELEVEN‐』をリリース。

速水 奨

はやみ・しょう 8月2日生まれ、兵庫県出身。アニメ『超時空要塞マクロス』マクシミリアン・ジーナス役から映画『名探偵コナン 隻眼の残像』諸伏高明役まで長く第一線で活躍する声優界の重鎮。

岩崎諒太

いわさき・りょうた 7月1日生まれ、大阪府出身。主な出演作にアニメ『黒岩メダカに私の可愛いが通じない』黒岩メダカ役、映画『THE FIRST SLAM DUNK』木暮公延役など。劇団ヘロヘロQカムパニー所属。

葉山翔太

はやま・しょうた 11月15日生まれ、山口県出身。アニメ『REVENGER 』惣二役や『川越ボーイズ・シング』葉加瀬友役に加えて舞台『ヘリオガバルスの薔薇』出演など多岐にわたって活動中。

INFORMATION インフォメーション

映画『ヒプノシスマイク‐Division Rap Battle‐』

“でけえ悶着”が、ついに決着! 『ヒプノシスマイク』最後のディビジョン・ラップバトルは、6ディビジョンのトーナメントを勝ち抜いたチームがチュウオウ・ディビジョン・言の葉党に挑戦。勝利の行方は…?

木村さん・ジャケット¥41,000(ステルス ステラ/ジョワイユ TEL:03・4361・4464) Tシャツ¥19,800(マインドシーカー/ジョワイユ) パーカ¥24,200(マーモットキャピタル/エンケル TEL:03・6812・9897) パンツ¥13,990(アンフィ―ロ/オンワード樫山 TEL:03・5476・5811) ネックレス¥52,800(ガルニ/ガルニ トウキョウ TEL:03・3770・4554) リング¥41,800(シンゴクズノ/シアン PR TEL:03・6662・5525) その他はスタイリスト私物

白井さん・ジャケット¥74,800(ナノアット/ジョワイユ) シャツ¥35,200(ホロマーケット/スタジオ ファブワーク TEL:03・6438・9575) 中に着たニット¥6,990(アンフィ―ロ/オンワード樫山) リング¥55,000(アイブイエックスエルシーディーエム/アイブイエックスエルシーディーエム 六本木ヒルズ TEL:03・6455・5965) その他はスタイリスト私物

岩崎さん・シャツ¥19,800(ファクトタム/シアン PR) パンツ¥49,500(アナーキストテイラー/シアン PR) イヤカフ¥3,300 リング¥4,950(共にエルエイチエムイー/シアン PR) その他はスタイリスト私物

葉山さん・スカジャン¥9,910(タイオン/ジョワイユ) 中に着たスウェット¥7,700(キャスパージョン/シアン PR) ブレスレット¥33,000(バフ TEL:0154・38・2600) その他はスタイリスト私物

写真・内田紘倫(The VOICE) ヘア&メイク・原田琴実 AKi 齊藤沙織 Coomie(B★side) Chiaki 山崎美咲スタイリスト・能城 匠 ヨシダミホ 取材、文・尹 秀姫

anan 2437号(2025年3月5日発売)より

MAGAZINE マガジン

No.2437掲載2025年03月05日発売

今、わたしたちにできること。

特集は“いま、私たちにできること”。SDGsやエシカルという価値観が定着して久しいですが、自分レベルで実践できる地球にやさしい情報をアップデートしてお届けします。第2特集はフェムケア。CLOSE UPは笑福亭鶴瓶さんと重岡大毅さん。Travis Japanカレンダーへの道には川島如恵留さん、Aぇ! groupプレ連載には小島健さんが登場します。

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