アンジュルム卒業から7年。田村芽実「いろんな方のお芝居を、何度も巻き戻して研究」

エンタメ
2023.08.06
連続テレビ小説『らんまん』で、主人公・万太郎が通う大畑印刷所の娘・佳代として、限られた出番ながら存在感を発揮し、話題になったのが田村芽実さん。かつてアンジュルムのメンバーとして活動しながら、幼い頃から憧れていたミュージカルへの夢を捨てきれずに、アイドルから転身。透明感のある澄んだ美しい歌声に加え、ピュアなヒロインから強烈な個性を放つキャラクターまで演じ分ける演技力で、今、着実に評価を高めている。

王道から個性派まで、確かな実力で演じきる。

tamura

ミュージカル女優への目標を掲げてアンジュルムを卒業して7年。夢を実現させたばかりでなく、ヒロインから個性的なキャラクター、コメディリリーフまで、さまざまな役柄を演じている田村芽実さん。

「もともとミュージカルが好きで、子役をやっていました。そのとき、ハロー!プロジェクト(以下、ハロプロ)の方たちと共演したら、みんなかわいくて歌もダンスも上手で優しくて、同じ舞台に立ちたいと思ったんですよね。でも活動するうち、ずっと夢だったミュージカルの道に進みたくなって…」

子供の頃から劇団四季や宝塚などのミュージカルが好きで、姉妹でミュージカルスクールに通っていた。「ハロプロに入るまでミュージカルに出たいという夢以外持ったことがなかった」と言う。

「子役アンサンブルのひとりとして初めて舞台に出演したとき、嬉しすぎちゃって、イヤイヤ雑巾がけをする場面なのに、ニヤニヤがとまらない。一生懸命下を向いてほっぺたの内側を噛んで笑いを堪えている私を見て、本当にミュージカルが好きなんだと思ったと、いまだに母と祖母に言われます」

ハロプロを卒業してからの約1年間は、学ぶ時間に充てた。一度はスポットライトを浴びながら、「アンサンブルから始めようと思っていた」というのだから驚く。

「ハロプロにはいましたけれど、世間的には無名の私が簡単に出られる場ではないと思っていました。まだ現役で頑張っている先輩たちもいるなかで、辞めた私がその名前に頼るのも失礼かなというのもありました。そうなったとき、イチからやるしか手段が見つからなかったんです。いつか誰かが見てくれるだろうって。それに、基礎から学び直したい気持ちもあったんですね。自分でスクールを探して、呼吸法からバレエの基礎、お芝居のレッスン、ワークショップ…まさに1年間は修行でしたね」

そんな努力が大きく花開いたのが、ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』。言わずと知れたミュージカルの傑作を、シーズンごとにキャストを入れ替えて上演する大きなプロダクションで、ヒロインのマリア役を掴んだ。

「初のグランドミュージカルでした。マリア役の6人のうち、私以外の方はみなさん有名な方でしたが、それでもオーディションで選んでくださったことが私の中ではすごく大きくて。本当に見てくれている人がいるんだなと思ったし、人生が開けた感じがしました」

しかし、田村さんが面白いのはそこからだ。翌年の『ジェイミー』では、クラスでは地味だとバカにされているムスリムの女の子・プリティを。続く『GREASE』では、不良女子グループを率いるリッゾに。かと思えば、今年頭の『MEAN GIRLS』では、少しエキセントリックな性格のジャニスを振り切った演技で見せるなど、とにかく振り幅が広いのだ。

「最初に自分とは似ても似つかない役をいただいたときは、自分に務まるのか怖かったです。それこそリッゾのときは、海外ドラマで不良の女の子が出てくるものを探して、歩き方とかしゃべるときの重心の動かし方を研究しました。セリフでも、今の感情はどこにどうあって、どの瞬間にどう動いていくのか細かく分析したり。自分もそれを真似しながら、役の要素を入れて構築していく…みたいな。でもやっていくと、共通点が見つかることもあるし、役を通して自分を見つめ直すことで、自分の中にその要素がないわけではないんだと気付かされるんですよね」

役を演じるのに、この“重心”をかなり重視しているのだそう。

「演劇オタクなところがあるので、いろんな方のお芝居を、何度も何度も巻き戻しては見て研究するのが好きなんです。おばあさん役だと、脚の筋肉が弱いからか、わりと外側に重心があって腰下で立っていたりとか。例えば、話を熱心に聞こうとすれば前のめりになるし、本音をしゃべろうとすると自然と深く座る。誰もが無意識にやっていることだと思うのですが、それを意識的に持っていくのが私たちの仕事だと思っています」

とくに熱心に見てしまうのは、片桐はいりさんと阿部サダヲさん。

「片桐さんの出ているドラマをつけて、どのタイミングで片桐さんがこの芝居に気づいて、どのタイミングで歩き出そうと思って歩き出すのか知りたくて、15秒巻き戻しては見るっていうことを何度も繰り返していたりします。阿部さんはコメディを緻密に作られている印象があるので、二度見するコンマ何秒のタイミングを掴みたくて、やっぱり何度も繰り返し見ながら研究したり(笑)」

次に控えるのは『赤と黒』。主人公と恋に落ちる侯爵家の令嬢だ。

「瀬奈じゅんさんに『変わった役をいっぱいやっていきたいんです』と話したら『まずは王道ができてこその個性だよ』と言われました。今回は王道に近い役だと思いますので、飛び道具的ではない役のあり方を学びながら、丁寧に表現したいと思っています」

たむら・めいみ 1998年10月30日生まれ、群馬県出身。2016年にハロー!プロジェクトを卒業。’17年の舞台『minako―太陽になった歌姫―』以降、ミュージカルを中心に数々の作品に出演。10月21日には自身が脚本・演出を務める一人芝居コンサート『私のもとへ還っておいで』が控える。

※『anan』2023年8月9日号より。写真・苗江 ヘア&メイク・松田 陵(ワイズシー.) 構成、取材、文・望月リサ 撮影協力・AWABEES EASE

(by anan編集部)

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