自分らしくいられる居場所はどこに? 思春期の少女の葛藤と成長を綴った連作短編集

エンタメ
2023.07.18
クラスで浮かないこと。一緒の話題で盛り上がれること。そういった空気の中で、どうサバイブするかが世界のすべてのように感じてしまうローティーンの女の子たち。こざわたまこさんの『教室のゴルディロックスゾーン』は、思春期の葛藤と成長を、繊細に綴った群像劇だ。

自分らしくいられる居場所はどこに? 迷いながら成長する少女たちの群像劇。

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語り手を務めるのは、引っ込み思案で空想の世界に居場所を求める依子、依子に親近感を抱いて友だちになったものの他の女子たちに誘われて日和ってしまうさき、クラスの中心グループにいるが依子とも普通に接する優等生のひかり。さらに、おのちんや琴ちゃん、亜梨沙などを交え、みなそれぞれに居場所を求めて右往左往。気持ちが不器用に掛け違っていくさまがリアルに描かれる。

「10代の子たちが寄り集まったときに、そのグループ内での自分の役割やキャラクターが、グループによって変わったりしますよね。人と関わる上で、自分の言葉を相手に届けることが大切なのに、この言葉を口にしていいのか悪いのか自分で判断がつかなくて、自分を偽ったり言葉を封じたりしてしまう。そのせいで、コミュニケーションにつまずく人は大勢いると思うんです。依子がそのハードルをどう乗り越えるかは、書きたかったことのひとつです」

少女たちにある化学変化を起こさせる、心揺さぶられるシーンがある。教育実習生・宇手先生の実習最終日、クラスでボイコット計画が持ち上がる。だが、予想外にも、彼は授業ではなく挨拶と称したスピーチを始める。そこには、〈孤独のおかげで出会えたものがたくさんある〉〈自分だけの孤独を大切に〉など、読者の心にも深く刺さる名フレーズがちりばめられている。

「物語に登場するおよそ唯一の大人がこの子たちに掛ける言葉として何がふさわしいだろうと考えていった結果、自然と出てきた気がします」

これまでの作品では「閉塞感のリアリティがすごい」という感想をもらうことが多かったそうだ。

「私自身は『閉塞感を書いたるで』みたいな感じには思っていないんですが(笑)、現実世界で確かにちょっとブレーキをかけながら生活している感覚はあります。その分、小説ではアクセルを踏んで打ち破ってみようという瞬間を書こうとしていますね。それが、悶々としている人たちに届いたのかもしれません」

こざわたまこ 作家。1986年、福島県生まれ。2012年に「僕の災い」で「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞。同作を収録した『負け逃げ』でデビュー。他の著作に『君には、言えない』など。

『教室のゴルディロックスゾーン』 出てくる少女たちすべてが愛おしくなる連作短編集。ゴルディロックスゾーンという言葉の意味は作中で! 気になる人は、手に取ってみて。小学館 1870円

※『anan』2023年7月19日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)

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