これまで100冊以上の絵本を出版し、児童文学界のノーベル賞といわれるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞した絵本作家、荒井良二さん。現在では活躍の場を広げ、絵本にとどまらない表現の世界を自由に旅している。そんなアーティストとしての荒井さんが出力全開で臨む展覧会「new born 荒井良二 いつも しらないところへ たびするきぶんだった」が開幕する。

「手のひらで読む絵本世界とはまた異なる世界へ誘ってくれるのではないでしょうか」

と学芸員の中村貴絵さん。荒井さんはここ10年ほどの間に新しい活動期に入った。東日本大震災後は被災地をめぐるワークショップツアーを実施、2014~’18年には「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」の芸術監督を務めている。

「それまでの表現媒体が絵本だったというだけで、もともと社会の観察者としての一面があったのだと思います。それがこうした活動をきっかけに開花し、アートを媒介に社会や地域、人、歴史とつながっていったのではないでしょうか」

本展では代表作の絵本『あさになったのでまどをあけますよ』などの原画の展示に加え、新作絵画や立体作品など約300点を展示。山形ビエンナーレで発表された物語「山のヨーナ」のインスタレーションを再構成した作品や、大分県の公園に設置されたオブジェ《たいようをすいこむモン》のマケット(試作の模型)も登場。開幕前にワークショップの参加者と共に制作した作品も展示予定だ。面白いのはどんなに道具や場所が変わっても、荒井さんの飄々とした物腰はそのままに見えること。

「新しいジャンルに飛び込み、表現の枠を広げていくことに躊躇がない現在進行形のアーティストだと思います。ただそこに大きな覚悟はなく、展覧会のタイトルのように、あくまで知らない場所を旅する『気分』であるところが、実に荒井さんらしい」

私たちもそんな気分に身を委ねて、荒井良二さんの新しい世界を旅してみたい。

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『あさになったのでまどをあけますよ』原画 2011年 偕成社、個人蔵 ©Arai Ryoji

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《new born 旅する名前のない家たちを ぼくたちは古いバケツを持って追いかけ 湧く水を汲み出す》制作風景

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《絵の中のぼくとぼくの中の絵》2023、個人蔵 ©Arai Ryoji

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《流れ星スパーク奏でよギター》2022年、個人蔵 ©Arai Ryoji

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あらい・りょうじ 1956年、山形県生まれ。2005年、アジアで初めてアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞。『たいようオルガン』でJBBY賞など国内でも受賞多数。ライブペインティング、ワークショップのほか、作詞・作曲など音楽活動も行う。最新刊は絵本『ねこのゆめ』(NHK出版)。
写真:志鎌康平

「new born 荒井良二 いつも しらないところへ たびするきぶんだった」 横須賀美術館 神奈川県横須賀市鴨居4‐1 開催中~9月3日(日)10時~18時 8/7休 一般1300円ほか TEL:046・845・1211

※『anan』2023年7月12日号より。取材、文・松本あかね

(by anan編集部)

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