20年余の歴史を持つ「女による女のためのR‐18文学賞」。宮島未奈さんは2021年、「ありがとう西武大津店」でその大賞、読者賞、友近賞(特別選考委員・友近さんの名前を冠した賞)をトリプル受賞。3冠を射止めたのは史上初だ。その受賞作を含む『成瀬は天下を取りにいく』は、本好きの間では刊行前から話題に。とりわけ主人公・成瀬あかりの突き抜け方に揺さぶられ、推し宣言するファンが続出!
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「私も応募作を書き終わったときに、『成瀬のようにふるまいたかったけれど、できなかった人に読んでほしいな』と思っていたんです。そうしたらAマッソの加納愛子さんが〈成瀬になりたくて、なれなかった〉と私の思いそのままのコメントをくださって、これには感動しました」

「R‐18文学賞」受賞作は、成瀬の幼なじみ・島崎みゆきの視点で進む。中学2年の夏休み、コロナ禍に閉館が決まった西武大津店に通い、ローカルテレビの中継番組に映り続けると決めた成瀬。風変わりな思い出作りに挑む少女たちのひと夏を描く。続く2話目「膳所(ぜぜ)から来ました」で成瀬は〈お笑いの頂点を目指そうと思う〉と島崎を誘って〈ゼゼカラ〉というお笑いコンビを結成。

「主人公は、変わっているけれどなんでもできてしまう子がいいなと思ったんですね。もちろん成瀬のキャラクターも好きですが、私がいちばんうらやましかったのは島崎みたいな友達がいることです。10代20代の未熟な時期、ただ一緒にいることを友情としたり、それもお互い厳しいことは言わないようにして平穏を保ったりしますよね。だからよけいに、厳しいことも言うけれど基本的に成瀬を全肯定してくれる島崎みたいな存在が私も欲しかったです」

最終話「ときめき江州(ごうしゅう)音頭」は、怖いものなしの成瀬に、初めての逆境が訪れるというストーリー。

「成瀬にとっていちばん耐えがたいことは何かと考えたら、ああいう展開になりました」

また、作中では琵琶湖の観光船「ミシガン」ほか実在の名称も登場。滋賀という土地が魅力的に描かれる。

「私は実は『びわ湖アンバサダー』でして(笑)。私自身がミシガンには何度も乗っているんです。描写にはその経験が生きています」

本書は、そんなローカル愛に満ちた、新たな滋賀文学でもある。

『成瀬は天下を取りにいく』 作中に登場する〈ときめき坂〉は大津市実在の場所(他のときめき小学校やときめき夏祭りは架空のもの)。6編からなる連作短編集だ。新潮社 1705円

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みやじま・みな 1983年、静岡県生まれ。現在は、本書の舞台でもある滋賀県大津市に在住。京都大学文学部卒。2018年「二位の君」で第196回コバルト短編小説新人賞を受賞(宮島ムー名義)。

※『anan』2023年4月12日号より。写真・土佐麻理子(宮島さん) 中島慶子(本) インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)

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