読んだ漫画のいろんなシーンが織りになってる。
「昔のアルバムは本当に勢いだけで録ってたんですよね。良い曲なんだけど、みんなに聴いてもらえる音源かというと、そうではないかなと(笑)。それで、今のバンドメンバーで再録するのはいいんじゃないかって提案させてもらったんです。今でも堪え得る曲なんだってことを証明したい気持ちもありました」
全16曲が収録され、澤部さんがひたすら様々な情景と向き合ってきたということが伝わってくる。
「この頃は、内に向かっていくエネルギーをどう表現するかって感じだったので、そういう歌詞が多いですよね。特に20代前半は、少女漫画を読んでいて気持ちが動いて曲ができることが多々あった。いろんなシーンが織りになってる気がします」
悶々としていたり、心が置き去りになっていたり、何かが欠けているような感覚が多く描かれている。
「『描き切らない曇天の美学がある』ということはよく言ってました。わかりやすい歌詞を書きたくなかったんです。音楽は小説や漫画と違って、歌ってる人と曲がどうしても切り離せない。それが嫌だったので、自分の目線は1割入ってるか入ってないか程度で、あとは創作。漫画もそうなんですけど、『こういうことが起こったからこういう結果になりました』みたいな説明的なものがあまり好きじゃなくて。『こういうことが起きている。彼女は何かを考え込んでいる』…もうそれでいいじゃん! みたいなタイプなんです(笑)」
初めてのアルバムを出してから今年で10周年だ。
「10年続くことを思い描いていたというより、可能な限り音楽をやっていたいと思っていました。僕の憧れてるムーンライダーズやスパークスが60歳を越えてすごいアルバムを出してるんですね。だから、いくつになっても音楽を続けたいなって」
10周年を記念したメジャー3rdアルバム『アナザー・ストーリー』。代表曲「ストーリー」「セブンスター」「ガール」等全16曲を収録。【CD+Blu-ray】¥4,500 【CD】¥2,500(ポニーキャニオン)
スカート 2006年、澤部渡のソロプロジェクトとして活動開始。'10年、自身のレーベル「カチュカ・サウンズ」から1stアルバム『エス・オー・エス』をリリース。'14年、カクバリズムへ移籍。'17年、メジャー1stアルバム『20/20』をリリース。
※『anan』2020年12月23日号より。写真・小笠原真紀 取材、文・小松香里
(by anan編集部)