
日本全国が待ちわびた『踊る大捜査線』最新作がいよいよ公開。役者も製作陣も、そしてファンもが熱い、大作のゆえんを探ります。
Index
WHAT’S?
『踊る大捜査線』
1997年に連続ドラマとして放送され、警察組織のリアルと作り手の遊び心が多くの視聴者の心を捉え大ヒット。以降、SPドラマや映画、スピンオフ作品も数多く作られており、2003年公開の映画『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』は昨年まで邦画実写歴代興行収入1位の記録を保持していた。
Character
青島俊作 (織田裕二)
刑事ドラマに憧れて脱サラし警察官に転職。交番勤務から湾岸署に異動となり念願の刑事に。強い正義感の持ち主で、時に独断で行動することで、警察上層部からは疎まれることも。人情に熱く、人懐こい性格の愛されキャラ。現在58歳、警視庁刑事部捜査第一課所属。
CAST INTERVIEW
主演・織田裕二さんが30年間灯し続ける“踊る”への熱量

変わらないあのモッズコート姿で、青島俊作こと織田裕二さんが14年ぶりに帰ってきた。
「前作(映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』)はいきなりのファイナルで、びっくりしているうちに終わってしまった感覚でした。でも、どこかでまたやるんじゃないかという気持ちもあったんですよね。そんな中、映画『室井慎次』の製作を知って、少しでも関わらせてもらいたいと思って付け足しのように出していただきました。でもその出方が、次もあるのかなと思わせる感じだったので、決まった時は嬉しかったですね」
織田さん自身、「和久さん(いかりや長介)ぐらいの年齢になった青島を見てみたいと思っていた」と話すほど本シリーズのファンなのだ。
「ドラマが始まった頃、和久さんが青島によく『疲れるほど働くな』という言葉をかけていたんです。当時はやる気満々の若者になんでそんなことを言うんだと思っていたけれど、自分が今、その気持ちがわかる年齢になっていて、青島もそんなセリフを言うのかなと期待していたんです。でも台本を開いたら、あまりにも青島が変わっていなくて、不覚にも笑ってしまいました(笑)」
定年間近となった今もなお、熱く現場主義を貫く青島。「これはこれで面白いけれど、58歳のオッサンがかっこよく走ってもと思って」と、織田さんから、途中で電動キックボードを使うという提案も。
「もともとこの現場って、みんながいっぱいアイデアを出し合って作ってきたんですよね。基本的に映像の現場で役者が役者にダメ出しすることってないんですが、『踊る』では劇団みたいに、会話をテンポよく回すにはここで誰々がこうしたほうがいいというように、役者同士がつねに話し合っていました。誰かがひとり得をするんじゃなく、チームとして作品をよくして勝とうっていう気持ちが強かったんです。俳優なんて、どちらかといえば自分がいいシュートを決めたいって思う人たちの集まりだと思うんですけれど、それが奇跡のようにうまくいった。僕は劇団も経験していないですし、そういう現場に関われたことが幸せでした」
30年近く、時代を超えてこのシリーズが愛され続ける理由も、きっとそこにあるのだろう。
「本気で面白がっちゃったんでしょうね、役者もスタッフも。例えば、当時“美術部の暴走”といわれた、セットの細かい作り込みとかね。画面に映るかもわからないのに、青島の机の引き出しの中にミリタリー系の雑誌を入れたり、すみれさん(深津絵里)の机にいろんなインスタントラーメンを置いたり。役者が芝居している後ろに、全然ストーリーと関係ない人たちを入れて、勝手にそこにストーリーをつけていたり。しかも、その物語の後日談までひっそり描かれていたり。これまでのドラマではタブー視されていたことを、面白いからってどんどん詰め込んでいたら、徐々に視聴者の間で話題になってハマる人が増えていったんだと思います。あと、プロデューサーのひとりが、警視庁の記者クラブにいた経験から、警視庁を本店、所轄を支店と呼ぶ符牒(ふちょう)だったり、銃を持つ許可を取るのに上司のハンコが必要だったり。これまで描かれなかったような警察のリアルをドラマに持ち込んだのも大きかったのかなと」
話している間にも当時のことが思い出されるのか、次々とエピソードが飛び出しとめどないほど。少年のような無邪気な笑顔で、熱量高く語る織田さんもまた、“面白がっちゃった”ひとりなのは間違いない。
「ただ、コメディ的な面白さだけじゃないのが『踊る』なんですよね。連ドラの第1話、今でも覚えているんですが、犯人に対して青島は、自分も彼のようになっていたかもしれない、と言うんですよ。普通の人が、ちょっとしたショックや誘惑を引き金にひどい犯罪を起こすことがある。人間ってなんでこんなに弱いんだろうって思ったし、そこのリアリティに衝撃を受けました。室井さん(柳葉敏郎)が再三言う、正義を通したいのなら上にあがらないといけない、というのもそうですよね。面白おかしくやるだけでなく、ちゃんとシリアスなテーマを軸に描いているのが『踊る』だと思うし、そうじゃなきゃいけないとも思っています」
本作に強い思い入れを持つ織田さんにとって青島は、「寅さんみたいにずっと見ていたい役」だそう。
「『踊る』の連ドラが現場も作品も大好きすぎたんです。だから終わるのが惜しくて、これを映画化しましょうって一生懸命声を上げていたんです。最初の映画化が実現した時、ある程度満足したんですけれど、好きだったから続けられるならという想いでやってきました。どんなにジタバタしてもいずれは定年してしまうわけですから、この先作れたとして、あと何作できるのか…。それでも今回こうして新作ができたわけで、僕自身もこの先をちょっと期待しちゃっています」
Profile
織田裕二
おだ・ゆうじ 1967年12月13日生まれ、神奈川県出身。'87年に俳優デビューし、'91年のドラマ『東京ラブストーリー』が大ヒット。その後、『踊る大捜査線』シリーズで、人気を不動のものに。アーティスト活動もおこなっており、『踊る大捜査線』の主題歌「Love Somebody」も担当。最近の出演作にドラマ『北方謙三 水滸伝』など。
DIRECTOR’S COMMENT
本広克行監督が見守ってきた、“青島俊作”の存在と現場主義

青島俊作って、そのまま織田裕二さんなんですよね。あんなスターさんなのに、いつまで経っても変わらず、近所の気さくなあんちゃんみたいなところがある。青島くんは納得のいかないことがあると吠える人ですが、織田さんの演じる青島がリアルだからこそ、発する言葉も視聴者のみなさんに響いたのかもしれないと思うんです。僕らも毎回、撮っていて本当に楽しいんですよ。みんなを笑わせるし泣かせるし。織田さんがお芝居が上手なのもありますけれど、撮っていて、なんだかわからないけれどグッとくる瞬間がある。織田さん自身も『踊る』をとても愛してくださっていて、作品を面白くするために、いろんなアイデアをくださったりもします。織田さんじゃなかったら、ここまで続いていなかったと思います。
正直、連続ドラマの第1話を撮っている時には、このドラマは面白くなるんだろうかと半信半疑だったんですよ。なにせこれまでの刑事ドラマとは違い、主役の織田さんが目覚ましい活躍をするのでもなく、最後には本庁が手柄を掻っ攫っていったりする。でも第2話の「愛と復讐の宅配便」で、これはすごい作品になると確信しました。椅子に爆弾が仕掛けられて、青島も和久さんも身動きできない中、爆弾の解体作業が始まるという緊張感で、みんなが飯がどうとかって話をする。これは面白いなと思いました。あと、現場の結束力が強かったんですよね。連ドラの場合、恋愛要素を盛り込むように言われるんですが、この現場では、そういうシーンになりそうになると助監督がエキストラにボクサーのおじいちゃんたちを仕込んだり、大量のハトを走らせたり、みんなで阻止にはしってました(笑)。でも、そのぶん小道具ひとつ、衣装ひとつにまで命を懸けるんです。宅配便の箱や配達の人の衣装、宅配便会社のロゴだったり。そうやってきたから、みんなこの仕事を大事にしてくれていて、偉くなっても声をかければ集まってくれるのはありがたいです。
今回の新作には、これまで登場したキャラクターがほとんど全員登場しているはずです。出演できない方は回想シーンで出てきますし、とにかく豪華な作品になっていると思います。ラストのほうには、敢えて答えを提示せず、ご覧になった方に自由に想像していただけるような場面も入れています。何より、年月が経ってもそのまんま歳を取って、結婚をすることもなく、相変わらず走っている青島がそこにいる。変わらない安心感って大事だと思っているんですよ。コメディとまでは言わないけれど、脳みそがちょっとクスクス笑う、息抜きになるような作品になっていると思います。
Profile
本広克行
もとひろ・かつゆき 1965年7月13日生まれ、香川県出身。'92年に深夜ドラマで監督デビューを果たし、ドラマ『お金がない!』などを手がける。『踊る大捜査線』には初期ドラマから携わり、THE MOVIE全作の監督を手がけている。
Information

映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』
ある日、東京都内で誘拐事件が発生。犯人側からの取引は、身代金を指定の場所まで持ってこなければ街を爆破するというもの。運び屋として指名されたのは、警視庁刑事部捜査第一課の青島俊作だった。犯人に翻弄され、青島は都内を駆け回るが──。監督/本広克行 脚本/君塚良一 9月18日(金)全国ロードショー。Ⓒ2026フジテレビジョン BSフジ ビー・エー・シー
anan 2512号(2026年9月16日発売)より































