不動産会社の経営者が教える! 知らないと損する「物件退去時のNG行動」

取材、文・髙倉ゆこ — 2024.8.10 — Page 1/2
物件探しの際、知っておくと助かるトピックをご紹介します。『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)の著者であり、5000人超の女性たちの「幸せになれる家選び」をサポートしてきた「ことり不動産」代表の石岡茜さんに、退去するときに知らないと、不要な費用が発生するなど損する「NG行動」について教えてもらいました。ぜひ参考にしてください!
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――春先だけでなく、8月後半から9月にかけて引っ越しが多くなるそうですが、それはなぜですか?

石岡 企業の転勤をはじめ、大学の後期が始まる前に1人暮らしを始める学生が増えるため、単身引っ越しの需要が高くなる傾向にあるのです。

――なるほど。それでは、これから引っ越しをするにあたり、退去時に知らないと損するNG行動について教えてください。

NG1 「ガイドライン」の詳細を知らずにいる

退去する際には、原状回復のために必要となる設備の修繕や、ハウスクリーニングなど、次の住人が住める状態にするための退去費用を支払わなければなりません。

ところがこの退去費用が高くなることで、「敷金が返ってこない」「追加で請求された」といったトラブルになるケースが多発しているのです。

トラブルを回避するためにも、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(※通称:ガイドライン)を熟知しておいてほしいです。

ガイドラインの詳細を知らずにいると、支払い義務のないものに対しても請求され、退去費用が高くなってしまう可能性があります。

入居者が原因となって発生した損耗や損害は、入居者の責任で修繕・補償を行う必要があり、これを「原状回復義務」と呼びます。

ただし、入居したときの状態に完璧に戻すということではなく、経年劣化によるもの(時間の経過によって品質が下がってしまうもの)等については支払う必要はありません。

退去時に入居者が支払わなくていい費用については次のようなものがあります。

  • 家具家電を設置したことによる床のへこみ
  • 電化製品の電気焼けによる壁の黒ずみ
  • ポスターやカレンダーによって壁にできた跡
  • 画鋲やピンの穴(小さいもの)
  • 台風や震災による損傷
  • 経年劣化による畳の表替えや裏返し
  • 経年劣化による網戸張り替え

これらについて請求されてしまった場合は、「ガイドラインにより支払い義務はないはず」と伝えることで減額される可能性があります。

一方で、家具を移動させる際につけてしまった傷や、ペットがつけた傷や汚れなどは、入居者が一部負担しなければなりません。

あるお客様は、フローリングにデスクチェアで引っかき傷をつけてしまい、退去時に50万円を請求されていました。

そのようなことにならないためにも、入居時にチェアマットを敷くなどして対処しておく必要があります。

何より、入居時に不動産会社から渡される現況確認書(入居時チェックリスト)に、部屋の状態(設備の傷や汚れ)について記載して返送するのを忘れないようにしましょう。

また入居時の部屋の状態を証明できるように写真を撮っておき、不動産会社に送るのも有効です。

やることが多くて忘れがちですが、退去時に損しないためにも、入居時からしっかり備えておくことをおすすめします。

NG2 ライフラインの解約を忘れる

退去時に忘れてはいけないもののひとつに、電気・ガス・水道・インターネットなどのライフラインを使用停止にする解約手続きがあります。

解約手続きをしないままでいると、引っ越しを済ませた後も利用料金が発生し、損してしまいます。

実際、前入居者が解約を忘れ、見ず知らずの人(現入居者)の公共料金を半年に渡って払い続けていた…という事例もあるのです。

その場合、支払い義務があるのは現入居者ではなく、契約者本人(前入居者)となります。そうならないためにも、解約手続きを忘れないようにしてください。

解約方法は、電気・ガス・インターネットは各会社へ、水道は管轄の水道局へ、それぞれインターネットか電話で連絡すればOK。

1か月前から手続き可能なので、引っ越し日が決まり次第、早めに申し込んでおきましょう。

NG3 粗大ごみの申し込みを計画的に行わなかった

引越しにあわせ、不用品を粗大ごみとして処分したいと考えるかたは多いと思います。

粗大ごみは市区町村に収集を申し込み、手数料を支払った上で、収集日に家の前などに出しておくのが一般的です。

ところが計画的に申し込みを行わないと、引っ越し当日までに処分が完了しないという事態になりかねません。

というのも、通常はおおよそ2週間程度で収集してもらえますが、引っ越しシーズンなど繁忙期には、1か月以上かかることがあるのです。

また収集車に積み込める量とサイズに限りがあるため、一気には依頼できず、数日に分けなければ申し込めないといった場合も。

なお、「トラックの荷台に積めるだけ積んで○○円」といった民間業者も存在しますが、荷台に積める高さや重量には上限があるため、全部積めなかったり、料金が明朗会計でなかったりする可能性もあります。

「粗大ごみより高くついた…」「高額請求された…」といったトラブルを回避するためにも、計画的に粗大ごみの申し込み手続きを行っていただきたいです。

※国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(※通称:ガイドライン)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

Information

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<教えてくれた人>
石岡茜さん。2013年に「女性のための不動産会社を作りたい」と、東京・学芸大学に「ことり不動産」を設立。女性ならではの細やかな視点と「幸せな家選び」をモットーに、物件選びをサポートしている。宅地建物取引士。著書に『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)がある。現在、TV CMを放送中。YouTube「ことり不動産TV CM」でも視聴可能。
https://www.youtube.com/watch?v=r_CAWia41ow

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取材、文・髙倉ゆこ


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