不動産会社の経営者が教える! いま選んではいけない「マンションの間取り」

文・高倉優子 — 2023.8.5 — Page 1/2
物件探しの際、知っておくと助かるトピックをご紹介。『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)の著者であり、5000人超の女性たちの「幸せになれる家選び」をサポートしてきた「ことり不動産」代表の石岡茜さんに、絶対に選んではいけない「物件の間取り」についてお聞きしました。今回は、安心・安全に暮らすために必見の「セキュリティ編」です。物件探しにお役立てください!

NG1 モニター付きインターホンがない

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共用部にオートロックが付いていることは、セキュリティ面で確かに役立ちます。ただし、不審者は裏口や塀を越えて入ってきたり、住人の後ろから気づかれないように侵入してきたりする場合もあるため、オートロックがあっても必ずしも安心・万全というわけではありません。

それよりも私が重要だと思うのは、モニター付きインターホンが付いているかどうかです。築年数の古い物件では、映像がモノクロであったり、モニターがついていない古い型(電話タイプ)であったりする場合があります。防犯性を重視するならばカラーモニター付きが必須です。

フードデリバリーや宅配会社を利用する方も多いと思いますが、制服や顔を確認してから玄関ドアを開けることができれば安心ですよね? もし見覚えのない人が映っていたらインターホンで「置き配」を指定したり、宅配ボックスがついた物件なら、そちらへ入れてもらうよう指示したりすることも可能です。

また、モニター付きインターホンの中には、録画機能付きのタイプがありますが、その場合、記録を遡ってチェックしてみることをおすすめします。以前ご案内した物件で、警察官が訪ねてきた様子が録画されていました。それは、その物件でトラブルがあった可能性があるということ。お客様に「この物件はやめましょう」とご提案しました。

内見の際はぜひ、インターホンの映り具合や、録画記録等をチェックすることをおすすめします。

NG2 駐輪場がない

大阪府警のサイト(※1)によると、強制わいせつ(痴漢)被害の約40%は道路上で発生しています。なかでも、イヤホンで音楽を聴いていたり、スマホを操作していたりする、いわゆる「ながら歩き」中に被害に遭う人が多発していることがわかります。

通勤・通学時はもちろん、外出先から帰宅する際に、自宅から駅、そして駅から自宅までの道のりで「ながら歩き」は止め、周囲に注意を払いながら歩くようにしてください。

駅から離れた物件ならば自転車を活用することもおすすめです。もちろん自転車に乗れば100%安全というわけではありませんが、徒歩に比べると、つきまといや、後をつけられるといった被害に遭いづらいため、防犯性はアップすると思います。

ただし、自転車を買おうにも駐輪場がない物件では置く場所に困ってしまいます。物件探しの際には、敷地内に駐輪場があるかどうかもチェックしておくといいでしょう。

なお、強制わいせつが発生する時間帯を見てみると、午後10時台から翌午前0時台が最も多くなっています。このことからもわかるように、遅い時間のひとり歩きは最も危険です。深夜に帰宅しなければならなくなった場合は安全を最優先して、タクシーを利用するなど、防犯対策を徹底してください。

NG3 侵入しやすいベランダがある

警視庁「住まいる防犯110番」(※2)によると、令和4年度の侵入窃盗の認知件数は、3万6588件。このうち住宅対象侵入窃盗(空き巣)については1万5692件でした。年々、減少はしているものの、1日換算すると約43件も発生しているということになり、決して安心はできません。

集合住宅に関しては、無施錠の玄関ドアから侵入されたり、窓ガラスを破壊して住宅に押し入られたりする悪質なケースが増えているため、注意と対策が必要です。

その観点から、できるだけ避けてほしいのが1階の物件です。1階はベランダが道路に面していることが多く、犯罪者が侵入しやすい傾向にあるのです。とくに人通りがない場所に建つ物件は、選ばないようにしてください。

お客様から「1階で被害にあったので引っ越したい」と相談を受けることが非常に多いです。「カーテンの隙間からカメラが見えた(盗撮)」「家に帰ったら電気がついていて、見知らぬ人が部屋にいた」、「元カレが窓から侵入してきた」…など。そういった被害に遭わないためにも2階以上の物件をおすすめしたいです。

ただし2階以上であっても、足場となる樹木や電柱などからベランダに飛び移ったり、屋上からロープ等をつたって窓から侵入したりする犯罪者もいるため、油断は禁物です。内見の際には、マンションの周辺環境もチェックしておくようにしましょう。

NG4 管理人が常駐していない

これはファミリータイプの分譲マンションを探している方に向けたアドバイスになりますが、管理人が常駐する物件も防犯性が高くなっています。不審者は何より、人の目を嫌うからです。

管理人とは、共用部分の清掃や電球交換など、建物全体の維持・管理を行う人物のこと。マンション内の困りごとに対して相談に乗ってくれ、対策してくれる場合もあります。

管理会社の従業員、管理会社が委託している会社のスタッフが担当することが多く、エントランスから見える位置に24時間体制でいるパターン、平日の9時~17時の日中だけ常駐するパターン、週に2~4回の割合で訪問するパターンなどがあります。

管理人が常駐する物件では、空き巣被害や強制わいせつ等の発生率が下がる傾向に。また、不審者情報などを管理人と共有しておくことで、犯罪の抑止にもなると思います。

最近ではホームセキュリティサービスがついた物件も増えてきました。何かあったときボタン1つで15分以内に駆けつけてくれたり、不在時に窓や玄関ドアが開けられた場合などスマホに通知が届くサービスがあったりと便利です。

予算の兼ね合いもあると思いますが、安心して暮らしたい方は、ぜひ管理人が常駐する物件、およびホームセキュリティのついた物件を検討してみてはいかがでしょうか? 


※1. 大阪府警「令和2年中の性犯罪の発生状況」
https://www.police.pref.osaka.lg.jp/seikatsu/kodomo_jyosei/6/11624.html

※2. 警視庁「住まいる防犯110番」
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki26/theme_a/a_b_1.html

Information

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<教えてくれた人>
石岡茜さん。2013年に「女性のための不動産会社を作りたい」と、東京・学芸大学に「ことり不動産」を設立。女性ならではの細やかな視点と「幸せな家選び」をモットーに、物件選びをサポートしている。宅地建物取引士。著書に『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)がある。
https://www.cotorire.com/

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取材、文・高倉優子


©Volha Kratkouskaya/Getty Images