一級建築士が教える! 令和の生活スタイルに「いらない間取り、設備」3選

文・伊藤順子 — 2022.10.22 — Page 1/2
時代の移り変わりと共に、生活様式や働き方、価値観は変化するものです。家の間取りも然り。あって常識だったものが人によっては、今や不必要で不便、という事象が発生しているのです。一級建築士のリクドウさんが、今の時代にそぐわないという意見が増え始めている間取りと設備をご紹介します。

一級建築士が教える! 令和の生活スタイルに「いらない間取り、設備」

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リクドウさん 共働きが当たり前の世の中になり、男女関係なく限られた時間を家事に使いたくないという思いから、より合理的な暮らしを求める傾向が強まってきたよう。ですから少し前までは、仕方ない、で労力をかけていた手間のかかるものを根底から見直すことで、昔とは異なる間取りや設備が浸透しはじめたんですね。では、具体的にご説明しましょう。

※今回は、おもに東京都内ほか近郊に住むファミリー世帯の戸建てが対象です。

今や不要、不便その1:各居室のクローゼット

快適な家事動線(洗濯動線)を追求した結果、各居室にクローゼットを作らず、洋服専用の部屋・ファミリークローゼット、いわゆるファミクロを設ける動きが広がっています。洗濯動線とは、汚れた衣類を洗う、干す、取り込む、たたんでしまう、という一連の動作を言います。これまでは、どちらかと言えば、汚れた服を脱ぐ、かごに入れる、それらを洗うという、洗濯までの動線の効率化が重視されていて、お風呂の脱衣所に洗濯機、というのが一般的だったと思います。

ですが、洗濯を終えてからの動線のほうが実は大きな負担であると思いませんか。濡れた洗濯物を干し場まで運ぶ、干す、取り込む、畳んで各部屋のクローゼットにしまう。書いただけでも疲れてきます。これを一気に縮められる動線が近年確立され、その際に大きな役割を果たしてくれるのが、ファミクロなんですね。これがあれば、乾いた洗濯物を各部屋に運ばずに済みますから。もちろん、他の手間はファミクロだけではクリアできないので、それはその2でお話しましょう。

ファミクロのデメリットとしては、それ分の空間を確保することで各部屋のスペースが取られたり、年頃のお子さんによっては親と同じ場所に服を置くのは嫌と反発されたりといくつかあるので、実際の生活をイメトレをしたうえでじっくりと検討しましょう。

今や不要、不便その2:バルコニー、ベランダ

ファミクロで乾いた洗濯物をしまう労力は激減しますが、濡れた洗濯物を運び、干す、取り込むという労働はまだ残っています。最近はその動線をカット、つまり干し場となるバルコニーやベランダ自体が不要なのではないか、という声も拡大中です。洗濯物は干さず、ガス式の衣類乾燥機にかけてしまう、それに適さないウールや毛繊維、縮みやすい衣類などは浴室乾燥や部屋干しをすればよいという、ある意味洗濯革命が起きているわけです。ということであればバルコニーやベランダは不要、要るのはランドリールームという洗濯専用室です。

ランドリールームには洗濯機、衣類乾燥機、できれば簡易的な部屋干し場があるとより便利でしょう。そして、大事なのはファミクロの隣であること。もっと言えば、浴室&脱衣所、ランドリールーム、ファミクロ、この3室が隣接していれば、洗う、乾かす、しまうが短時間、短距離で完了するんです。

また、バルコニーやベランダは無駄に汚れるという声が多いことからも不要論が注目を集めているよう。もっとも植物を置いたり、ウッドデッキを敷いて子どもの遊び場やバーベキューなどの活用法ももちろんあり、窓を大きく設け、部屋との境界線をなくすようにすれば、開放的な空間を手に入れることもできます。そう考えると、ある程度の広さがあれば、ランドリールームもバルコニーもあるお家が理想形かもしれません。

今や不要、不便その3:浴室のカウンター

その1、2は洗濯動線に関わるものとして挙げました。その3は同じ家事動線の合理化ではありますが、家事のなかでも掃除の手間を省ける、という観点から浴室のカウンターをなくしてしまう人が増えているようです。カウンターとは、シャンプーやボディソープなどを置く台ですね。鏡とセットで、多くの家庭風呂に当たり前についているものです。なぜ掃除の手間が省けるのか、それはカウンターの裏側などはカビの温床とも言えるからです。また、シャンプーなどのものを置き、濡れっぱなしにすることでぬめりの発生にもつながります。

カウンターを取り、代わりにシャンプ-類は吊り下げ収納にすれば、掃除がかなりラクになるでしょう。水垢が残りやすいことから、鏡まで取る人もいるようなので、これまでの概念を取っ払って物事を考えてみるのもいいかもしれません。

以上、令和の生活スタイルに「いらない間取り、設備」をご紹介しました。近年増えている大まかな傾向ですので、絶対に良いとは限りません。情報のひとつとしてみなさんのご参考になれば幸いです。

教えてくれた人
リクドウさん 一級建築士。設計事務所の管理建築士。普段の仕事は、公共、商業施設の設計がメイン。住まいに対するモットーは「自分らしくいられる、憩いの空間であるべき」


©kameshkova/Getty Images