不動産会社の経営者が教える! 絶対に選んではいけない「一戸建て住宅の特徴」

文・高倉優子 — 2023.5.6 — Page 1/2
「一戸建て住宅を購入したいと検討しているけれど、何を基準に選べばいいかわからない」という方も多いのではないでしょうか? 注文住宅と比較すると中古住宅は価格も安く、実際に家や周辺環境を見て選べるというメリットがあります。一方で、知っておいたほうがいいポイントやデメリットもあります。そこで「絶対に選んではいけない」物件の特徴について『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)の著書であり、5000人超の女性たちの「幸せになれる家選び」をサポートしてきた「ことり不動産」代表の石岡茜さんにお聞きしました。ぜひ家選びの参考にしてください!

1 犯罪発生率の高いエリアにある一戸建て住宅

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一戸建て住宅は自由度が高く、他人の目を気にせずのびのび暮らせるといったメリットがあります。ですが、マンションなどの共同住宅に比べると窓やドアといった室内への侵入経路が多いため防犯性が低く、空き巣に狙われやすいといったデメリットもあります。

「警視庁 住まいる防犯110番」サイト(※1)で公開されている「侵入窃盗の発生場所別認知件数」(令和4年)は、一戸建住宅が33%と最も多く、共同住宅(3階建て以下)7.8%、共同住宅(4階建て以上)の4.3%を大きく上回っています。そのため、夜の繁華街に近かったり、犯罪発生率が高いエリアにある一戸建て住宅の購入はおすすめできません。

治安の良し悪しを見極めるためには、実際に街を歩いてみることが大切です。自分自身の通勤やお子さんの通学など、利用する駅までの道のりに人通りや街灯はあるか、いざというときに助けを求められるようなお店はあるか。特に、この点はしっかりチェックしてください。

ゴミが散乱していたり、至るところに落書きがあったりするような場合は「割れ窓理論」(割られた1枚の窓ガラスをそのままにしていると、さらに割られる窓ガラスが増え、いずれ街全体が荒廃してしまうという理論)の観点からも、治安がよくない街の可能性が高いのでおすすめできません。

また、女性や子どもに対するつきまとい事案をはじめ、ひったくりや特殊詐欺の発生場所や回数が地図上に表示され、情報収集できる「警視庁犯罪情報マップ」(※2)もぜひ活用してください。エリアごとの治安を知ることができで便利です。

2 耐震性に不安のある木造一戸建て住宅

建築基準法で定められる耐震基準は、地震が起こるたびに被害状況などを検証し、改正が繰り返されています。1981年6月の法改正では新耐震基準が定められ、木造住宅については耐力壁の量などが見直され、耐震性が向上しました。

さらに、2000年6月に行われた法改正では、「基礎形状」「柱頭、柱脚、筋交いの接合方法」「耐力壁をバランス計算して配置すること」などが追加されています。耐震性に対する基準がいっそう厳しくなったのです。

2016年に最大震度7を記録した熊本地震では、旧耐震基準(1981年5月以前)の木造建築物の倒壊率は28.2%であり、新耐震基準(1981年6月~2000年5月)の木造建築物の倒壊率(8.7%)や、法改正が行われた2000年6月以降に建てられた木造建築物の倒壊率(2.2%)と比較すると、顕著に高かったことが国土交通省住宅局の調査により明らかになっています。ですから、木造住宅の購入を検討されているのであれば、旧耐震基準の物件はおすすめできません。

また、2000年に作られた「住宅性能表示制度」の基準のひとつである「耐震等級」も、木造住宅の耐震性をはかる重要な指針になります。耐震等級は3段階で表わされ、数字が大きいほど耐震性能が高いことを意味します。

耐震等級1:建築基準法の定めと同程度の耐震性能
耐震等級2:耐震等級1の1.25倍の地震に耐えられる耐震性能
耐震等級3:耐震等級1の1.50倍の地震に耐えられる耐震性能

国土交通省住宅局の調査(※3)では、熊本地震の際、耐震等級3の住宅は大きな損傷が見られず、大部分が無被害であったと報告されています。これらのことからわかるように、耐震基準と耐震等級は木造住宅の安全性をチェックする上で、見逃せないポイントです。ぜひ購入前に確認してください。

3 災害リスクの高いエリアにある一戸建て住宅

日本は地震以外にも台風や水害も多い国土ですから、一戸建て住宅を購入する場合、建物の性能だけでなく土地の状態や立地の安全性にも目を向けることが必要です。建物や間取りが理想的であっても、災害リスクの高い土地に建つ住宅はおすすめできません。

災害リスクを確認するには「ハザードマップ」(※4)を活用しましょう。「ハザードマップ」とは、「自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図」のこと。

防災マップ、被害予測図、被害想定図、アボイド(回避)マップ、リスクマップなどと呼ばれるものもあり、2020年8月28日からは宅地建物取引業法(宅建業法)施行規則の改正に伴い、不動産取引時に不動産事業者がハザードマップを提示して水害リスクを説明することが義務付けられるなど、災害対策の重要な位置を占めています。

ハザードマップの種類は自治体によって異なるものの、主に以下のような情報をチェックすることができます。

浸水予想区域
土砂災害のリスク
津波、高潮のリスク
地震の被害程度、範囲

浸水予想区域図では、浸水被害のレベルが段階分けされて表示されているほか、各地区における避難場所なども記されています。安全を確保するうえで欠かせない情報となるため、事前に住みたいエリアの詳しいデータを入手しておくことが大切です。

また、土砂災害が発生した際、住民の生命や身体に危害が生ずる恐れがあると認められる土地の区域「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」や、土砂災害警戒区域のうち、建築物に損壊が生じ、住民の生命または身体に著しい危害が生ずる恐れがある土地の区域「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」があることも頭に入れておいてほしいです。

2021年に熱海伊豆山地区で起こった土砂災害で、土石流に巻き込まれた住宅のほとんどは「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」に属していました。

その他、液状化リスクのある土地も問題視されていますので、各自治体が発表している「液状化予測図」などをチェックして、その土地にどんな特徴や特性があるのか知っておくことも大切です。

4 再建築不可の一戸建て住宅

再建築不可物件というものがあることをご存じでしょうか? これは家が建っていても、解体して更地にしてしまうと新たな家を建てられない土地のことで、都市計画区域と準都市計画区域内だけにあります。

上記区域内では、「幅員4m以上である建築基準法上の道路に、建物の敷地が2m以上接していること」という「接道義務」が設けられていて、道路に接していない土地には家を建てることができません。つまり消防車や救急車などの緊急車両が入れない土地には家を建てられないということなのです。

一代限り安く住めればいいという方であれば問題ないのですが、長く住みたいとか、子どもに譲りたいといった希望がある場合は、避けた方がいい物件です。相場より安い価格で販売されている一戸建て住宅は、再建築不可物件の可能性があるので注意してください。

なお幅員4m未満でも、接している道路が建築基準法上の道路とみなされている「42条2項道路」の場合は建築可能となるケースもありますので、接している道路の種類を調べておくとよいでしょう。


※1 すまいる防犯100番 
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki26/theme_c/c_a_1.html

※2 警視庁犯罪情報マップ
https://map.digipolice.jp/
 
※3 国土交通省住宅局「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント 
https://www.mlit.go.jp/common/001155087.pdf

※4 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」 
https://disaportal.gsi.go.jp/

Information

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教えてくれた人
石岡茜さん。2013年に「女性のための不動産会社を作りたい」と、東京・学芸大学に「ことり不動産」を設立。女性ならではの細やかな視点と「幸せな家選び」をモットーに、物件選びをサポートしている。宅地建物取引士。著書に『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)がある。
https://www.cotorire.com/

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文・高倉優子


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