かつてすべてのボーカルを自身で務めた意欲作はあったものの、アルバムごとにバラエティに富んだ客演を招き、そのシナジーの面白さをひとつの魅力としてきたtofubeatsの作品。しかし、今回の新しいEPはひと味違う。タイトル『NOBODY』の通り、このアルバムで歌う人は“誰でもない”。

色のないAIの歌声が今の気分に合ってました。

2396 tofubeats

「今回、Synthesizer Vという歌声合成ソフトを使い、歌唱はすべてその声に担ってもらっています。ディープラーニング機能があり、人の歌声を学習し、より人間らしく歌唱ができる〈歌うAI〉。“めっちゃすごい初音ミク”と思ってもらえば間違いないです(笑)」

サウンドは全編を通して、tofubeatsがここ数年で極めた濃密なハウスミュージックが通底。無機質だけれど、なぜか感傷的にもポップにも響く“機械の声”はダンスフロアとの相性も良さそうだ。

「誰かに歌っていただく場合どうしてもその人に合った曲や歌詞にしないと、と考えてしまう。でも、相手がソフトなら何の色もついてないし、自分の中にイメージもない。だからどんな曲も試せる。ちょっとエモすぎる温度高めの歌詞を乗せても、さらっと歌ってくれる感じが今の気分に合ってました。AIを楽曲制作にどう取り入れるかって今後の音楽家のひとつの課題だと思う。それをまあ試したかったという気持ちもあります。2024年のAIとの向き合い方はこういうムードだったよねとひとつ残せたらいいかな、と」

とはいえ、あえて生のストリングスの音を入れたり、テープ録音を使って音の歪みを追加してみたり、デジタルなものだけで完結させず、アナログを塩梅よく加え「ちょっと丸みを引き出す」匙加減も心地いい。歌声合成ソフトを使った実験的なアルバムという印象よりも、tofubeatsらしさをより全体に感じる結果を生んでいる。完全なオリジナル作品のリリースは2年ぶり。昨年はアニメやドラマのサウンドトラックを手がけるなどいわゆる“外仕事”が多かった。オーダーを受けて楽曲を作ることで、自身を客観的に見る術もまた身についたと言う。

「tofubeatsは、一人でやっていることなので、単独で自分の中からだけで何かを生み出そうとするのも限界がある。お題をもらってそれをクリアすることで思ってなかった感覚が自分の中にあると気づくことがある。そういうフィードバックも大事にしています」

メジャーデビュー時は森高千里や藤井隆など錚々たるフィーチャリングアーティストを迎え、新しいダンスミュージックの形を切り開いた。活動をスタートして10周年を迎えた今、誰でもない声を携えてまた違うチャレンジを続けているのだ。

「時代は確実に移り変わっている。だからこそ、その時代ごとにあるものをしっかり残して、聴き返して面白いと思えるものを作っていきたい。この10年間、大きな目標はいい音楽を作って楽しく暮らすこと。それはずっと変わっていません」

tofubeats

アルバム『REFLECTION』から約2年ぶりのオリジナルEP『NOBODY』。「I CAN FEEL IT」「NOBODY」など全8曲収録。デジタルリリースのみ。メジャーデビュー10周年特設サイトも公開中。(ワーナーミュージック)

トーフビーツ 1990年生まれ、神戸出身のトラックメイカー/DJ。2013年、森高千里をゲストボーカルに迎え「Don't Stop The Music」でメジャーデビュー。昨年はUKのDJ QとのコラボEP『A440』などもリリース。

※『anan』2024年5月8日‐15日合併号より。写真・玉村敬太 取材、文・梅原加奈

(by anan編集部)

Share

  • twitter
  • threads
  • facebook
  • line

Today's Koyomi

今日の暦
2026.4.
13
MON
  • 六曜

    先負

  • 選日

    ⺟倉⽇

周りの賑やかさや誘惑に、ふと⼼が揺れてしまうかもしれません。ですが今⽇は、なるべく⾃分の時間を⼤切にしてエネルギーを蓄えましょう。外側のペースに合わせるのではなく、「本来あるべきリズム」に意識を戻してみてください。⽇常のバランスを整えることで清々しさが戻り、次の⼀歩を踏み出す⾃信も湧いてきます。

エンタメ

Recommend

こちらの記事もおすすめ

Today's Update
『呪術廻戦』「死滅回游 前編」乙骨憂太役・緒方恵美「肉体的にも精神的にも成長した乙骨を」
『呪術廻戦』「死滅回游 前編」乙骨憂太役・緒方恵美「肉体的にも精神的にも成長した乙骨を」
Entertainment
Today's Update
不朽の名作『ハムレット』はいかにして生まれたのか。映画『ハムネット』
不朽の名作『ハムレット』はいかにして生まれたのか。映画『ハムネット』
Entertainment
河内大和「喪失から全てが始まった、愛の物語」映画『ハムネット』が明かしたシェイクスピアの根源
河内大和「喪失から全てが始まった、愛の物語」映画『ハムネット』が明かしたシェイクスピアの根源
Entertainment
森七菜「映画『炎上』によって傷つけられる人がいないよう、尊厳を守るという気持ちと覚悟を持って演じたつもりです」
森七菜「映画『炎上』によって傷つけられる人がいないよう、尊厳を守るという気持ちと覚悟を持って演じたつもりです」
Entertainment

Movie

ムービー

Regulars

連載