経済的に厳しい家庭で育った過去…パックン「お金がないから人生つまらないと思ったら負け」

ライフスタイル
2023.05.21
お笑いコンビ「パックンマックン」として活動しながら、25年以上の投資歴があり、金融教育の講師として全国各地で公演も行うパックンさん。経済的に厳しい家庭で育ったパックンさんが、今でも節約や、お金を増やすことに積極的に取り組む、その理由を探る。

ずっとお金と向き合ってきたパックン流の、幸福になるためのお金に縛られない生き方とは?

Entame

アメリカで、家計の苦しい母子家庭で育ったパックンさん。幼少期の経験から、お金に縛られない生き方をずっと目指してきた。

「僕が小さい頃、母はいつもお金の心配を抱えていて、泣いてばかりいた。母は20年もの間、同じスカートをずっとはき続けていたしね。僕や姉が飲むドリンクも水か脱脂粉乳ばかりで、炭酸水のようなシャレたものは、うちには一切ありませんでした。『お金がないからって、なんか問題ある?』と開き直っていた時期もありましたが、やはり心の中ではお金のことばかり気にしていて、それから解放されたいという気持ちをずっと強く持っていました」

そんなパックンさんが、お金を効率よく生み出すために工夫することの大切さを知ったのが、10歳から8年間毎日欠かさず続けた新聞配達のアルバイトだそう。

「朝5時に起きて、玄関に届けられた新聞に広告を1つずつ折り込んでから、自転車に乗って配達に行くのですが、初めて配達した数は44軒でした。たくさんの新聞を配ればそれだけ収入が増えるので、どんどんコツをつかんでいき、12歳の頃には125軒も配れるように。そして、高校生になり、もっと配達数を伸ばすために、免許を取得して、16万円の中古車を購入。車で回ったことで、なんと445軒も配れるようになったんです。これこそ工夫と賢い出費そのもの。ついでに働くことの喜びも得ることができました。プライベートでも工夫して遊ぶことを楽しんだ。たとえば友達とスキー旅行をする時は、リフト券が安くなる15時以降から参加するんです。その時間になると雪山は暗いし、アイスバーンができるから、コンディションが劇的に悪いけれど、そのおかげでスキーがみるみる上達した(笑)。遊ばないという選択肢をとるのではなく、遊ぶためにどうするかを考えてばかりいましたね。だから公園や山など、お金がかからない場所に友達を誘って、フライングディスクを3時間も投げ合ったこともある。お金がないから人生つまらないと思ったら負け。お金はなかったけれど、僕ほど人生を楽しんでいる人はいないと思いながら生きてきました」

そんなパックンさんは、お金持ちになりたいとは思ったことはないが、お金を増やしたいとはずっと思っていたそう。

「やはり幼少期に、カツカツの生活をしていたことで、お金がないことに不安を抱きたくないから、お金を気にしない状態を作るにはどうするか考えた時に、お金を増やせばいいと思ったんです。そうすれば行きたいところにも行けるし、会いたい人に会える。やりたい仕事もできる…。スキーだって15時からじゃなくて、朝から行ける(笑)。そういう拘束されない、自由な人生を生きるために、お金を増やしたいと思った。それで投資を始めて、仕事もおかげさまで順調なので、今は人生の自由度はかなり増していますね。昔は、家族4人で海外へ旅行する時は時間がかかる乗り継ぎ便ばかり使っていたけれど、今は直行便を予約できるようになった。これも無駄遣いではなく、無駄な疲れを生まないための賢い出費ですよね」

好きな仕事をしながら、プライベートでも好きなことをして、16歳と14歳のお子さんの大学の学費や、自分の老後の資産の準備もちゃんとできている。資産が増えて、余裕のある暮らしを手に入れたが、今でも無駄遣いはせず、日々節約しながら過ごしているそう。

「子供の頃に身につけた価値観はなかなか簡単に変わりませんね。でもね、楽しい老後を夢見ながら生活していることも大きい。たとえ数百円だとしても今この無駄遣いをしなかったら、老後に異国を旅行した時に、屋台でドーナツやパパイアとか美味しいものが買えるかもしれないと思ったらワクワクしません? それに僕は高級品に全く興味がありません。もちろん本当に価値を感じて買うならいいですが、見栄を張るために買うのはもったいない! 節約の勇気を持つことも大事だし、なんなら節約していることを周りに公言してもいい。だって夢を叶えるために堅実にお金を増やしたり、節約している人って、ちゃんと自分の将来のことを考えられている人だから信頼されやすく、仕事でも成果を上げそうじゃないですか。日常生活の中で金銭感覚を育てることは、とても大事なことです」

そんなパックンさん、贅沢をすることは一切ないのだろうか。

「もちろんあります。海外旅行もするし、スキューバダイビングも好き。卓球が趣味で、僕は年1回、1万6000円もする上等なラバーを買って張り替えています。それが僕の“リラックス”。経済的自立をして、早期リタイアすることを“FIRE”と呼びますが、僕はそれを目指していません。僕がお金を増やす理由は、仕事を辞めるためではなく、暮らしや気持ちにゆとりを持ち、今ある幸せと将来の安心を持ちつつ、自由なライフスタイルを実現するため。それが究極のリラックスです」

パックンさん 本名パトリック・ハーラン。1970年11月14日生まれ、アメリカ・コロラド州出身。‘97年に吉田眞さんとお笑いコンビ「パックンマックン」を結成。現在、情報番組のコメンテーターや大学講師など多方面で活躍中。近書に『無理なく貯めて賢く増やす パックン式お金の育て方』(朝日新聞出版)。

※『anan』2023年5月24日号より。写真・来家祐介(aosora) スタイリスト・末次秀彦 ヘア&メイク・橋本 杏 取材、文・鈴木恵美

(by anan編集部)

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