『RENT』でWキャスト! 花村想太と平間壮一の共通点は“友達の少なさ”!?
物語の舞台は、まだエイズが不治の病といわれていた’90年代のNY。古いロフトで暮らす映像作家のマークとミュージシャンのロジャーは、家賃(レント)も滞納中の貧乏暮らし。しかもロジャーはHIV陽性で、恋人をエイズのために亡くしてから家に引きこもっている。そんなふたりを中心に、若きアーティストたちのさまざまな葛藤と情熱、彼らを取り巻く人々との出会いや別れなどが綴られる。『RENT』がここまで長く熱く多くの人々に支持されるのは、キャッチーかつ多彩な楽曲の魅力はもちろん、作品の根底に流れる深いメッセージ性だ。ここに登場する人々はじつに多彩。ゲイやレズビアン、ドラァグクイーンに、SMクラブのダンサーや弁護士、ホームレスもいれば、資産家の娘と結婚して裕福になった仲間もいる。それぞれが自分の信念や理想、夢を持ち、イデオロギーの違いから衝突する場面もあるけれど、それでもなお彼らは友情や愛を育んでいく。他人同士が価値観の差異によりすれ違ってしまうのは、どんな場面でもあること。それでもその違いも許し受け入れ、繋がり合うことで、ときには想像を超えた奇跡さえも起こす。こんな仲間がいるっていいな、と思わせてくれるミュージカルだ。
花村想太×平間壮一
――’20年の『RENT』でもWキャストでマークを演じていたおふたりですが、それぞれ稽古場で周りのキャストとどのような関係性を築かれていたのか伺えますか。
平間壮一:このふたりは、お互い結構放置プレイだったんですよね。
花村想太:もともと僕が、稽古場でわりとひとりでいることが多いというのもあるんですけど、平間さんはどちらかというと、稽古場の雰囲気作りを積極的にされていた印象があって、真逆なタイプなんだなと思ってて。
平間:それは僕が、マークの前にエンジェル役(’15年と’17年の『RENT』にエンジェル役で出演。ドラァグクイーンで愛に溢れたキャラクター)だったのが大きくて。僕ももともと人としゃべるのが苦手で、稽古場で一匹狼でいるタイプだったりして。でも、(日本版リステージを手がける)アンディから、エンジェルを演じるには今の僕のままじゃダメで、普段から心をオープンにしていないといけないと言われたんだよね。
花村:すごく意外です。
平間:だって最初の年は、アンディから「稽古中、いつでもいいからお前から話しかけに来い」っていう宿題を出されてたからね。それくらい周囲とのコミュニケーションが苦手だったの。結局その年は、話しかけに行くタイミングが掴めなくて、アンディが帰国する時に「宿題できなかったな」って言われて。次のときに変わらなきゃって、必死の思いで心を開いてみんなと接していくようにしていたら、誰でも受け入れるよっていうエンジェルのような振る舞いが自分の中で自然になってて。
花村:最初にお会いしたとき、本当にエンジェルっぽい方だなって思ったんですよね。じつは僕が初めて観た『RENT』が、平間さんがエンジェルで出られていた回で。あまりに感動して、次の日の現場にパンフを持っていって「とくにエンジェルがよくて」ってメンバーに説明したぐらいです。
平間:嬉しいな。
――マークという役についてはどう思われていますか? つねに傍観者である自分を歌う歌もありますが。
平間:マークは途中で気付くんですよね。自分が傍観者になっていることに。それまでは気付いてなくて…。
花村:そうなんです。結構能天気。
平間:ただ自分の情熱に正直に生きていて、頑張ってるなと。
花村:でも2幕くらいになって、ふと「あれ? 俺、何もない?」みたいなことを思うっていう。
平間:あの「何もない」は何を指しているんだろうね。愛とか? でも、撮る側でありたい人なんだよね。
花村:カメラマンの立場になったら、そう思うのかもしれないですね。知り合いのカメラマンさんでも、集合写真とか撮る側に徹して自分が写ろうとしない人いるんですよね。マークもそうじゃないですか。新年が明ける瞬間「1、2、3、オープンセサミ!」って盛り上がる場面でも、みんなが楽しそうにしている中、ずっと撮ってるんですよ。普段写る側の僕には理解できないですが(笑)。
平間:本来そうだからね(笑)。
花村:でもマークって、世界に数あるミュージカルの登場人物の中でも、定まってない部分の多いキャラクターだなって気がします。『RENT』の他のキャラクターはわりと定まってると思うんですが…。
平間:演じる人によって、いろんなマークがいるよね。
花村:そうなんですよ。一番自由で寂しいキャラクターだと思うんですけど、その寂しさに、演じる人それぞれの抱える孤独みたいなものが表現されているような気がしています。俳優のパーソナルな部分が大事というか。もともと僕は友達の少ない孤独な人間だと思うんですが、そこがマークに反映されているのかなと。
平間:同じだ。僕も少ないというか、むしろほとんどいないくらいだから。
花村:えっ!? そんなふうには…。
平間:オープンなのは見せかけなんだって(笑)。でもすごくわかる。マークを演じるときに、軸にする部分が見えにくいキャラクターだから、僕は毎回、マークとして何に重きを置いて演じたらいいかを考えるんだよね。そういう視点で作品を俯瞰すると全然違う感触があるの。ブロードウェイのマークの紹介文に“傷心中”って書かれているのを見て、そこから役を立ち上げてみようと思ったら、元恋人のモーリーンのことをめちゃくちゃ気にしてるマークが見えてきて。そうじゃなく映像作家になる夢や希望に重点を置いてみても、また違う感触になる。
――あらためて本作が多くの人を魅了し続ける理由は何だと思いますか。
花村:僕は、いまだにこの作品の何が好きなのか、自分でもよくわからないんです。ただ、初めて観たときに号泣して、本能的に「出たい」って思ったんですよね。物語の展開は早いですけど、なんか首根っこ掴まれて引っ張っていかれるようなパワーを感じたんですよね。
平間:僕もいまだによくわからないんだよね。ただ観るたびに感じることが違うので、そこがハマり続ける理由なのかなと。あとはやっぱり作品の根底にある愛なのかなと、一周回ってあらためて感じています。
ミュージカル『RENT』 古いロフトで暮らす映像作家のマークとミュージシャンのロジャーは、家賃を滞納し、電気も暖房も止められてしまった。そんな中、仲間のコリンズからNYに戻ってきたと連絡が入る。3月8日(水)~4月2日(日) 日比谷・シアタークリエ 脚本・作詞・音楽/ジョナサン・ラーソン 演出/マイケル・グライフ 日本版リステージ/アンディ・セニョールJr. 東宝テレザーブ TEL:03・3201・7777 https://www.tohostage.com/rent2023/
(1枚目写真右)はなむら・そうた 1990年8月15日生まれ、兵庫県出身。Da-iCEのボーカルとして活躍しており、一昨年には「CITRUS」で第63回日本レコード大賞受賞。2020年にミュージカル『RENT』でミュージカルデビュー。昨年出演した『ジャージー・ボーイズ』で文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞受賞。
リング、右手中指¥12,100 右手薬指¥13,200 左手中指¥8,800 左手小指¥11,000 ピアス¥18,700(以上ジュエッテ TEL:0120・10・6616) シューズ¥18,700(LiNoH/ステュディオス カスタマーサポート TEL:03・6712・5980) その他はスタイリスト私物
(1枚目写真左)ひらま・そういち 1990年2月1日生まれ、北海道出身。2007年に『FROGS』で舞台デビューを果たし、ダンスで培ったハイレベルのパフォーマンス力で、数々の舞台で活躍。一昨年の『イン・ザ・ハイツ』、昨年の『The View Upstairs』など主演作も多数。6月から音楽劇『ダ・ポンテ』に出演。
すべてスタイリスト私物
※『anan』2023年3月8日号より。写真・宮崎健太郎 スタイリスト・中元伸明(花村さん) 岡本健太郎(平間さん) ヘア&メイク・宮川 幸(P‐cott/花村さん) 菅野綾香(平間さん) 撮影協力・BACKGROUNDS FACTORY EASE
(by anan編集部)