山内ケンジワールド炸裂! 趣里&シソンヌ・じろう「後半の展開はまだ僕らも知らない」

エンタメ
2022.11.15
一見、何気ない夫婦の会話だけど、耳をそば立ててみると、なんだか妙に艶っぽかったり、不穏だったり。徐々に炙り出されてくる人間の欲望や本能と、そこに絡み合う複雑な人間関係に、ハラハラするやらおかしいやら。そんな笑えるのにシュールでペーソス溢れる会話劇を紡ぎ出す、劇作家で演出家の山内ケンジさん。その山内さんのファンを公言する趣里さんとシソンヌのじろうさんが、書き下ろしの新作舞台『温暖化の秋‐hot autumn-』に出演する。

淡々と繰り広げられる会話が、しみじみおかしくククッと笑える。

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趣里:初めて山内さんの主宰する城山羊の会の舞台を観たとき、舞台なのにリアルな会話を見ているような感じがして、なんだこれは…って驚いたんですよね。その会話というのも、その人たちにとっては日常だけれど、人間のちょっと気持ち悪いところだったり、おかしなところが描かれていて、それが面白くて…。

じろう:僕も10年前くらいから城山羊の会の公演に通い始めたんだけど…。公園のベンチで寛いでいたら目の前に来たオジさんたちが揉め出して、そのやり取りを覗き見しているみたいな感覚が好きで。

趣里:すごくわかります(笑)。

じろう:僕もネタを書いているから余計に思うんですけど、あの脚本がすごいよね。笑いを取りにいかずに笑いを取るんだから。自分があの中に入って、ちゃんと笑いが取れるもんかなって思いながら観てたから。

趣里:自然な会話の中に生まれるフッていう笑いなんですよね。今、稽古場でも、城山羊の会の常連の岡部(たかし)さんや岩谷(健司)さんの芝居を見ながら笑っちゃってます。

じろう:わかる。城山羊ファンからすると、志村けんさんが出てきたみたいなキタキタっていう感覚。ただ、山内さん自身は「ここが笑いどころなんで」みたいなことはおっしゃらないので、本番始まってお客さんの反応でわかる部分もあるのかも。

趣里:山内さんの稽古って、本当に淡々と重ねていく感じで、現時点でおっしゃるのは声の大きさとかくらいですよね。舞台だし、こちらはセリフを聞かせなきゃってつい思っちゃうけど、普段のふたりでしゃべるくらいのボリュームでいい、と。でも、だからお客さんがグッと入り込んで観てくれるんでしょうね。

じろう:そうそう。自然と入り込んじゃう温度感があるよね。

趣里:今、稽古しながら、自分では思ってもみなかった展開になってることも結構あって。その日その日のライブ感みたいなものも面白いです。

じろう:まだ脚本が全部上がってきてないのもあって、自分の役に関してはつかみどころがなく、何者なのかモヤモヤしたままなんだけど…。

趣里:でも客観的に見ていて、じろうさんの役はすごくかっこいいです。

じろう:かっこいいのかな、アイツ。

趣里:今の時点ではすごく誠実というか。芯がありながらも、ちゃんと人を想っている感じがすでに漂っていて。見ながら、じろうさんってかっこいい方なんだなって思いました。

じろう:自分ではわかんないけど。

趣里:まあでも、山内さんの作品なので覆される可能性もありますが。今のところ橋本(淳)さんの役の方が不誠実な感じに見えます。

じろう:趣里ちゃんの役はあっちゃん(橋本さん)とカップルで出てくるんだけど、なんか太宰治の小説に出てくる良家のお嬢さんみたいな感じがするんだよね。品があって、言葉遣いもちょっとお嬢様っぽくて。

趣里:そういう雰囲気だけど、ちょっと「うん?」って思うところもあって。女性同士のいざこざみたいなことになったりもするし(笑)。

じろう:まあ、後半の展開はまだ僕らも知らないので、ここから意外な一面が見えてくるかもしれない。

趣里:そうですよね(笑)。

じろう:でもやっぱりお芝居がすごいキュートだよね。あっちゃんと、すぐにカップルみたいな雰囲気が出せていて、役者さんってすごいなって思って見てました。僕は東野(絢香)さんと一緒にいる役なんだけど、あんなふうにできないなって。

趣里:そもそも、ふたりがカップルなのかもわからないですしね。

じろう:今回、僕は余計なことをせず、山内さんの世界観に入り込むことに徹しようと思っていて。そこが勉強したくて、今回参加させてもらっているみたいなもんで。僕、もともと稽古大っ嫌いなんだけど、今、すごくやりたいことができているからか、全然苦じゃないんだよね。

趣里:山内さんの脚本って、その通りにちゃんと会話できていれば面白くなるはずなんですよね。いま稽古していて、あらためてリアルな会話…生の芝居の楽しさを実感しているところです。本当に面白いので、この山内ケンジワールドを読者のみなさんにもぜひ体験してほしいです!

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KAAT×城山羊の会『温暖化の秋‐hot autumn‐』 婚約している女(趣里)と男(橋本淳)。しかし男が別の女と二股をかけていたことを知り、悲嘆にくれた女は自死を考える。しかし周りから止められ、いつしかその想いは自死から復讐へと変わっていく。11月13日(日)~27日(日) 横浜・KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉 作・演出/山内ケンジ 出演/趣里、橋本淳、岡部たかし、岩谷健司、東野絢香、笠島智、じろう(シソンヌ) 全席指定6000円ほか チケットかながわ TEL:0570・015・415(10:00~18:00)https://www.kaat.jp/d/ondankanoaki

しゅり 1990年9月21日生まれ、東京都出身。2011年デビュー。出演映画『もっと超越した所へ。』が現在公開中。また、来年後期放送のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』のヒロインに決定している。
トップス¥15,400 ワンピース¥66,000(共にPHOTOCOPIEU/SHOWROOM LINKS)http://links-partners.com リング¥132,000 ピアス¥63,800(共にENEY/ENEY松屋銀座店 TEL:03・3566・2139)

じろう 1978年7月14日生まれ、青森県出身。2006年よりシソンヌとして活動。単独ライブを精力的におこなっており、’14年にはキングオブコント優勝。俳優としても大河ドラマ『いだてん』などに出演。

※『anan』2022年11月16日号より。写真・的場 亮 スタイリスト・中井綾子(crepe/趣里さん) ヘア&メイク・カワムラノゾミ(趣里さん) 取材、文・望月リサ

(by anan編集部)

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