ファン興奮の初出しも!? 「11ぴきのねこ」馬場のぼるの人間像に迫る展覧会

エンタメ
2021.07.30
あの名作絵本の生みの親・馬場のぼるの人間像に迫る展覧会、「没後20年 まるごと馬場のぼる展 描いた つくった 楽しんだ ニャゴ!」をご紹介します。

絵本「11ぴきのねこ」シリーズなどで、今も幅広い世代に根強い人気を誇る漫画家・馬場のぼる。1927年に3人姉弟の末っ子として青森県三戸町で生まれた彼は、リンゴの行商人や開墾農民、代用教員など職を転々とする傍ら絵の勉強を始め、劇団や映画館のポスター、看板を描いていた。21歳の時に漫画家を志して上京。翌年には少年誌で早くも連載漫画を手がけるようになり、一時期は手塚治虫、福井英一とともに「児童漫画界の三羽ガラス」と呼ばれるほどの人気を博した人物だ。

漫画家としての才能にあふれた彼だったが、次第に少年漫画の仕事に対して思い悩むようになる。当時の少年漫画はアクションものが主体となり、次第に自分の体質に合わなくなったと感じていたのだ。24歳の頃、島田啓三を中心とした「東京児童漫画会」の会員となり、手塚治虫や古沢日出夫などと知り合い、刺激を受ける。次第に「漫画と本質的に同じであるうえに絵をたっぷり見せることができる」と絵本の制作にやりがいを覚え、徐々に活躍の場を絵本の世界へと移してゆく。

やがて誕生したのが、1967年刊行の『11ぴきのねこ』だ。11匹のやんちゃな猫たちが繰り広げる物語は、子供はもちろん大人をも虜にし、一大ロングセラーに。絵本のみならずキャラクターグッズや人形劇なども幅広く展開され、世代を超えて愛される存在になっていった。

そんな馬場が自宅に残していた約50年分の膨大な資料も活用し、本展では彼の漫画や絵本の業績、スケッチブックや個人的に描いた絵画、立体作品、交友関係などにも焦点を当て、馬場のぼるの人間像を紹介する。

展覧会は彼の代名詞「11ぴきのねこ」シリーズからスタート。1作目から最後の6作目までラフスケッチや色指定の記録などと合わせ、当時の絵本の制作過程もわかるような、貴重な校正用リトグラフを紹介する。さらにアトリエに残されていた1951年から2001年までの約50年分のスケッチブックから発見された取材メモ、猫のモチーフなど、様々な資料を7つに分類して紹介。また故郷の風景画や小学校時代の絵や作文、旧制中学時代のノートなどを展示し、馬場の原点も探る。なかでも印象的なのは彼がプライベートで楽しんでいた創作の数々だ。猫たちの様々な姿をキャンバスに描いたり、自ら土をこねて鬼瓦をつくったり…。おなじみのキャラクターたちが思い思いに動く姿は、ファンにとっては興奮モノ。これまでこうした私物を紹介した機会はなく、今回初出しの見どころといえるだろう。

口ひげと目深にかぶったチューリップハットがトレードマークだった馬場のぼるは、手塚治虫と仲が良かったという話も有名。なぜ彼が大人に響くメッセージを絵本の中にも描き続けてきたのか、この展覧会を見ればきっとわかるはずだ。

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『11ぴきのねことぶた』こぐま社、1976年刊 印刷原稿 特色刷り校正用リトグラフ・紙 こぐま社蔵

Entame

「ブウタン」『幼年ブック』集英社、1954年掲載漫画原稿 墨、水彩等・紙 こぐま社蔵

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『ぶどう畑のアオさん』こぐま社、2001年刊 原画 水彩、墨・紙 こぐま社蔵

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『きつね森の山男』こぐま社、1974年刊 印刷原稿 特色刷り校正用リトグラフ・紙 こぐま社蔵

「没後20年 まるごと馬場のぼる展 描いた つくった 楽しんだ ニャゴ!」 練馬区立美術館 東京都練馬区貫井1‐36‐16 開催中~9月12日(日)10時~18時(入館は17時30分まで) 月曜(8/9は開館)、8/10休 一般1000円ほか TEL:03・3577・1821

※『anan』2021年8月4日号より。文・山田貴美子

(by anan編集部)

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