急激な体温変化にご用心。緩やかに上げる習慣を。
温活は大事でも、何も考えずにひたすら温めればいいというわけではないと、医師の渡邉賀子先生。
「私たちは、心臓や脳などがある核心部の体温を37°Cに保つために、体温を調整します。たとえば、暑い時は、汗を出して熱を逃がし、逆に寒い時は、熱を外に出さないようにします。つまり体温が一気に上昇すると、カラダは逆に熱を放出することで体温を調節し始めます。そのため、注意しないとかえって冷えリスクが高まるのです」
さらに急激な体温変化は、交感神経と副交感神経からなる自律神経にも負担がかかるとか。
「急に冷えると交感神経が優位な状態が続き、自律神経のバランスが乱れることも。さらに、一度寒さを感じると体温が元に戻りにくくなるので、体温は緩やかに上昇・低下させることが大事です」
ここでは、体温調整を緩やかに、かつ熱を守るための行動を、食事の観点からお教えします。
体温上昇と冷えは表裏一体! 体温調節のメカニズムとは。
冬は、「暑い」と感じたあと“冷えリスク”が高まる!
「暑い」と感じると…汗をかいて、熱を逃がす。
暑いとカラダが感じると手足や皮膚表面近くにある末梢血管を拡張させ、血液の流れる量を増やすことで、外気に向けて熱を逃がそうとする。それでもカラダに熱がこもっている場合は汗を出す。すると汗が乾く時にも熱を奪って気化するので、体温は下がる。
「寒い」と感じると…熱を作り出そうとする。
逆に、寒さを感じた時は、まずは大切な臓器のある深部体温を守るために、手足や皮膚表面近くにある血管を縮小させ、鳥肌を立てる。さらに、全身の筋肉を震わせ、ガタガタと動かすことで、少しでも熱を作り体温を上げようとする。
食事:摂取したエネルギーが体温調節に直結!
食事は、カラダに熱をもたらす最も重要なアクション。
「食べ物を食べると、体内に吸収された栄養素が分解。それが体熱となって消費され、カラダが温まることを“食事誘発性熱産生”といいます。エネルギー効率を高めるためにもバランスの良い食事は欠かせませんが、急激な体温上昇を防ぐには、摂取する食べ物の温度や、食事する時の環境にも気をつけながら、じんわりとカラダを温めることが大切です」
熱を守るためには…
温かい料理を選択しつつ、適度に冷まして食べる。
鍋やスープは、圧倒的に温まる最強の温活料理だが、できたてのアツアツ状態でせかせか食べると、汗をかき、それが冷える要因に。焦らず適度に温かい温度まで冷ましてから食べるのがベスト。
熱いものよりむしろ、“温める食材”を摂る。
温活というと熱いものを熱いままで摂ったほうがいいと思いがちだが、汗だくで食べるくらいなら他のアプローチも。カラダを芯からポカポカ温めてくれる旬の食材やネギ等の薬味を活用してみよう。
急いで食べない。
早食いは消化不良を起こし、結果的に全身の血の巡りが悪化するため冷えのもと。そのため食事の時間は十分に取り、ゆとりを持ってよく噛んで食べよう。暴飲暴食や激辛メニューの大量摂取も避けたい。
熱くなりすぎたら、常温のものも摂って調整する。
熱いものを食べる場合は、冷菜やサラダ、お漬物など冷たいものを一緒に摂取したり、他の食べ物や飲み物でバランスをとることを意識しよう。フルーツやデザートなども活用して。
着るものでこまめに体温調節。
食べて熱がこもる前に、上着を脱いでおくなど、汗をかかないように事前にコントロール。体感温度を細やかに調整するには、脱ぎ着しやすく、薄着にもなれる重ね着がおすすめ。
食休みを取る。
食事が終わった時に意識したいのがクールダウンの時間。食後の体温を緩やかに落ち着かせて。特に夕食後は、リラックス状態をキープでき、副交感神経も優位になるので、眠りにも良い影響が。
漢方専門医・渡邉賀子先生 帯山中央病院理事長、麻布ミューズクリニック名誉院長。1997年、北里研究所に日本初の「冷え症外来」を開設。冷え関連の著書多数。
※『anan』2020年12月9日号より。イラスト・石山さやか 取材、文・鈴木恵美
(by anan編集部)