タンパク質
すべての細胞の“モト”。これがなければ始まらない。
「英語でタンパク質を指す『プロテイン』は、『最も重要なもの』という意味のギリシャ語から派生したもの。その言葉どおり、体じゅうで必要な“原材料”です」(山崎先生)
しゃきしゃきと動ける体でいるためには、必要不可欠な栄養素。
「肌や髪、骨を健やかに保つためにも必須です。タンパク質は体内で常に合成と分解を繰り返すうえ、夏は消耗が激しく不足しがち。毎食しっかりと摂りましょう」(森さん)
目安は1食につき片手に乗る程度の肉や魚、卵、大豆製品を。毎回種類を変えるのもポイントだそう。
「そうすることで食べ方が変わり、ほかの栄養成分をバランスよく摂るのにも役立ちます」
摂り方のコツ タンパク質の代謝を助けるのはビタミンB2。肉や魚、卵や豆類自体に含まれることが多いけれど、さらに増やすなら乾物やアーモンドなどと一緒に摂ろう。
ビタミンB群
タンパク質や糖質を働かせる大事な立役者。
ビタミンB群とはB1、B2、B6など8種類のビタミンの総称。
「なかでも大切なのが糖質の代謝に関わるビタミンB1と、糖と脂質、タンパク質の代謝に広く関わるビタミンB2、体内の酵素の作用を助けるビタミンB6です。これらがしっかり働いてくれると、肌荒れや肥満の予防になるだけでなく、イライラなどメンタル面のトラブルを抑えるのにも役立ちます」(森さん)
豚肉やうなぎ、豆類、にんにくはビタミンB群が多くおすすめ。
「また、ビタミンB群は腸内でも作られています。食物繊維やオリゴ糖などを摂って腸内環境を整えることも、ビタミンB群を増やすことにつながります」(山崎先生)
摂り方のコツ 尿で排出される率が高い水溶性ビタミンなので、こまめに摂ることが必要。疲れ対策には、ビタミンB群とブドウ糖がバランスよく含まれる甘酒もおすすめ。
鉄分
現代女子に圧倒的に不足中。こまめに補給を。
血液内で酸素を運ぶヘモグロビンの材料となるミネラル。メラニンの分解にも関わっている。
「鉄分が行き渡った体は疲れにくく、肌ツヤにも好影響。夏は汗で排出される量が増えるので、意識して摂りたいですね」(山崎先生)
比較的吸収のいい「ヘム鉄」は赤身の肉や鶏のレバー、しじみ、かつお、あさりに豊富。「非ヘム鉄」はひじきや大豆、切り干し大根などの植物性の食材に多く含まれている。
「吸収されにくいミネラルなので、多彩な食材でこまめに摂りましょう。吸収を促すビタミンCやクエン酸のほか、造血作用のある葉酸と一緒に摂ると効果的。葉酸はマンゴーやほうれん草に豊富です」(森さん)
摂り方のコツ 紅茶やコーヒー、緑茶に含まれるタンニンには、鉄の吸収を阻害する働きが。鉄分不足が気になる人は、食後の飲み物のタンニンは控えめに。
カリウム
脚や顔のむくみを防ぐ、お助けミネラル。
「夏は汗によって塩分も失われるため、ある程度は塩分を補給する必要がありますが、実際は排出よりも摂取している量のほうが多くなりやすい。食欲を刺激するために料理の味付けを濃くしたり、辛いものが食べたくなることが原因です」
と、山崎先生。過剰な塩分は水分を呼び、むくみの大きな原因に。
「ナトリウムを排出し、体内の水分バランスを整えてくれるのがカリウム。トマトやきゅうり、すいかなどの夏野菜や、アボカド、わかめ、アスパラガスなどに豊富です。水に溶け出しやすいミネラルなので、生で食べるか、加熱するときはスープなどにするのがよいでしょう」
むくみが気になる人は、ぜひ。
摂り方のコツ 塩分排出のメリットを生かすために、調理時は塩を控えめに。調理用の塩を、カリウムやマグネシウムなどのミネラルを多く含む自然塩に替えるだけでも効果的。
ビタミンC
美肌作りとストレス対策に必須のビタミン。
メラニンの生成を抑えてコラーゲンの合成を助け、高い抗酸化力で細胞の老化を予防…と、美肌にうれしい働きがいっぱいのビタミンC。
「肌にいいだけではなく、鉄分が体内に吸収されるのを助けるのもビタミンCですし、白血球の働きを活発にしたりと免疫力アップにも関わっています」(山崎先生)
多く含まれているのは、キャベツや小松菜などの緑黄色野菜に、大根、カリフラワーといった淡黄色野菜、じゃがいも、フルーツなど。
「野菜は生なら1食につき両手のひらに一杯、加熱したものなら片手に一杯分を。ビタミンCはストレスで消耗されるので、暑さが厳しい時期はしっかり補給を」(森さん)
摂り方のコツ ビタミンB群と同じく水溶性のビタミン。「熱に弱いので、生野菜や果物もバランスよく食べることが大事。ジュースにするのも一案です」(森さん)
フィトケミカル
植物の自衛成分に、強力な抗酸化力が。
フィトケミカルとは、野菜や果物が持っている色素や香り、苦みなどに含まれる成分のこと。
「植物が紫外線や外敵などから身を守るために作り出したもので、人にも良い働きをしてくれるものがたくさんあります」(山崎先生)
とくに紫外線にさらされる夏野菜は抗酸化作用を持つものが多く、
「代表格はトマトの色素“リコピン”。油と一緒に摂ると吸収率が高まります。また、しょうがやみょうが、ねぎ、しそなど、香味野菜の香り成分も有用。香りでリラックスできるだけでなく、血流改善や、ビタミンB群の吸収、肝臓での解毒を助ける働きも。野菜は、色や香りにも注目して選んでみましょう」
摂り方のコツ リコピンは油とともに加熱すると吸収率アップ。香味野菜は、しょうがやねぎ以外は加熱によって香味成分が消失しやすいので、できれば生で食べるとよい。
クエン酸
酸味に頼って、疲れも肌荒れも寄せ付けない!
体が、糖質をエネルギーに変えるときに必要になるのがクエン酸。
「酸っぱいものが疲れを取ることは経験上よく知られていますが、それはこのクエン酸が働いているから。ほかにもミネラルの吸収を助ける、抗酸化成分の働きを促進するといった作用があり、夏の体に欠かせない成分のひとつです」(森さん)
クエン酸は、酢のほか、柑橘類やいちご、梅干しなど、酸味のある食材に多く含まれている。
「ハイビスカスティーもおすすめです。クエン酸と、ビタミンCも豊富。ほんのり赤い色は、フィトケミカルも含まれているしるしです」
疲れオフも美白も期待できるハーブティーを、夏の定番ドリンクに。
摂り方のコツ ビタミンB1を多く含む豚肉や豆、未精製の穀類、糖質とともに摂ると効果的。玄米入りご飯と梅干しや、豚肉とレモンのパスタなどは良いメニュー例。
山崎まいこ先生 皮膚科医、まいこ ホリスティック スキン クリニック院長。消化吸収と腸内環境に着目した「ホリスティック栄養学」を提唱。体の中から美を導く診療に定評がある。
森さやかさん 女子栄養大学 栄養クリニック管理栄養士。医師と提携しての指導に定評のある、ヘルシーダイエットコースで調理・栄養相談を担当。https://www.eiyoclinic.com
※『anan』2020年7月29日号より。イラスト・oyumi 取材、文・新田草子
(by anan編集部)