面倒見のよい堀川次郎、容姿に恵まれ皮肉屋の松倉詩門。高校2年生の彼らの共通点は、図書委員であること。放課後、図書室で暇をつぶす二人に持ち込まれる数々の謎とは?
本と鍵の季節

米澤穂信さんの新作『本と鍵の季節』は、魅力的な男子コンビが活躍する青春ミステリ短編集だ。

「もともと、いろんなタイプのミステリを書こう、と始まった企画でした。それで1話目を“暗号もの”にして、こういう謎を解くのは誰だろうと考えた時、二人の人物像が出来上がりました。次の短編では違う登場人物を考えていたのですが、周囲から“彼らの話がもっと読みたい”と言ってもらえたので、二人の話を続けることになりました」

物語は堀川の視点で進む。謎を解く二人組とくればホームズとワトソンのような「探偵と助手」という役割分担をイメージしがちであるが、本作では二人が共に推理に挑戦し合っていく。

「堀川はわりと真っすぐにものを見ると同時に発想が優れ、松倉は斜めからものを見ていて、鋭さがある。視点が少しずつ違うダブル探偵が一緒に謎を解いていくという形です」

どれも本もしくは鍵に関わる謎が登場するが、ミステリのタイプのバリエーションについては、

「表向きはこういうミステリだけど、その奥にはこういうミステリの狙いもある、という二重構成です」

ネタバレを避け表向きだけ説明すると、先述の“暗号もの”に加え“アリバイ探し”、他人の何気ない言動から秘密を暴く“ワンシチュエーションからの推理連鎖”、“日常の謎” “テキストクリティーク(資料の読み込み)”といったタイプがあり、読めばどれもその展開に驚くはず。ミステリの手練れの米澤さんだけに、細部も周到に組み立てられている。探偵役が最終的に犯人を追い詰めて裁いたりしないのも特徴で、

「ここから先は一介の高校生の領分ではない、と彼らもわきまえていますね。それに、事件を解決することが動機というより、好奇心のために行動している部分もあります。それでも、そこから踏み出す場面があります。人が本当に死ぬかもしれない場面と、作中ただ一度だけ“君”という言葉が使われている場面の、2か所です」

というから、ぜひチェックを。そして、季節のうつろいとともに堀川と松倉の二人の関係がどう変化していくのかも、読みどころだ。

「第1話の時点で二人はすでに友人同士でお互いのことを分かり合っている。でもお互いが知っているのは、放課後の図書室にいる相手なんですよね。それが、いろんな謎に出合い、外の世界を見るなかで、相手の知らない一面も見えてくる。そして…ということを考えていました。彼らは今は未熟なところがありますが、これからの時間で、いろんなことを知っていくはず。そんなニュアンスもこめて、タイトルに“季節”という言葉を入れています」

上質な謎解きと、青春のきらめきとほろ苦さ、そこからほの見える男子たちの友情。ディテールまでしっかり噛みしめたい一冊なのです。

よねざわ・ほのぶ 作家。1978年生まれ。2001年のデビュー作『氷菓』から始まる〈古典部シリーズ〉などが人気。’11年『折れた竜骨』で日本推理作家協会賞、’14年『満願』で山本周五郎賞受賞。

『本と鍵の季節』 放課後の図書室にいた堀川と松倉のもとに、先輩から「開かずの金庫を開けてほしい」と相談が。二人が推理に挑む「913」ほか5編収録。集英社 1400円

※『anan』2019年1月16日号より。写真・土佐麻理子 インタビュー、文・瀧井朝世

(by anan編集部)

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