眉村ちあき「目がギョロギョロしている人がスキ」から曲作り、不思議シンガーの魅力

写真・北尾渉 取材、文・かわむらあみり — 2022.9.19 — Page 1/2
【音楽通信】第121回目に登場するのは、でんぱ組.incやももいろクローバーZへの楽曲提供や、ほかのアーティストとのコラボでも話題の弾き語りトラックメイカーアイドル、眉村ちあきさん!

ライブの対バン相手により音楽に興味が湧く


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【音楽通信】vol.121

2019年より“弾き語りトラックメイカーアイドル”として活動している、眉村ちあきさん。

自身の音楽活動はもちろんのこと、でんぱ組.incやももいろクローバーZへの楽曲提供や、他アーティストとのコラボレーション曲を発表するなど、多彩な才能を発揮しています。

そんな眉村さんが、2022年7月7日に初のEPをリリース。さらに、10月30日には、東京・LINE CUBE SHIBUYAでのワンマンライブを控えているということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。

――幼少時に音楽にふれたきっかけから教えてください。

父が沖縄出身なので、家ではいつも沖縄民謡や沖縄のラジオが流れていました。でも、小さい頃に音楽に興味を持つことはなく、気になるようになったのは高校3年生から。K-POPが流行りだして、クラスのみんなで聴いたり踊ったりしていた普通のJKとして過ごしていました(笑)。

そんななかで、テレビに出ているアーティストの方の歌を聴いて「これぐらいだったらわたしも歌えそう」と、なぜか自分でも歌える気がして。高校を卒業してから、縁あってアイドルグループに入ってライブ活動をするようになりました。

ライブをするうちに対バン相手の音楽を細かく聴くようになっていって、「こういうジャンルがあるんだな」といろいろな音楽に興味を持ちはじめたので、ちゃんと音楽を聴きはじめたのは高校を卒業してからだといえますね。

――いまは弾き語りトラックメイカーアイドルとしてご活躍中ですが、もともとご自身で楽器を始めたのはいつ頃だったのでしょうか。

アイドルのときは歌だけに集中していたので、ギターを始めたのは20歳ぐらいからです。ソロになって最初の頃は、打ち込みのトラックメイクから始めて、遊ぶように音楽を作っていました。曲ができるとひとりでライブをするようになって、グループと違ってひとりだと何をしたらいいのかわからないから、楽器でも始めようかと。


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――もともと人前に出ることがお好きだったのでしょうか。

そうですね、目立つことが好きかもしれないですね。保育園のときのお遊戯会では、客席にいる保護者たちの前に登場して、ひとりで歌う役をやって「なんて気持ちいいんだろう」と思っていました。親の会社の忘年会で、小学生のときからマイクを持って「みんな聞いてー!」とMCをしたことも(笑)。

学校で合唱するときは、他の子のパートにつられて音程がはずれてしまう子もたまにいましたが、「なんでつられてるの?」と内心思っていましたね。大勢よりも、ひとりで歌ったほうが楽だなって。でも、高校生時代の自分のカラオケ動画を観ると、いまよりすごく下手なんです。だから、自分で歌がうまいと思って歌っているイタい人なんですが(笑)、自信だけはずっとありました。

――2019年にデビューされましたが、節目の3年を超え、現在4年目を迎えられて心境はいかがですか。

曲を作るうえで、気持ちいいものをひたすら求める、というスタンスはデビュー当時から何も変わっていません。でも、パフォーマンス面においては、まったく意識が違いますね。

ブレスをマイクに入れるか入れないか、ひと息にも集中するようになりましたし、ライブの本番前に何を飲むか気をつけるようにもなりました。ひとつのライブに対しての意識が全然違いますね。

事前に対バン相手にまつわるものを調べて、イントロで音に組み込んだら向こうのお客さんがうれしいんじゃないかとか、おもてなしの心が芽生えて。どうやったらもっと楽しんでもらえるかを以前の百倍ぐらい考えるようになりました。

わたしの歌は1年前より百倍うまくなった


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――2022年7月7日にEP『マルコッパ達』を配信されました。現在放送中のTVアニメ『ちみも』(テレビ東京系 毎週木曜 深夜1時30分)の主題歌「マルコッパ」も収録されていますね。

お話をいただいてから、初めてアニメのオープニング曲を書き下ろしました。アニメの曲といえば、有名な「おどるポンポコリン」が思い浮かぶんですが、0歳から100歳まで歌えるような、一度聴いたら忘れられないようなこの曲を超えたいなと。キャッチーな曲を作るのは得意なので、自分のなかのキャッチーさを全部「マルコッパ」に込めました。

――2曲目の「レイニーデイ」は、ご自身でも歌うのが難しかったそうですね。

ピッチを当てるのが難しいメロディを作ってしまったんです(笑)。たとえば「イエーーーイ!」と大きい声を伸ばし続けるのは、わたしとしては簡単なんですが、小さい声で細かく歌うのは音がズレやすいから難しくて、集中しないと歌えない。

でも一見、小さい声より、大きい声で「イエーーーイ!」と歌う人のほうが声が出ていてうまいと思われやすいんですよね。本当はわたしもそっち派なんですが(笑)、それは簡単にできるから、今回は難しいメロディを歌うというのが新鮮でした。

――EPの収録曲として、急きょ作った楽曲なんですか?

いえ、EP用に作ったわけではなかったんですが、偶然EPの制作時期にできました。曲はいつも作りたくなったら作る感じなんです。この曲は、雨の日に聴けるような、気分が上がるような曲がほしいなと思って作って。それも友人の(歌手の)南波志帆ちゃんとご飯を食べているときに、ふと曲のイメージが浮かびました。

彼女に「どんな顔がタイプなの?」と聞かれて、「目がギョロギョロしている人がスキ」と答えたら、「ああ〜後ろから後頭部をポンって叩いたら、ポロって落ちちゃうくらいに目が出てる人ね」と言われて。もしも本当にポンと叩いて両目が落ちて、その目玉がふたりで旅をしたらどうなるんだろう……ということを考えていたら、そこからこの曲ができたので、実はこの曲は目玉の旅の歌なんです(笑)。

――目玉らしき言葉は歌詞に出てきませんが(笑)、お友達と食事中にフッと湧き出たイメージから曲ができたんですね。

はい。だから、南波志帆ちゃんに、ありがとうって思っています。

――ご本人もうれしいんじゃないですか、ふたりの会話から曲ができたこと。

いえ、まだリリースしたことも言っていません(笑)。自分でも「そんなところから?」というところからイメージが湧くので、そんなときはすぐ「曲を作らなきゃ!」という気持ちになります。


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――3曲目は旧友という、音楽プロデューサーのTACOS BEATSさんと共作された「浜で聴くチューン」ですね。

この曲は、TACOS BEATSさんのスタジオに遊びに行ったときにできた曲です。お茶やお菓子を持ってパーティをするつもりで行ったら、「ちょうどいま作ってるビート」と曲を聴かせてくれて、「じゃあメロディ入れていい?」と返してすぐ作りました。TACOS BEATSさんは、わたしが全然作らないベクトルの音楽を作っているので、新鮮です。

わたしは歌詞とメロディをすぐ作ってしまうんですが、「あとはここの部分作ってね」と言うと「ちょっと時間ちょうだい」と言われて。翌週、スタジオに遊びに行ったら、曲が完成していました。

――アーティストの方によって、曲作りのペースは違うこともありますよね。

TACOS BEATSさんは、ビートはすぐに作ることができる方なんですが、わたしはビート作りに時間がかかるんです。人には人のやり方があるなと思いつつ、共作はすごく楽しかったですね。

TACOS BEATSさんは、わたしがアイドルグループをやめてからやった、1回目か2回目のソロライブのときのPAさんだったんです。そこで仲良くなって、「眉村ちゃんはもっと曲をたくさん作ったら売れるよ」と言ってくれていて。まだ持ち曲が4曲ぐらいしかなく、お客さんもゼロのときでしたが、その言葉をモチベーションにして家に帰って曲を作る日々でした。

トラックメイカーでもあるTACOS BEATSさんがプロデュースしていたアイドルグループと対バンしたのですが、彼の作った曲を彼女たちは歌っていて。いつかTACOS BEATSさんのようなトラックメイカーになりたい、いつか共演できるようにがんばると言っていたので、まさか一緒に曲を作る日がくるとは。いまは友達のように遊んでくれていますが、共作がリリースされることは、お父さんのように喜んでくれています(笑)。

――ほかの方とのタッグという意味では、今年2月に発売されたアルバム『ima』ではシンガーソングライター堂島孝平さんとのコラボ曲がありましたし、堂島さんの8月発売のアルバムにも新コラボ曲「てんてん」が収録されていますよね。

はい。堂島さんは、びっくりするぐらい考え方もすべてが似ていて、まるで自分としゃべっている感覚になるぐらいです(笑)。同じというのも恐縮ですが、メロディラインの作り方やライブのパフォーマンスにおいても、共感できるといいますか。もし同世代だったら、絶対負けないぞと火花がバチバチだったかもしれません。

だから、実際には世代も違ってちょうどいいところが、仲良しの秘訣かも(笑)。でも、ステージの堂島さんしか知らないんです。プライベートの話は一度も聞いたことがないので、もしも一緒にご飯に行って、「あれ? 違うんだけど」となるのも怖いので、これ以上は深堀りしません(笑)。


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――いまが絶妙な距離感なんですね。コラボといえば、日米ロックユニットのザ・リーサルウェポンズと眉村さんのコラボ曲「サムライディスコ feat.眉村ちあき」も9月28日にリリースされます。

この曲は演歌なんですよ。レコーディング当日に「演歌っぽく歌ってみて」と突然言われて、「え? 演歌は聴いてきてない」と(笑)。ふたりの理想の形になるよう苦労しましたが、新しいジャンルを作ろうとしているその姿勢に刺激を受けました。

――コラボ以外にも、でんぱ組.incとももクロのニューアルバムに楽曲提供されていますね。

もともと相手の要望を聞くということができないタイプだったんですが(笑)、この2年ぐらいで映画の挿入歌や番組のテーマ曲を担当させていただく機会があって、相手の求めているものを作りながら自分の色を出す、というやり方を覚えて。

今回、その経験をでんぱちゃんとももクロちゃんの2組に生かすことができました。2組とも女の子グループですし、わたしにしかできない歌詞に仕上げてもわかってくれるかなと。2組とも、取材などで歌詞について「すごくわかる」と言ってくれているので、こちらの気持ちが伝わっていてうれしいです。

――2022年10月30日には、東京・LINE CUBE SHIBUYAでバンド形態のワンマンライブ「眉村ちあきの音楽隊 – Episode 2 -」を開催されますね。昨年2021年9月の東京・中野サンプラザの「- Episode 1 -」公演を経ての今回となります、どのようなステージになりそうですか。

今回も音楽隊のメンバーは同じで、この1年で増えた新曲をこのバンドで披露します。わたしがレベルアップしたぶんだけ、レベルアップした曲をみなさんに聴いていただけますし、リハーサルで細かい部分まで指摘できるのも楽しみですし。

音のひとつひとつにまで耳を研ぎ澄ませられるようになっていて、1年前よりも鋭い音を目指せる気がします。なんといっても、フロントマンとしてのわたしの歌が1年前より百倍うまくなっていますし、見せ方の意識も全然違うので、ぜひ期待して観に来てほしいですね。

ライブを観たら悩みがなくなったと思わせたい


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――オフの日はどんなふうに過ごしていますか。

最近“ひとりではしご酒”にハマっています。ひとりでお店に行っても、コロナ禍だから全然しゃべらないですし、隣の人もしゃべりかけてこないからちょうどいいんですよ。「ひとりはしご酒 女」とキーワードで検索してYouTubeを見て、「この子が行っているこの店おいしそう」とそのお店に行ったり。もともとお酒に強くないですが、ひとり酒は楽しいです。

――もともとのご趣味はなんですか。

宝塚が好きで舞台をよく観に行きました。家でも真似してセリフを言っていたんですが、最近好きな子が辞めてしまって……。宝塚のほかにも、『鬼滅の刃』などの2.5次元ミュージカルや、劇団四季の『バケモノの子』も観ました。

ステージの端から端まで観て、「この役者さんはすごく歌がいいな」と思ったら、帰ってから調べるという楽しみ方もあります。もともとパーティといいますか、みんなで歌って踊ってという状況が好きなんです。わたしもいつかステージでは、コーラスや楽器隊を後ろにたくさん従えて、グルグル回転する舞台装置も使ってみたいですね。

――美容面は普段どうされていますか。

とくにライブ前にはよく走ります。ステージの体力作りという面と、血行がよくなることで代謝がよくなり肌もキレイになるから。さらに、最近は配信もあるので、アップになったときになるべくみなさんに、肌がキレイでカワイイと思ってもらいたいんですよね。


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普段の食事内容もなんとなく気をつけてはいますが、ananwebを読んでいる美容に詳しい方からすると、たいしてタメになるようなことはないかも(笑)。朝ごはんはもりもり食べて、夜ごはんは少なめです。コロナ禍から自炊を始めましたが、朝ごはんは定食ぐらい品数をたくさん作って、自炊を楽しんでいますね。夜にお酒を飲むときは、おつまみをちょっと食べるだけにして、なるべく食べないようにがんばっています。

――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。

いつか矢沢永吉さんのように、ドンと構えて、何を言っても人の心に響くような説得力がある人間になりたいですね。そのためにも、時には傷つくことや、人を憎むようなことがあってもいいと思いますし、いろいろな経験がしたいなと。歌詞に説得力をもたらすような人生を送りたいですし、説得力のある歌を歌えるようになりたい。「眉村ちあきのライブを観たら悩みなんてどっかいっちゃった」と思わせるぐらい、海のような大きな人間になりたいです。

取材後記

トラックメイカーアイドルとして表舞台で活動しながら、自身のオフィスである「(株)会社じゃないもん」の代表取締役社長を務め、ほかのアイドルの方への楽曲提供も手がけるなど、マルチな才能を持つ眉村ちあきさん。ananwebの取材では、ニコニコとほがらかな笑顔と不思議な世界観で、惹きつけてくださいました。そんな眉村さんのEPとワンマンライブをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。


写真・北尾渉 取材、文・かわむらあみり

眉村ちあき PROFILE

東京都出身。弾き語りトラックメイカーアイドル。
アイドルであり、作詞、作曲、編曲、トラックメイクまでを自ら行う。アイドルグループとして活動後、2016年2月より、眉村ちあき名義でソロ活動をスタート。2019年1月、インディーズでのベストアルバム『ぎっしり歯ぐき』をリリース。

2019年5月、メジャー1stアルバム『めじゃめじゃもんじゃ』でデビュー。
2022年2月、4thアルバム『ima』をリリース。7月、EP『マルコッパ達』をリリース。10月30日、東京・LINE CUBE SHIBUYAにてバンド形態のワンマンライブ「眉村ちあきの音 楽隊 – Episode 2 -」を開催する。

Information


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New Release
『マルコッパ達』

(収録曲)
01.マルコッパ
02.レイニーデイ
03.浜で聴くチューン(眉村ちあき&TACOS BEATS)

2022年7月7日発売


眉村ちあき オフィシャルサイト
https://mayumura.tetetetetetetetetete.club/

10月30日LIVE「眉村ちあきの音楽隊 – Episode 2 -」
https://sunrisetokyo.com/detail/19091/

眉村ちあき Twitter
https://twitter.com/rexno_chi