今の姿からは想像できない…猫さまが赤ちゃん時代を過ごした壮絶な環境とは

取材、文・Manabu Matsunaga — 2023.11.12
フランス在住のカメラマン、松永学さんによる、フランスの猫さま紹介! 第181回目はペルシャ猫のシラス(Shirasu)さま。

奇跡的に保護された猫さまの物語

【フレンチ猫さま】vol.181
猫さまの話をもっと聞かせて!
シラスさまは8歳の男性猫さま。


オスのペルシャ猫


<シラスさまが語ります>
僕は早起きです。家はヴァンセンヌの森に近いので、夜明け前の鳥のさえずりで5時半ぐらいに目を覚まします。朝日が白々と明ける午前6時ころ、太陽が昇ってくると、朝の匂いを嗅いで、太陽の光を見つめ、そして近所にやってくる鳥たちを眺めることから1日が始まります。
オスのペルシャ猫

セントラルヒーティングのラジエターの上に置かれた食器置きのすぐ隣がいつからか僕の定位置になりました。心地がいいし眺めも最高だからです。最近は寒くなったのでマフラーを敷いてさらに暖かくしてもらい、お外を眺めるにはとても快適になりました。
オスのペルシャ猫

飼い主が仕事のない日は24時間一緒に過ごします。飼い主の背後、たまに膝、たまに机の上の飼い主の左手のあたりで、邪魔せずにウトウトしています。
オスのペルシャ猫

朝ごはんはスープ多めの缶詰(去年尿結石を取ったのでウェットご飯が必須)、夜ごはんはカリカリ。朝ごはんがいつも特別ご飯です。飼い主が作った天然酵母パンが好きなので、それをお裾分けしてもらう時もあります。おねだりのときは、朝のご飯を待つ場所で、準備ができるまで物言わず飼い主の様子を伺います。なんと朝がカリカリ!? の時は、お腹は空いてても缶詰が出るまで我慢して、物言わず飼い主を見上げます。意外と意地っ張りなところもあるのです。
オスのペルシャ猫

紐遊びが大好き! おっとりさんでやさしい性格とよく言われます。
<飼い主から見たシラスさまとは>
幼少の頃から55年間ずっと私のそばには猫がいました。先住猫イワシと日本からフランスに渡り、その後イワシは19歳半の生涯を終えました。天国に逝って4年経ち、また猫を受け入れても大丈夫か? と思っていた矢先、たまたま友人の母がタロットができるという事で、イワシがどう思っているかタロットで聞いてもらったら「いいよって言ってるわよっ」のお答え。イワシそっくりなシラス(志らすと名づけました)がやってきたのです。
オスのペルシャ猫

私のもとにやってきた経過を詳しくお伝えします。南フランスでぺンションを経営しながらブリーダーもしているかたのところでシラスは生まれました。彼の姉妹は1000ユーロという高額な値段で販売されるのですが、シラスを含め、男の子は買値が付かないので貰い手がなければ悲しいことに餓死させられてしまったかも…。たまたまそのペンションに泊まった私の友人の母にイワシの写真を見せたら「この子今私が滞在してる南フランスのペンションに居る子にそっくりだわ」と、そこにいる子猫らの写真を見せてもらったのです。その中にイワシ生き写しの子猫が居たのです。そのオス猫ちゃんを引き取ることにして、晴れてシラスはうちの子になりました。残念なことにシラスと一緒に暮らしていた子猫は餓死して友人の母の手の中でなくなったようです。友人母が言うにはオスの子猫らは薄暗い湿った部屋で餓死するまでほっとかれるのかなぁと…言っておりました。こういうシステムが早くなくなってほしいものですよね。
オスのペルシャ猫

私の元にやって来た時、私の手のひらで寝ることができるほど小さく、その時すでに生後4か月にしては未熟すぎる印象でした。フサフサの毛の下にはノミがウロウロ、即退治! 30匹はいたかもしれません。その後、うちに来て2週間で急に大きくなりました。成長が遅かったせいか免疫不足で白癬菌の病気になりました。トリマーの友人からご指導いただき、抗菌にいいというシャンプーをいただきなんとか菌を撃退できました。おかげで今は健康体そのもの!
オスのペルシャ猫

猫ってそもそもどこから来たんでしょう。猫が自分達のところにやってきたのは偶然じゃなかろうと思う今日この頃です。気がつけばじっと見られていて、この子にはなにもかも見透かされているようです。猫に学ぶ毎日で、猫は生とし生けるものの先生かもと思います。好きなご飯を食べて、外の鳥を眺めてまた寝る。甘えたいときに膝に乗ってきて、そうでなければまたひとりで寝る。微妙な距離を置いて実に無駄がない猫は気まぐれとか言われますが、どうやらそうではなさそうです。彼らの中では好きなもの嫌いなものやりたいことやりたくないことは明確です。漱石の著書の「吾輩は猫である名前はまだない」我輩のように。人間てメンドクサイ生きモンだなぁ~と観察しているかもしれません。
オスのペルシャ猫

猫は神様がこの世に創り出した素晴らしい贈り物なのです。今も私の後ろで鼻息をぴぃぷぅさせて爆睡している姿を見ると、かけがえのない時間が流れている感じがします。朝起きてまず彼の食事とトイレ掃除、1日動くためのウォーミングアップ。シラスが私の日々の原動力なんです。
ーーシラスさまは無事に保護されてから8年が経ちました。早起きシラスさまは今日も暖かいラジエターの上でいつも通りの朝を迎え、飼い主を1日の始まりに元気づけている事でしょう。ここでは鼻息の音を伝えられませんが、みなさん想像してください。
著者情報

松永学
猫さま好きフォトグラファー。雑誌、webなど多くの媒体で活躍。猫歴、実家に通っていた野良を含めると10匹以上、パリには2匹の猫さまを連れて移住、現在は保護猫3匹と暮らす。どこへ行っても通りで見かけた猫さまに挨拶は忘れません!