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「正気(せいき)」を高めることで外敵からカラダを守る。
漢方では「免疫力」を指す言葉が「正気」だと漢方養生指導士のロン毛メガネさん。
「『正気』はカラダを外部の刺激から守ってくれる、免疫力と似た働きをします。細菌やウイルスに当たるものを『邪気』と呼び、体内に『正気』が充実していれば、『邪気』を寄せ付けず、病気になりにくいと考えるのです」
さらに「邪気」には、寒さや暑さなどの外的要因や、怒りや不安、極度の喜びといった内的要因なども含まれるのが特徴だ。
「免疫力アップには何かをプラスしようと考えがちですが、日々『正気』を消耗させている原因に着目することで“気”(エネルギー)は高められます。食事や睡眠、生活習慣がカラダを作っているからです」
まずは下にまとめた「正気を高める行動」の項目を見て、自分の普段の生活を見直してほしい。
「目を酷使したり睡眠時間が短いなど、現代生活は消耗過多になりやすいです。消耗を抑えないと、補っても追いつきません。心身のために、ぜひ実践してください」
正気を高める行動。
消耗を抑える
・十分な睡眠時間をとる
・目を酷使しない
・長風呂、サウナを避ける
・早食いしない
・考えすぎない
・冷たいものを避ける
・水を飲みすぎない など
補う
・バランスの良い食事
・起きたら白湯を飲む
・腹式呼吸をする
・背中に日差しを当てる
・適度な運動をする
・早寝
・ストレスを溜めない など
3月・4月に行いたい漢方養生。
「東洋医学では、人間は自然界、宇宙の一部であるという『天人合一』という考え方があります。季節や時間によりカラダの陰陽のバランスや、“気”“血”の流れも変わるんです。だから、その時期に合わせた養生を実践することがとても大事です」
そこで今回、3月と4月におすすめの漢方養生を教えてもらった。
「僕が生まれた香港の人が大切にしているのが、二十四節気に合わせた養生です。3 月は『啓蟄』『春分』あたり。4月が『清明』『穀雨』で、いずれも春の節気になります。春は、冬の間に体内に溜まった古いもの、老廃物を発散させる、デトックスの季節。いつも以上に排出を心がけて過ごすと心身が整いやすくなります。難しく考えず、カラダをいたわる視点を持つだけで十分。今回のアイデアを参考に、あなたらしい取り入れ方、楽しみ方を考えてみてください」
漢方養生1:下半身は暖かいファッションで。
急に冷え込む日もあるので、上半身は薄着でいても、下半身は防寒対策を忘れずに。この時期下半身を冷やすと、秋に冷え症が悪化。冷えは「正気」を消耗する最大の原因なので、注意して過ごそう。
漢方養生2:緑の野菜をたくさん食べる。
ほうれん草、ブロッコリー、ニラ、セロリなどの緑野菜はデトックスをサポート。味噌汁の具材にすれば薬膳スープになる。逆に、乳製品や甘いものは排出を妨げるので控えめに。
漢方養生3:ヨモギや柑橘の皮を湯船に入れる。
入浴は心身の老廃物をデトックスするのに最適。ただ、長風呂で汗をかきすぎると気血を消耗する。ヨモギや柑橘の皮を入れて保温効果を高めた風呂に10分ほど入れば十分。
漢方養生4:温かい花茶を飲む。
雨の降る日が続くと気分が上がらず、自律神経も乱れがちに。カモミールやジャスミンなど、温かい花茶が緩和してくれる。キンモクセイ茶は、胃腸が弱い人にもおすすめ。
漢方養生5:軽めの運動でじんわり汗をかく。
気血が滞りやすく、デトックスに励みたい春。適度な運動を習慣化したい。普段運動習慣がない人が、汗を大量にかいて頑張りすぎるのは逆効果。軽めの運動で、じんわり汗をかく程度を目指そう。
漢方養生6:雨の日は替えの靴下を忘れない。
“湿”は万病のもと。雨の日に濡れた靴下のままだと、湿気が体内に入ってとどまり、胃腸が弱くなり、気血の巡りも悪化。正気も失われる。春先は長雨が続きがち。靴下の替えを、お忘れなく。
PROFILE プロフィール
ロン毛メガネさん
漢方養生指導士、国際中医専門員など複数の有資格者。香港出身で東洋医学の家系に生まれ育つ。生活に取り入れやすい養生の知識を発信。著書に『読むだけで心と体が元気になっちゃう漢方養生の本』(大和書房)など。
anan 2439号(2025年3月19日発売)より