「愛とは自分自身を信じること」7年かけた新作を刊行。 加藤シゲアキ『ミアキス・シンフォニー』発売記者会見をレポート!

スター🐼
2025.03.14

2月26日に発売となった加藤シゲアキさんの小説『ミアキス・シンフォニー』。『anan』で不定期連載がスタートしたのは、2018年のこと。連載は2022年に終了し、執筆当初から7年という月日を経て、待望の単行本に。その間、加藤さんはどんな思いでこの作品と向き合ってきたのだろう。発売に先駆けて2月24日に行われた、発売記念記者会見の模様をレポートします。

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会場となったのは、マガジンハウスのエントランス。新聞、雑誌、ウェブ、テレビなど、さまざまな媒体の記者やカメラマンが集まり、加藤さんの作品への注目度の高さが窺える。

記者会見は、『anan』編集部からの質問を受ける形で進行。連載開始当初に加藤さんが戸惑ったエピソードや、作家としての自身の成長などについて語られた。

――まずは、連載スタートから7年の歳月をかけて『ミアキス・シンフォニー』を書き上げられた感想から教えてください。

加藤:本当に自分でもいつ完成するのかわからないような時期がありました。この7年の間に、ほかの小説が2冊も出ています。2012年に作家デビューしてから、今年で13年。『ミアキス・シンフォニー』は、僕の作家人生の半分近くをかけて作り上げましたし、自分の分身のような作品が生まれたなと思っています。

――そもそもこの作品は、『anan』編集部からの依頼によりスタートしましたが、連載を始めるにあたって加藤さんにとって事件があったそうですが。

加藤:事件と呼ぶほどではないんですけど(笑)。依頼を受けた時、僕は連載ではなく短編の書き下ろしだと思っていたんです。当時、グループ(NEWS)が15周年だったので、『anan』さんからオファーをいただくのは、いい機会だなって思ったりもしていて。でも、打ち合わせをしてみたら、連載だったという(笑)。当時のマネージャーも、連載と書き下ろしの違いをよくわかっていなくて、ある種、見切り発車のような形でやることになったんです。そんな経緯もあり、不定期連載でもいいということに。だから、まずはタイトルを決めて、1回目の内容を決めて…。こういうふうに手探りの状態から作品を作っていくことが、僕にとってはあまりない経験だったので、その分、時間がかかりましたし、この作品から学ばせてもらうことが、とても多くありました。

――急遽、連載スタートとなったなかで、『ミアキス・シンフォニー』というタイトルは、どのようにつけられたのでしょうか。

加藤:最初は、A面とB面、違う側面から見ると物事の見え方が変わるというプロットを考えていて。その時たまたま、犬や猫の祖先で今は絶滅してしまった「ミアキス」っていう動物を知ったんです。1つの生き物から、犬や猫という相対的な存在が誕生していた。それがこの作品の枠組みと重なるところがあると感じたんです。そして、「シンフォニー」は交響曲のことですが、そのようにたくさんの登場人物が出てくることで、ハーモニーみたいなものが生まれるのでは。そんな期待を込めてつけたタイトルです。

――本作は、「愛」をテーマにした小説だと思います。どのような流れで、このテーマに至ったのでしょうか。

加藤:自分で愛をテーマにした、と言うのはちょっと照れくさいんですけど…。この小説とともに30代を過ごしてきましたが(現在37歳)、僕も大人になって「愛だよな」って思ったんですよね。
というのもありますし、連載当時、読んでいたエーリッヒ・フロムの『愛するということ』からインスパイアされて書き上げたところもあるので、初めから愛を見つめていたわけではありませんが、登場人物を深掘りしていくうちに、あらゆる愛が浮かび上がってきたということでしょうかね。

――装丁についてもお聞きします。画家のヒグチユウコさんに依頼したのは、加藤さんたっての希望だったとか。出来上がって、初めてご覧になった時は、どう思われましたか?

加藤:僕がもともとヒグチさんのファンだったということもあるんです。どんなカバーにしようかという話が出た時に、きっと難しいとは思うけど、ヒグチさんが描くミアキスが見てみたいと。猫のイメージが強いヒグチさんに、その祖先となった動物を描いてもらいたい。そうしたら、オファーに快諾していただいて。ヒグチさんもミアキスを描いてみたいと思われていたそうで、こういうのってなんて言うんですかね、奇跡みたいなこともあるんだなと思いました。7年前には想像もしていなかった奇跡みたいな出来事が、今はこうして起こっている。ある種、“持っている作品”だなと、自分でも思ったりしています。そして、実際に出来上がったイラストを見て、期待を超える筆致といいますか。あまりにも素晴らしいので、小説が負けてしまうのではと不安になるほど。お願いして本当によかったと思っています。

編集部からの代表質問は、これにて終了。次に、会場に集まった記者からの質問に移ると、小説のテーマである「愛」にかけて、加藤さんにとっての「愛」を問われる一幕も。

加藤:どうなんですかね。でも、小説を書いていて、(愛とは)自分自身を信じることなんだと強く思いました。愛するということを突き詰めていくと、 最終的には自分が試されているような状況になるので。愛っていろんな解釈ができると思うんですけど、例えばこの作品に関しても、これでいいのかと迷うこともありましたが、書き始めたからには自分の力を信じて進む。それがすごく重要でしたね。僕の小説を、文学賞の候補にしていただくなど話題になったのは、『ミアキス・シンフォニー』を書き始めてからのこと。単行本として発売するにあたり、7年前の自分の文章が本当に下手で、改稿するのがすごく大変でした。「君はなにをやっているんだ」みたいなことを思いつつも、この7年で自分が成長できていたことを実感して、本当に多くのことを気づかせてくれた作品になりました。

記者会見後には、そのままマガジンハウスでインスタライブを配信。

当初は、巨大なananパンダの脚に座りながらの配信が予定されていたものの、「すーっごい滑るのよ」と加藤さんによる座りにくさの実演つきで、椅子に変更。しかも、「寒いのよ」という環境のなか(いろいろすみません…!)、記者会見を無事に終えた解放感からか、リラックスした様子で『ミアキス・シンフォニー』や、同日発売となった自身が表紙の『anan』を告知。

事前に募集していた質問に答えるコーナーも設けられ、記者会見では触れられていなかった、改稿にまつわる苦労話などについても語ってくれた。

加藤シゲアキさん×ananインスタライブアーカイブ

『ミアキス・シンフォニー』は、現在発売中。

加藤さんが作家人生のおよそ半分をかけて完成させた物語を、ぜひ体感してほしい。

写真・園山友基 スタイリスト・吉田幸弘 ヘア&メイク・KEIKO(Sublimation)文・保手濱奈美

『ミアキス・シンフォニー』公式ページ

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