古い固定観念が地域の女性たちの暮らしを圧迫…「若年女性の地域 (地方) 離れ」の背景とは

ライフスタイル
2024.08.31
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「若年女性の地域(地方)離れ」です。

女性たちが住みたいと思う、魅力的な地域づくりを。

社会のじかん 女性

2020~2050年に20~39歳の若年女性の人口が半数以下になる自治体が、1729のうち744に上り、それらの自治体は消滅する可能性があると、民間の有識者グループ「人口戦略会議」が4月に発表しました。

地域から若年女性が流出しているのは事実ですが、「若い女性が減る=少子化が進む」と考えるのは、「女性は子供を産み、育てるもの」というアンコンシャス・バイアスがかかっていると思います。男性中心の、古い固定観念が地域の女性たちの暮らしを圧迫し、希望を失わせています。

地域の役所や議会、産業が多様化していかなければ、日本のジェンダーギャップの改善はないでしょう。地域によっては、「女性の活躍」という文脈で自治体が「お母さんと妻に感謝しよう」というキャンペーンを張ることも。感謝の気持ちを伝えることは悪くありません。ただ、目指すべきは分業です。家事や子育てを女性だけに押し付けていないか、考え直す必要があります。

なぜ、若い女性が首都圏に出てしまうのか。それは、地域ではやりがいのある仕事をなかなか見つけられなかったり、低賃金だったり、働きながら子育てをすることが難しいという状況があります。誰もが生きやすく、自分の望む未来を得るために地域の構造的な問題に目を向けなければいけません。インフラの整備やデジタル化の推進、既存政党や既存の首長しか選べない価値観の乏しさを改善することが必要でしょう。人々が生き生きと安心して暮らせることの結果、子供を産んでもいいという安心感を得て初めて少子化にストップがかかると思います。

この問題の解決策の一つには、起業支援があるのではないでしょうか。従来の産業ではどうしても女性はパートや低賃金での働き方から抜け出せません。既存の労働形態では、子育てや不妊治療もままならないとなれば、自分で業をおこし、収入を上げるしかありません。ジェンダーバランスの良い産業界になれば、きっと新しい政治家も生み出せるはずです。日本の停滞を脱するためにも自治体こそ、歯を食いしばってでもスタートアップ支援に積極的に着手してほしいと思います。

社会のじかん 堀潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。

※『anan』2024年9月4日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

PICK UPおすすめの記事

MOVIEムービー