70年の間に多様化する欧米関係に、足並みそろわず。
NATO(北大西洋条約機構)は2019年に創設70周年を迎えました。アメリカとカナダが中心となり、イギリス、フランス、ベルギーなど計12か国が結束して、当時共産主義だったソビエト連邦(現ロシア)に対抗するために作られた軍事同盟です。当時、ソ連の影響で東欧諸国は共産化しており、自由主義国と対立関係にありました。NATOは集団防衛、危機管理、協調的安全保障を任務の中核に置き、加盟国の領土と国民の防衛を最大の目的にしています。NATOのなかの1か国でも攻撃されればNATO諸国が一斉に反撃するという枠組み。ヨーロッパにとってみれば、EUにより経済的つながりの安定を保ち、有事の際の安全保障はNATOが担ってきたのです。ところが最近、その結びつきにほころびが見え始めました。
まず、イギリスがEUから脱退を決め、欧州諸国との距離を図ろうとしています。また、2014年にロシアがクリミア半島に侵攻して以来、ロシアの脅威が高まっているなか、加盟国のトルコは最新兵器をロシアから購入するなど、ロシアとの関係を深めていきました。さらに大きな問題となっているのは、アメリカのトランプ大統領がNATO加盟国に対して、軍事費をもっと負担すべきだと強く非難していることです。各国、負担額はGDPの2%を目標にしているものの、その目標を満たしているのは現在加盟している全29か国のうち9か国のみ。フランスもドイツも満たしていません。トランプ大統領は、アメリカにNATOから引き揚げてほしくなかったらもっと負担しろと主張しているのです。
フランスのマクロン大統領は、現在の不協和音が響く状況について、昨年11月に、英国エコノミストのインタビューで「NATOは脳死状態にある」と発言。アメリカを筆頭に加盟国から非難を浴びました。
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21世紀に入り、アメリカ対ロシア、アメリカ対中国の新冷戦時代が始まりました。昨年はベルリンの壁が崩壊して30年の節目でもありましたが、世界は再び分断されつつあります。ヨーロッパはどう対抗すればよいのか、模索が進められています。
堀潤 ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。映画『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)が3月7日公開。
※『anan』2020年2月5日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)