第二次世界大戦後の1945年、民主主義に復帰し、敗戦から驚異的な経済発展を遂げた西ドイツ。彼らは現代の企業デザインによく見られる、システマティックなデザイン手法を発展させて、国のイメージを一変させた。昨年「京都dddギャラリー」にて好評を博した企画展が規模をさらに拡大し東京で開催中だ。


驚異的な経済発展をもたらした、西ドイツのデザイン手法に迫る。

ドイツ式のシステマティックなデザイン手法を生み出したのは、20世紀初頭に活躍したドイツ人の建築家ペーター・ベーレンスだった。第二次産業革命が起き、都市化と工業化が急速に進む中で、彼は鉄やガラスなどの新しい素材を大胆に使った革新的なデザインの建物を設計。照明器具や家電、文房具など工業製品のデザインから無駄な装飾を取り去り、機能性とフォルムの美しさが融合する新しいデザインを生み出した。

こうしたベーレンスたちのデザイン手法をカリキュラムに採用したのが、1919年に創立した伝説の芸術学校バウハウス。ここでは情緒や個性、感情といった要素をデザインから一切排除し、研ぎ澄まされ、本質を追求したデザインが提唱された。その美学は、今も多くの建築家やデザイナー、芸術家たちに大きな影響を与えている。また1953年にはバウハウスの教育理念を継承したウルム造形大学も誕生。このようにドイツデザインの潮流は脈々と受け継がれ、100年以上経った現在では、世界中のクリエイターが注目するメソッドのひとつとなった。

本展には、ドイツのデザイン事務所「vista」のデザイナー、カタリーナ・ズセック氏とイェンス・ミュラー氏が設立したデザイン史研究機関「A5コレクション デュッセルドルフ」が全面協力。その膨大なアーカイブの中から、ルフトハンザ航空やミュンヘンオリンピック、その他多数の企業や組織などのリブランディングを担ったポスターやビジュアルの使用例を紹介。またデザインに関するルールやマニュアルが決まってゆく進行過程を、貴重なスケッチやサンプルを通して学ぶことができる。

なぜドイツではデザインで国の経済発展を支えることができたのか。本展を見れば、デザインとは美しさだけでなく、問題を解決する力も秘めていることが感じられるはずだ。

1963‐Otl Aicher, E5/HfG Ulm‐Lufthansa‐Ticket

1969‐Walter Breker‐Minimal Art Exhibition(Kunsthalle Dusseldorf)‐Brochure cover

1971‐Anton Stankowski‐Berlin-Layout‐Design manual Ⓒ Stankowski-Stiftung, Stuttgart

アイデンティティシステム 1945年以降 西ドイツのリブランディング

Information

ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg) 東京都中央区銀座7‐7‐2 DNP銀座ビル1F/B1 開催中~7月5日(土)11時~19時 日・祝日休 無料 TEL:03・3571・5206

取材、文・山田貴美子

anan 2451号(2025年6月18日発売)より

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