オトクニ『メゾンプアナの7人の食卓』2

23歳の会社員から65歳の大家さんまで、年齢も職業もばらばらな女性たち7人が暮らすシェアハウス「メゾンプアナ」。〈毎週金曜の夜は7人で食卓を囲むこと〉といういっぷう変わった居住ルールのもと、美味しいもので心身を癒し、円満に日々を送っている。そんなシンプルなストーリーなのだが、めっぽう面白い。その著者がオトクニさん。


美味しいごはんを共有する、幸せシェアハウスストーリー。

「夫を亡くした大家の花さんのような高齢女性が、元気を取り戻して美味しくごはんを食べられるようになるというコンセプトが最初にあり、いろいろ考えるうちに女性たちが集まって一緒に食事をする話になりました。すると、シェアハウスという住まい方しかないなと」

オトクニさん自身に、そういった経験はあるのかといえば、

「全然ないです。こうだったらいいな的な妄想というか、みんなが穏やかで、自立しててやることがあって、そんな中でちょっとだけ集まれて無事が確認できる。経験がないからこその究極の理想なんやと思います。あと、情報番組か何かで高齢者と若者がサポートし合う海外のシェアハウスを見て、合理的で楽しそうだったのでそれもヒントになりました」

1話ごとに、メインとなるキャラクターが変わり、悩みも変わる。登場するメニューがシチュエーションに合わせて多彩なのも魅力だ。作中で描かれる料理のレシピは、巻末にまとめられている。

「デビュー作の『広告会社、男子寮のおかずくん』のときに、副菜を描いたら読者さんがすごい喜んでくださって。確かに、主菜ってあちこちで紹介されるけれど、それだけで終われないわけだし、『みんな副菜に困ってたんや』と思ったので、この作品でも意識して入れています。あと、雑誌掲載の時期に合わせた旬の食材も使うようにしています」

2巻では、誕生日が1日違いの住人ふたりのための合同誕生日会としてタコ焼きパーティが開かれる回がある。そのイベントの準備が終わり、うたた寝していた花さんの前に、亡くなった夫が現れるという心温まるサプライズが――。

「花さんが、亡夫に『かわいい顔されると怒りの気持ちがしぼむから困る』と訴えるシーンがあるのですが、実際、男の人が生きやすくなるにはかわいげを身につけることだと私は思っているんです。ありがとうとごめんなさいが言えること。男代表みたいな顔をしないこと。あと、自分の言葉で語れること。そういう男性はいいパートナーシップを持てるし、ステキだと思います」

ごはん以外にも詰めこまれた、ほっこりエピソードも楽しんで。

Profile

オトクニ

1985年生まれ、大阪府出身。マンガ家。ネットで同人活動の存在を知り、自身もオリジナルマンガをpixivにアップするように。2016年に商業デビュー。

『メゾンプアナの7人の食卓』2

Information

精神的経済的に自立しているからこそいい距離感で暮らせる仲間たちが、美味しいもので幸せになるお話。月刊女性漫画誌『Eleganceイブ』で連載中。秋田書店 792円 Ⓒオトクニ/秋田書店

写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子

anan 2449号(2025年6月4日発売)より

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