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昨年8月、88か月ぶりにシングル『POWER』で韓国音楽シーンに戻ってきたG-DRAGON。復帰するや否や瞬く間にシーンの記録を更新し、その圧倒的で絶対的なアーティストパワーを否応なしに見せつけた。そんな彼がアルバム『Übermensch』を引っ提げて開催する8年ぶりのアジアツアーの一環である日本公演が、5月10日・11日に東京ドームで、5月25日・26日に京セラドーム大阪で開催された。Übermenschとは「超越者」のこと。前回の単独公演「<ACT III, M.O.T.T.E> IN JAPAN」から約8年、G-DRAGONが長い空白期間を経てなぜこのタイトルをアルバムタイトルに掲げ、なぜこのタイトルでツアーをまわるのか。公演ではその理由が時間の経過とともにだんだんと解き明かされ、彼の人生、生き様に素手で触れたような感覚になる時間だった気がする。ananwebでは熱狂の4日間の口火を切った初日、5月10日公演を詳細レポートします!


開演時間を10分ほど過ぎた頃、『Übermensch』収録の『TOO BAD (feat. Anderson .Paak)』のミュージックビデオが映し出されると、花言葉に「平和」を持つ花・デイジーを模したペンライトに明かりが灯り、花畑のように揺れ始める。『TOO BAD』が終わると暗転。抽象的なモチーフとメッセージがちりばめられたVCRから、赤く染まった会場にバンドが重低音を唸らせて『POWER』が鳴り響く。割れんばかりの大歓声の中、ステージ上のLEDパネルが上がるとその奥から、頭に王冠を乗せ、サングラスをかけたG-DRAGONが立て膝でこちらをじっと見据えて登場! それは紛れもなく“王”の帰還を宣言した瞬間だった。バラの花をつなげた真っ赤なジャケットとブラックのブーツカットパンツを着こなし、スペシャルアレンジの『POWER』で会場のボルテージはあっという間に沸点に到達! 続いて会場に青いレーザーが乱れ飛ぶ中スタートした『HOME SWEET HOME (feat. TAEYANG & DAESUNG)』では歓声はさらに大きく轟き、会場がひとつになって大合唱。その光景にG-DRAGONも時折笑みを浮かべながら熱くパフォーマンスすると、早くもこの日最初のクライマックス!

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2曲を終えてイヤモニを外して会場を煽ると、地鳴りのような歓声が! 「What’s up Tokyo! 久しぶりじゃん!」と日本語で会場に呼びかけると、8年分の思いを伝えるように客席も大熱狂で応える。「8年ぶり、ヤバくない? クォン・ジヨン(G-DRAGONの本名)がひどいよね。なんでそこまでするの? クォン・ジヨンがおかしいから、G-DRAGONが『Übermensch』で戻ってきました」「8年分のエネルギーを、今のこのいいテンションで、全力で使っていきましょう。わかった? いける?」と会場に問いかけ、『HOME SWEET HOME』のサビフレーズをコール&レスポンスして会場をあたためると『Middle Fingers-Up』をドロップ。鋭角に尖ったメインステージの先端から続くセンターステージへゆっくり移動しながらパフォーマンスし、歌詞の中の「クォン!ジ!ヨン!」を会場が叫ぶと、ラストはVサインでフィニッシュ! 間髪入れずに『ONE OF A KIND』へ。生バンドならでのグルーヴで抑えめなフロウでスタートすると、一転、サングラスを外してギアチェンジ。ソリッドなラップが炸裂し、歌詞に合わせたハートマークやガナリで会場をこれでもかと盛り上げた。

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「暑いなー」とタオルで汗を拭いながら、会場からの声援に丁寧に「はぁい」「ジヨンですよー」と応える。「さっき雨降っていたけど、今はどう?」などと不慣れではあれ、すべて日本語で客席とコミュニケーション。息が整うと、「聴いたら知ってる、絶対」と「When I say “swag”, you say “check”」のコール&レスポンス。徐々に熱量を上げ、G-DRAGONも会場も絶叫で「When I say “get your”, you say “CRAYON”!」と決めると、サングラスをかけ直し戦闘モードで『CRAYON』へ! 90年代に韓国で活躍した伝説的な3人組ヒップホップグループ、ソテジ・ワ・アイドゥルの『幻想の中の君』とのマッシュアップブレイクを挟みながら、炎と無数のレーザーと特効の狂演でこの上ない祝祭感に包まれた。

ふたたびVCRを経て、ビジューがちりばめられた白のロングジャケットを纏い、白いハンドマイクに持ち替えたG-DRAGONが登場すると、メインステージに座り込んで『BONAMANA』がスタート。冷たく張り詰めた空気が漂うステージは低体温な楽曲にフィットし、センターステージからせり上がる階段で歌い上げる姿は、ある種の神聖さすらたたえていた。すると今度は鳥のさえずりが。朝のまどろみのようなドリーミーなイントロから、2009年リリースの1stアルバム『Heartbreaker』収録の『BUTTERFLY』へ。メインステージに移動すると、登場したセットに腰かけ、体をゆったり左右に揺らしながら歌う。

白いロングジャケットを脱いで、襟元、袖口、そして後ろの裾は床に届かんばかりにふんだんにレースとチュールがあしらわれた黒のツイードジャケットを羽織り、真っ赤なレザーパンツに黒のレースアップブーツという出で立ちでふたたびステージに登場すると『I LOVE IT』へ。LEDにネオン風の「I love it.」の文字が浮かぶ中、床から噴き上げるスモークを浴びながらロックスターよろしく熱く歌って盛り上げると、続いてピアノが『WHO YOU?』のコードをなぞる。ダンサーを従えてレースを揺らしながら軽やかにダンスをすると、会場は大合唱で応援。その会場の盛り上がりにフロウにも熱がこもる。ラストは会場からの「no, no,~」のレスポンスにはにかんでみせた。続いてピンクのライトに照らされ、メロディアスに『TODAY』がスタートすると、ステージを降りてド派手なドラゴンバイクに乗り込んで、アリーナを自由気ままに移動しながらプレイ! 紙吹雪に色とりどりのレーザーが乱れ飛ぶ中、最後は会場のハンドクラップとアカペラの大合唱にG-DRAGONがハモるという贅沢なセッションで締めくくった。間髪入れずに聞こえてきたのは『CROOKED』! 瞬間、ボルテージが急上昇した会場に「この曲知ってる?」と聞いてさらにガソリンを注入! メインステージを左右いっぱいに使いながら、「Everybody jump!」の合図で跳びはねる客席と大合唱して熱狂は頂点へ! ラストはバンド演奏を思いがけない形でフィニッシュさせたG-DRAGON。この乱痴気騒ぎの締めくくり方には、彼の音楽性の本質ともいえる孤独とニヒリズムを感じずにはいられなかった。

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LEDに「A boy」と映し出されたのに続いて東京ドームを支配したのは、プリミティブで不穏な旋律とその残響。LEDに映し出されたのは韓国のビートボクサー・WINGの名前。「세상을 흔들어」と『SHAKE THE WORLD』のフレーズを交えながら、人の声だとは思えないヘヴィな音とビートでドームの期待を煽ると、フェード・インしたのはソロデビュー曲にして不動の人気を誇る『Heartbreaker』! 突如ステージに現れた巨大な『Übermensch』ロゴを背に、煌びやかなミントグレーのセットアップにカンカン帽で登場すると、WINGのビートボックスに合わせてパフォーマンス。1コーラス終えたところでG-DRAGONがWINGと向き合ってビートボックス対決! 思わぬ展開に会場が沸き立つと、会場もシンガロングでそれに応えるのだった。続くヘヴィなミドルチューン『BULLSHIT』はセンターステージでパフォーマンス。客席と近い距離で「Bow Wow Wow」の大合唱を巻き起こした。

「You got me!」の掛け声を合図に、80年代風のトラックにG-DRAGONの柔らかなボーカルが乗る『TAKE ME』をセンターステージの階段でプレイ。ステップを踏む姿と心地よいビートに会場も軽やかに体を揺らすと、ソリッドなドラムから『TOO BAD』へ。ライブ用にアレンジが加わったブレイクでおもむろにマイクを置き、帽子をかぶり直すとソロダンスタイムに突入! G-DRAGON得意のフットワークで会場の盛り上がりをかっさらうと、ラストはボウアンドスクレイプでエレガントに仕上げたのだった。

メインステージに座って「楽しんでますか?」と会場に呼びかけるや否や、両手でTの字を作って休憩を要求。「ごめんなさい、実はちょっと疲れて、休みたくて時間稼いでます」とステージに横になってみせたり、GD流のユーモアを交えながら日本語でマイペースにトーク。舞台上の『Übermensch』のロゴがソロデビュー時の自分と今の自分が向かい合っている姿であることを説明し、「カッコいいでしょ? さすがでーす。天才でーす」とおどけたりしていると、いよいよライブは終盤へ。

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讃美歌のような歌声が響き渡ると、ドームに水を打ったような静けさが訪れる。そして「When every scene's~」の歌い出しに会場から歓声があがると、『DRAMA』がスタート。幻想的な空間が広がるメインステージの1段高いところで、段からこぼれ落ちるほどの大きな白いリボンをつけたスタンドマイクでひときわ繊細に歌を紡ぐ。最後は楽曲の世界観を深化させるドラマティックなバンドアレンジでフィニッシュし、ライブならではの展開で会場を魅了したのだった。

再登場を期待する声がやまない中、LEDに映し出されたのは、スーツに身を包み、ディレクターズチェアに腰をかけてインタビューを受けるG-DRAGONの姿。そこで彼は8年前の自分のこと、空白期間の心境、そしてÜbermenschの解釈を語った。

映像が終わり、再びアンコールを期待する声に会場が包まれると、アカペラで『THIS LOVE』を歌うG-DRAGONの声が! 『THIS LOVE』が本格的にスタートすると、下手側からデイジーがたくさんあしらわれた大きなトロッコに乗って登場!ミントグリーンのジャケットにデニムの出で立ちで、『Übermensch』ロゴの大きなキャップをかぶって距離の近くなったファンに歌いかけていく。続く『1 YEAR』もトロッコの上で歌ってドームを1周すると、メインステージに降り立ち『IBELONGⅡU』へ。LEDには赤いベルベットのカーテンが映し出され、クラシカルなダンスホールのよう。大きな帽子をかぶってステージの真ん中に立って、「君と僕は2人で1つ」と真っすぐに歌う姿はまるで少年のようで、音楽を純粋に愛したクォン・ジヨン少年がそこに重なって見えた。そんな彼の姿とスケールの大きな楽曲がドーム全体を多幸感で包むと、ダンサーとバンド紹介を経て、最後はG-DRAGONが自分自身をねぎらって「終わりっ!」の号令で終了!

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鳴りやまない大歓声に「もう帰って、冗談じゃないよ」と悪態をつきつつも、「私たち、末永くやっていきましょう。私たちまだまだまだ若いから、人生長い!」と彼らしい言葉で感謝を伝えて会場を見渡すと、満面の笑みで「幸せ」とつぶやく。アンコールラストは「タイトルがないんだけど、聴いてください」と紹介した『Untitled, 2014』。ピアノ1本を従えてスタンドマイクで歌う、その、感情を心の底から絞り出すような生々しい魂の歌声に、いつしか会場も聴き入っていた。最後は夕日色に染まったLEDが彼を隠して、静かに全公演を終えたのだった。

振り返れば、前回の公演を締めくくったのもこの『Untitled, 2014』だった。8年経ってふたたびこの曲で公演を締めくくる理由、それは、この曲で歌われる“君”が他でもない、G-DRAGON、そして、幼き頃に歌手を夢見た一人の少年、クォン・ジヨンだからだろう。8年前、G-Dragonであることに苦しみ、悩み、クォン・ジヨンを取り戻したいと切望した一人の青年は、長い時間をかけて自分の中の自分に対するある種のルサンチマンと戦い、8年前のG-DRAGONも、希望に満ちていたクォン・ジヨン少年も抱きしめて、ふたたびG-DRAGONとして歩むことを決めた。それが彼の辿り着いた、彼自身の「Übermensch」なのだろう。

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来年はBIGBANG 20周年のメモリアルイヤー。公演中にも「BIGBANGにはいい日本の歌、たくさんありますよね?」と言及し、この日は『声をきかせて』の一節を口ずさんだりしながら、「来年、期待してください」と語って会場から悲鳴のような大歓声を巻き起こしていたG-DRAGON。BIGBANGのリーダーとしてふたたび日本のステージに立つG-DRAGONがそう遠くない日に観られることを期待しながら、彼の次の活動を待ちたいと思う。

取材、文・中村 萌

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