僕は、とことんくだらないことをしたい人なんですよね(笑)。
「みんなで笑って時間を共有するだけで、家に帰ったら内容を忘れちゃうような、心に残らない芝居をやってきたんですよね。それぞれの役者にポンコツな部分があって、完璧な人がいない。それですぐに本筋から脱線しちゃうんですが、そういうユルさがお互いに心地よくて、結局その時間が続いちゃうんですよね」
とは、座長を務める小松和重さん。もともとは、作・演出の倉森勝利さんと共に「とんねるずみたいになりたいねっていうことで始めた劇団」。しかし2005年に倉森さんが急逝。そこから、長めのインターバルを置きつつ続いてきたが、7年ぶりの今回が最後の本公演となる。
「倉森が亡くなったのが公演の稽古期間中で、そのときの本番の記憶が全然ないんです。ただそのときに、みんながひとつになれた気がして、続けていこうと思ったんです。でも、僕が作ったり外部の人に書いてもらったりといろいろ試してきたけれど、結局しっくりこなくて。みんなが遊べる場じゃなくなっちゃったなと思ったんです。とはいえ、解散とは言いたくなくて、一応最後の本公演と銘打たせてもらいました」
上演される『蹂躙さん』は、かつて倉森さんが書き、タイトルを変えながら何度も再演されてきた作品。
「弱小高校ばかりを狙う悪い高校があり、彼らから学校を守るために番長が雇われる…『七人の侍』みたいな学園番長モノです(笑)。もともと『Let’s ダチ公』という剃り込みが入った不良が登場する漫画があって、こんな芝居をやろうよってスタートした作品で、初演のときに驚くほどウケたんです。今回、旗揚げからずっと一緒にやっている平田(敦子)さんと久ヶ沢(徹)さんが出てくれますが、60歳を過ぎたふたりがいま学ランとセーラー服を着るっていうだけで面白いだろうなって(笑)」
平田さん、久ヶ沢さんのほか、サモアリを愛する荒川良々さんと宮藤官九郎さんが出演するのも話題だ。
「久ヶ沢さんは台本に細かくネタを書き込んで、芝居中に絶対挟んでくるんです。平田さんは、少し感動するシーンで泣きながら芝居していて、すごいなって思いました。荒川くんはうまいし笑いもできるし、宮藤くんはすごく柔軟。信頼している人ばかりなので楽しみです」
サモアリは小松さんにとってやりたいことを楽しんでやれる場所。
「僕は、とことんくだらないことをしたい人なんですよね(笑)」
PROFILE プロフィール
小松和重さん
こまつ・かずしげ 1968年2月24日生まれ、東京都出身。’92年にサモ・アリナンズを結成。野田秀樹や松尾スズキなどの演出舞台や、映画『ミッシング』など映像作品にも多数出演している。
INFORMATION インフォメーション

サモ・アリナンズプロデュース第28弾『蹂躙さん』
3月23日(日)~31日(月) 下北沢 ザ・スズナリ 原作/倉森勝利 脚本・演出/小松和重ブラザーズ 出演/小松和重、家納ジュンコ、佐藤貴史、大政知己、月野木歩美、荒川良々、宮藤官九郎、久保田武人、平田敦子、久ヶ沢徹 全席指定6000円 大人計画 TEL:03・3327・4312(平日11時~19時)
anan2439号(2025年3月19日発売)より