いまアジアで大人気! 中島美嘉さんが歌でつなげる世界。
――歌が好きな女子学生たちがボーカルグループ結成を目指す中国の音楽バラエティ番組『愛唱歌的大学生女生季』(「愛」は簡体字)に、メンターとして出演するオファーが来た時は、率直にどう思いましたか?
中島美嘉さん(以下、中島):何で私なの!? と、本当にびっくりしました(笑)。番組の方にも「私でいいのですか?」と伝えましたが、「美嘉さんしか考えていません」という答えをいただいて。もちろん、とてもありがたいことなので、お受けすることに。私はずっと、「音楽は言葉の壁を越える」と言い続けてきたけれど、番組の方たちも、そのことを証明したいんだなと感じましたね。だって、私は中国語も英語も一切しゃべれないし、誰かを通してしか意思疎通が図れないわけですから。
――「音楽は言葉の壁を越える」と思うようになったきっかけは何でしょうか。
中島:デビューして、私は日本語の歌しか歌っていないのに、なぜか日本だけでなくいろいろな国の方が聴いてくださっていて。違う言葉を話す人の曲なのに、なぜ聴こうと思ってくれるんだろう、歌の力ってすごいなと感じてからです。
――歌手を志す学生の方たちと向き合う中で、何を感じましたか?
中島:デビュー当時の自分に戻るような感覚がありましたね。私が歌手になったばかりの頃は、何が悩みなのかさえもわからなかったし、周りの人にどういうことを言ったり聞いたりすればいいのかもわからなくて、苦しんでいたんです。だって、マクドナルドでバイトをしていたのに、音楽に関して無知なまま、いつの間にかプロになっていたわけですから。自分が得意なキーも知らなければ、「この音、もう少しこうなりませんか?」みたいなことも言えるわけがなくて。きっと、学生の子たちも当時の自分と同じだろうなと思ったんです。だから、自分の経験に基づいて「こういうことってある?」と話を聞いていくようにしました。
――学生のみなさんとの距離も近づいたのではないでしょうか。
中島:もうね、「お母さん」って呼ばれていましたから(笑)。みんな歌がすごく上手だし、それぞれに個性もあるので、技術に関しては教えることがなくて。それよりも、メンタルケアをすることのほうが圧倒的に大事だと思っていたんです。今、心が折れるようなことがあると、せっかく嬉しいはずのデビューを傷を負ったまま迎えることになるかもしれないなと。番組のスタッフの方たちにも、「私は何かを教えるというよりメンタルケアをする」と伝えていたし、学生のみんなにも、「何かあったら、私が戦って守るからね」と言いました。距離は近づいたと思います。恋愛の話をしてくれる子もいましたからね(笑)。その時は、恋をした時の感情を歌った曲もたくさんあり、いろいろな感情を経験することは大事だと伝えました。若い子には、できるだけ嫌な目に遭わないでほしいし、同じような立場で戦ってくれる人や理解してくれる人が一人でもいることで、きっと、成長の仕方も違うと思うんです。みんながひねくれた方向に進まないように、メンターとしていたいと思っていました。もちろん、厳しく言う時もありますけど。
――たとえば、どんなことですか。
中島:彼女たちはよく、「自分の意思を曲げたくない、折れたくない」と言うんです。そして、私に対してカッコいいイメージを持ってくれているようで、「ママも、自分がやりたくないことをした経験があるの?」と聞かれることがあるんです。そんな時は、「たくさんしたよ。でも、“意思を曲げた”と捉えるか、それとも“チャレンジ”と捉えるかで違うと思う」と伝えるように。たとえば、自分がやりたいものとは違っても、いろいろな曲や歌い方にチャレンジすることで、表現の幅が広がって何でもできるようになりますよね。それに、自分の好き嫌いがはっきりわかるし、嫌な理由もちゃんと言えるようになるんだよと。あとは、「結果を出してから言え」とかですね。いろいろ言う前に、まずは与えられた課題を完ぺきにやってね、と。
――アジアの国での人気ぶりをどう感じていますか?
中島:なぜでしょうね? 不思議です。あまり分析とかはできていなくて。国によって、みなさんに期待されるものが違うので、ちゃんと応えられるかな、歌えるかな? という怖さもありますけど、本当にありがたいことだし、楽しむしかない! と思っています。
――人気曲も日本とは違いますか。
中島:そう、実は、「雪の華」ではなく、「僕が死のうと思ったのは」が1番人気なんです。みんな、どうした!? って(笑)。
――意外でした…! アジアの国でライブを行い、昨年はシンガポールの音楽イベント「Yuewen Music Festival」にも出演されています。ノリやムードはいかがでしょう。
中島:日本の方はじっくり、静かに聴いてくださる方が多いですが、海外では一緒に歌ってくれたりして盛り上がり方が違うので、正直、ちょっと恥ずかしかったりします(笑)。フェスの場合は私のことを知らない人もいるので怖さもあったけれど、思い切り気持ちよく歌って、一曲でも“いい曲だね”と感じてもらえたらラッキーだなと思いながら挑みました。
――場所にかかわらず、歌う時に大切にしていることはありますか。
中島:正直、自分ではよくわからなくて。ただ、ステージにいる時のほうが、私は本当の自分でいるなと感じるんです。こうしたインタビューとか普段の会話などで話すほうが下手だし、ちょっと気取ろうとするというか。でも、歌う時は自分のすべてをのっけているんです。スイッチみたいなものもないし、歌っている瞬間にこそ、一番、素の自分でいられているなと。おかげで、ステージに立っている時は歌や歌詞の内容を伝えることだけに集中できています。そのことに気づいたのは、結構最近です。
――3月から、アジア6都市を巡るツアーが始まります。
中島:これまで、日本と海外では、まったく違う登場の仕方をしていたんです。でも、今回のツアーでは、日本と同じようなものに変更しました。より自分らしさを表現できるものになっていると思うので、みなさんがどんな反応をしてくださるのか楽しみです。でも、たくさん会いに行けているわけではないし、常日頃から何かを伝えることもできていないのに、受け入れて、理解して、応援してくださる方がいること、絶対的なファンの方がいてくれることは、本当に心強いこと。そのお礼をしに行かなきゃという気持ちでいっぱいです。
PROFILE プロフィール
中島美嘉
なかしま・みか 1983年2月19日生まれ、鹿児島県出身。2001年に『STARS』でデビュー。「雪の華」「僕が死のうと思ったのは」など数多くの大ヒット曲を生み出す。近年は「MISSION」「UNFAIR」など、アニメのテーマソングを担当し話題を呼んでいる。
INFORMATION インフォメーション
3月1日から、アジアツアー「MIKA NAKASHIMA ASIA TOUR 2025」がスタート。台北公演を皮切りに全6都市を巡る。自身初となるソウルワンマン公演も開催。台北での公演はチケット発売と同時に即完売、追加公演が決定するという人気ぶり。
anan 2436号(2025年2月26日発売)より