着た瞬間からゾーンに入れるtanakadaisukeの洋服。
ゆっきゅん(以下、ゆ):音楽からインスピレーションを受けることはありますか?
田中大資(以下、田):それでいうと、アーティストの衣装を制作する時も、曲のデモを聴いてもあまりイメージが湧くことはないんですよね。デモで想像していたものと実際の楽曲が違うことも全然あるから、まずは人と服を密着させることが大事だと思っています。背景が何であっても、服と人がぴったり合っていたらなじむはずなんです。あとはパフォーマンスでお願いしますって感じで。
ゆ:衣装と本人がもう説得力のあるものになれば、どんな世界観でも大丈夫ってことですよね。極論、ジャングルであっても。
田:どこに連れていかれても間違いないというか。だから、本人自身をよく知ろうとします。出演しているラジオを聴いたり、最近のビジュアルを見漁ったりして。今やりたい髪型とかも気にしますし。
ゆ:髪型も提案することはある?
田:ありますね。着用アイテムも120%攻めたものを用意して、本人がどこまでやってくれるか。覚醒させられたら勝ち、みたいな。
ゆ:正直着る側としては、tanakadaisukeは着た瞬間から勝ち確! ゾーンに突入できる。
田:それ嬉しいです。
ゆ:この前行ったファッションの展覧会で「我を忘れたい」という章で大きいリボンを用いた服や非日常的なコレクションピースが飾ってあったんです。私もMVでそういう服を着るけど、自分にとってそれは着るとありのままになれるんだけどなって思って。コスチュームを身に纏うことは変身願望ではなくて、そういうものを着ている時のほうが解放されるし、心を優先して生きている感じがする。田中さんの作る服も、気持ちが強くなれて、いつもは出ないような表情が出せるというか、心強さがあると思います。肯定される感じ。
田:そう言ってもらえるのは嬉しいです。今はもっと着飾った感じの新しい東京のメンズ像みたいなところを、自分らしく表現できないかと模索中なんです。
ゆ:してほしい! 田中さんは希望ですよ。かわいいブランドがメンズ服を出しても、色が地味だったり謎の忖度があるんです。私が求めてるのはただのサイズアップなんだけど? みたいな。
田:いわゆるメンズが好きなメンズ服ってあんまりピンとこなくて。
ゆ:それは私も同感。
田:本来セクシュアリティや好みもそれぞれだから、メンズ服ももっと多様であるべき。それをうちらしく作っていきたいですね。
PROFILE プロフィール

田中大資
たなか・だいすけ 1992年、大阪府生まれ。2015年、大阪文化服装学院ファッション・クリエイター学科ニットコースを卒業。’21年に『tanakadaisuke』をスタート。緻密で繊細な刺繍をベースとした、幻想的な美しさが宿るコレクション展開を行う。
PROFILE プロフィール

ゆっきゅん
1995年、岡山県生まれ。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。セカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』とそのリミックスEP『生まれ変わらない私を!?』が配信中。インスタ、Xは@guility_kyun
anan 2432号(2025年1月29日発売)より