円熟期のコルビュジエが手がけた絵画芸術に注目。
近代建築の巨匠として世界的に知られているル・コルビュジエ。しかし彼は、建築のみならず視覚芸術と呼ばれる様々な分野でも革新をもたらした。故郷スイスのラ・ショー・ド・フォンの美術学校在学時より絵画の才能を現し、1918年から約10年間は画家アメデ・オザンファンと共に創始した絵画運動「ピュリスム」のもと絵画を創作。1930年以降は、午前中は絵画に時間を費やし、午後は建築の仕事をしたとか。
本展は’30年代以降にコルビュジエが手がけた絵画、彫刻、素描、タペストリーを紹介し、彼が追求した新しい技術の芸術的応用にもスポットを当てる。建築では、ロンシャンの礼拝堂、無限成長美術館構想、チャンディガールの都市計画、’58年ブリュッセル万国博覧会フィリップス館をピックアップ。後期の建築作品も併せて紹介することで、伝統的な枠組みを超え、モダニズムの領域を広げた彼の芸術観を明らかにする。
実は、コルビュジエの40代以降の円熟期の創作に光を当てる展覧会は日本では初めて。会場には、《牡牛XVI》《牡牛XVIII》《牡牛》の3連画が登場。人間の生命力と精神の進化を象徴的に表した「牡牛」シリーズは彼が手がけた絵画の集大成で、本展の目玉のひとつだ。
ちなみに、今回のキュレーションはコルビュジエ建築に新解釈を示した著作『未完の美術館』などで知られるロバート・ヴォイチュツケ氏が担当。会場構成は気鋭の建築コレクティブ、ウルトラスタジオの3人が担当し、〈インテリア〉〈コーディネイト〉〈トランジション〉をキーワードに会場を構成している。
「住宅は住むための機械である」と明言する機能主義者のイメージを超え、新たなコルビュジエ像を紹介した本展。ジャン・アルプやカンディンスキーなど同時代に活躍した芸術家たちの作品を並べることで、当時の芸術界における彼の存在感も浮き彫りに。建築家以外の新しいコルビュジエを発見してみて。
’20年代よりコルビュジエと親交があったアルプ。地中海の古代彫刻に基づき人体を表現した。
下段、中段、上段には、人間の精神の進化を示唆する、ピラミッドが描かれている。
第二次世界大戦で破壊された礼拝堂の再建として建てられた、コルビュジエが最初に手がけた宗教建築。
地中海に魅了されたコルビュジエは、こよなく愛したこの海で海水浴中に心臓発作を起こし亡くなった。
INFORMATION インフォメーション
ル・コルビュジエ――諸芸術の綜合 1930‐1965
パナソニック汐留美術館 東京都港区東新橋1‐5‐1 パナソニック東京汐留ビル4F 開催中~3月23日(日)10時~18時(2/7、3/7・14・21・22は20時まで開館。入場は閉館の30分前まで) 水曜休(3/19は開館) 一般1200円ほか※土・日・祝日は日時指定予約が必要。TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)