映画『デデデデ』脚本家「声優初挑戦のあのちゃんは、びっくりするぐらいおんたんと一体化していた」

エンタメ
2024.03.10
人気漫画家・浅野いにおさんの長編漫画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(通称:デデデデ)が、ついにアニメ映画化! “くそヤバい地球”で、変わらない日常を送りながら青春に満ちた日々を過ごす、小山門出(こやま・かどで)と中川凰蘭(なかがわ・おうらん)を中心にした女子高生たちの物語をひもときます。
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『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』
3年前の8月31日、突如宇宙船“母艦”が襲来し、東京上空に停泊。度々起こる戦闘が日常となる中、高校生の小山門出と中川凰蘭は青春を謳歌していた。ところがある日、ふたりと世界は加速度的に破滅へと向かっていく…。©浅野いにお/小学館

【魅力1】世界の“終焉”を描く圧倒的な世界観。

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物語は門出と凰蘭のいつもと変わらない朝から始まるが、上空には宇宙船が浮いている。その不気味な重厚感や文字で表現できないようなノイズ描写によって、読み手にただならぬ事態が起きているという恐怖や不安を抱かせ、“デデデデ”の世界観に一気に引き込む。

【魅力2】主人公ふたりのリアリティあふれる日常。

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“ハイテンション女子高生ライフ”を送っている門出と凰蘭。受験勉強に追われつつ、毎晩オンラインゲームで盛り上がるイマドキの高校生。家族問題や将来の不安を抱えながらも、青春を楽しんでいるというリアルな描写により、ふたりの魅力や個性が際立つ。

【魅力3】浅野いにおさんが紡ぐハイセンスな台詞。

画力や物語の構成、生み出す世界観はもちろんのこと、時にグサリと、時に繊細にじんわりと心に染み入るような言葉選びが秀逸であることも浅野作品の大きな特徴。今作でも、女子高生のリアルな言葉や感情を文字にすることで、感情移入や共感性をもたらしている。

直接的かつダイナミックに“世界の終わり”を描写。

実写映画化もされた『ソラニン』や、『おやすみプンプン』などのヒット作を生み出した、漫画家の浅野いにおさん。今作の原作となった『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』は、2014~’22年まで『ビッグコミックスピリッツ』にて連載された長編作品で、コミックス全12巻で完結。そしてファン待望の、浅野いにお作品初のアニメ化となった。浅野さんの他作品にも見られるテーマ“世界の終わり”は、今作でひと際直接的かつダイナミックに描かれており、その中で大人も胸をえぐられるような、繊細でエモーショナルな青春物語が繰り広げられている。

アニメ映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』シリーズ構成・脚本/吉田玲子さんインタビュー。

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「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」シリーズをはじめ、多くのアニメ作品を手がけてきた吉田玲子さん。人気原作の脚本を書く時に、気をつけていることとは?

「コミックの場合、読みたいシーンはじっくり読んだり、パッパとページをめくったりと読者が時間をコントロールできます。でも映像作品は、作り手が時間をコントロールすることになる。原作者が伝えたいことを印象づけるために、表情や感情、映像でポイントとなる部分を作ることが大事なのですが、浅野先生は、最初に構成を組み立てる時や、その後の脚本打ち合わせにも何度か参加してくださいました。その上で『門出とおんたんが、イキイキとかわいく描かれるのが一番の希望』だとおっしゃっていたことを重視しつつ、壊れゆく世界の中でふたりが一緒に生きていく様を軸に物語を組み立てる、という方針を決めました」

時間軸がかなり複雑で、キャラクターのバックグラウンドなどの設定も細かく描かれている作品だけに、情報の整理にはとくに時間を費やしたと話す。

「物語は女子高生の彼女たちから見た世界もあるけれど、客観的に見た世の中の動きもあるので、時の流れなどを含め、丁寧に整理していく必要があって。そこで年表みたいなものを作っていただき、10年前に何が起こって、ここでこれが起きて…みたいに時系列を整理するところから始まりました。また新たに追加した描写も。例えば原作ではすでに“母艦”が浮いているところから始まっていますが、映像の場合、それがどのように出現したのかを見せたほうがわかりやすくなるし、物語の起点となった8月31日の厄災についても見る側が飲み込みやすくなるなど、世界設定を担当された脚本家の鈴木貴昭さんや、アニメーションディレクターの黒川智之さんと一緒に作っていきました」

今作の声優を務めた幾田りらさんと、あのさんの声の演技については高い評価を寄せる。

「門出はいろんな思いを抱えながらも、ちょっと冷めたようなところのある女の子。幾田さんの場合はリアルに近い役作りだったと思いますが、門出の内面にある感情をうまく表現してくださったと思います。声優初挑戦のあのちゃんは、びっくりするぐらいおんたんと一体化していて、芝居もうまい。感情の見えにくい難しい役を、飄々とご自分のペースで演じられていて素晴らしかったです。完成作ではふたりの表情や仕草がビビッドに描かれていて、どのシーンもすごくよかったです。今の世の中の生きづらさや理不尽さは、若い世代ほど感じているかもしれないけれど、そこを通ってきた20~30代のanan世代だからこそわかる部分もあるだろうし、もしかしたら今ももがいているかもしれません。世界の矛盾や不都合な真実、さらに自身の葛藤の中で自分をどう保ち、どう生きていくのかを模索するふたりに共感しながら、当時大人に怒りを感じていた原点みたいなものを思い出していただける作品になっていると思います」

よしだ・れいこ 広島県出身。テレビアニメ『けいおん!』『ガールズ&パンツァー』『弱虫ペダル』、アニメ映画『すみっコぐらし青い月夜のまほうのコ』、テレビドラマ『17才の帝国』など、さまざまなジャンルで活躍する脚本家。

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『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』 全2章・前章3月22日、後章4月19日全国公開。原作/浅野いにお「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊) CV/幾田りら、あの、種﨑敦美、入野自由、諏訪部順一ほか アニメーションディレクター/黒川智之 シリーズ構成・脚本/吉田玲子 世界設定/鈴木貴昭 ©浅野いにお/小学館/ DeDeDeDe Committee

※『anan』2024年3月13日号より。取材、文・若山あや

(by anan編集部)

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