吉岡里帆、演出・渡辺えりからの直々の出演オファーに「最初は驚きました」

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2023.11.15
作家を志す文学青年の弟・トムをストーリーテラーに、極度に内気な姉のローラと独善的で口うるさい母親のアマンダとの閉塞感ある家族の姿を描いたテネシー・ウィリアムズの『ガラスの動物園』。その後日譚を、日本の不条理劇の第一人者である別役実が描いた『消えなさいローラ』。この2本の戯曲を連続上演する企画が実現。吉岡里帆さんは、演出を手がける渡辺えりさんから直々に出演をオファーするメッセージをもらったという。
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「これまで現場でご一緒したことがなかったので、最初は驚きました。でも、私が出演していたドラマ『しずかちゃんとパパ』を見て、耳が聞こえないお父さんと暮らしている娘の役を暗く演じてないのがよかったと言ってくださって。今回の『ガラスの動物園』も戦争が迫りくる重苦しい時代の物語ではありますが、その中でも明るさを大事にしたいと、お声かけくださったそうです」

吉岡さん演じるローラは、極端なほど内向的な役だが、今回、「2本立てにしたことで、より一層面白いキャラクターになっている」と話す。

「『ガラスの動物園』は何かわからない不安な気持ちや切なさがじわっと残るような終わり方をします。でも、その日々がどれだけ美しくて尊かったかが『消えなさいローラ』で見えてきて、台本を読んだときの後味がガラッと変わりました。ローラも、口数が少ないイメージだったのが、『消えなさいローラ』では、それまでの溜まりに溜まったフラストレーションを爆発させているかのようにすごく情熱的。えりさんがおっしゃるには、別役さんが書かれる作品の多くが自己や自己のアイデンティティに迷う人の物語で、この作品もまさにそうなのだとか。実際、ここに出てくるローラも、途中からローラなのかアマンダなのかわからなくなっていって、台本上の役名も“女”という表記になっています。自分という存在は不確かで、それを認識してくれている他者がいなくなってしまえば、まるで存在していなかったかのように消えていく。その切なさとか、逆に、誰かがいることで確かになる、ある種の生命力を大事に演じたいと思っています」

母・アマンダはその渡辺さんが、弟のトムは尾上松也さんが演じる。

「トムはストーリーテラーの役割も担っているので、この役がブレるとすべてがブレてしまうと思うのですが、松也さんがしっかりと基盤を作ってくださっています。例えると、枠組みが木じゃなくて鉄でできているような(笑)安心感というか。アマンダは娘や息子に言葉で圧をかけるような役なのに、えりさんが演じることで、口うるさいけれどとても愛情深いお母さんになるから全然嫌な気持ちにならない。むしろ毎日顔をつき合わせて、ケンカしながらもコミュニケーションをとっていた古き良き日本の家庭みたいに見えてくる。娘として相対していても自然と心が開くので暗くなりようがなくて、母親がこうだとこんなふうに娘は育つんだなって思っています(笑)」

『消えなさいローラ』は二人芝居。松也さんの相手を、渡辺さんと吉岡さん、そして和田琢磨さんの3人が日替わりで務める趣向もユニーク。

「間違いなく、三者三様のお芝居になると思います。スタミナのあるトムでよかったです(笑)」

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『ガラスの動物園』『消えなさいローラ』 大恐慌時代のアメリカ。工場で働く文学青年のトム(尾上)は、口うるさい母・アマンダ(渡辺)と極度に内気な姉・ローラ(吉岡)との暮らしに閉塞感を抱いていた。ある日、娘の将来を憂う母の働きかけで、トムが職場の同僚・ジム(和田)を家に連れてきた。彼はかつてローラが憧れた相手で…。上演中~11月21日(火) 新宿・紀伊國屋ホール 『ガラスの動物園』作/テネシー・ウィリアムズ 翻訳/田島博 『消えなさいローラ』作/別役実 上演台本・演出/渡辺えり 出演/尾上松也、吉岡里帆、和田琢磨、渡辺えり 全席指定1万円 Bunkamuraチケットセンター TEL:03・3477・9999(10:00~17:00) 山形、大阪公演あり。https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/23_Glass_Laula/

よしおか・りほ 1993年1月15日生まれ、京都府出身。昨年主演した映画『ハケンアニメ!』で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。現在放送中のドラマ『時をかけるな、恋人たち』(フジテレビ系)に主演。

ピアス¥133,100(シャルロット シェネ/エドストローム オフィス TEL:03・6427・5901) その他はスタイリスト私物

※『anan』2023年11月15日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・ちばひろみ ヘア&メイク・北原 果 インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)

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