
日本だけでなく、いま世界中の応援の現場に欠かせない存在・着ぐるみ。その製作でトップを走るのが、宮崎県にあるこちらの会社。これまでに作った着ぐるみはなんと4000体以上。その裏側に迫ります!
Index
お話を聞いた会社
Information

KIGURUMI.BIZ
1990年創業の舞台美術や舞台衣装を製作する会社を前身とし、2012年に法人化。オリジナルの着ぐるみ製作を中核に。国内外で4000体以上の製作、輸出17か国以上の実績が。現在は1年に150~200体ほどを製作。社員の90%が女性であり、女性が働きやすい会社としても評価が高い。

ビズベア
2010年に誕生した、こちらの会社のマスコットキャラクター。黄色い鼻のこの子の他に、緑の鼻のお兄ちゃん、ピンクの鼻の妹が。国内外のイベントに登場します!
お話を伺った方
Profile
加納ひろみ
代表取締役。宮崎県出身。Appleほか外資系企業勤務の後1998年に前身会社に入社、2017年代表取締役に就任。著書に『幸せな着ぐるみ工場』(日本経済新聞出版社)が。
スポーツの試合、エンタメのイベント、あるいは企業の新商品発表会。あらゆるところに登場し、いろんなものを応援してくれる、着ぐるみたち。見かければ嬉しくなるし、手を繋いだりギュッと抱きつけばなんだか幸せ…。私たちに力を与えてくれる着ぐるみが、どんなふうに作られているのか知りたい! ということで、着ぐるみ界のトップランナーである製作会社「KIGURUMI.BIZ」の代表取締役である加納ひろみさんに、お話を聞きました。
「前身の会社を含めると、もう30年以上着ぐるみを作っているのですが、初めてオーダーをいただいた当時は着ぐるみの作り方やパターン(型紙)の起こし方といった情報は皆無。当然ネットも今ほど充実していなかったので、自分の洋服を分解したりしながら、一から自己流で学んでいきました。最初はなかなか上手くいかなかったものの、繰り返し作るなかで、あるときパンダの着ぐるみが本当にきれいなシルエットで完成したんです。やっと自分なりの着ぐるみ作りを掴めた気がして、すごく嬉しかったのを覚えています。“もうどんなオーダーがきても怖くないぞ!”と思いました(笑)」
夫と2人で作っていた時代を経て、2012年に会社を法人化。今は26名の社員、工場長と共に、年間150〜200体の着ぐるみを手掛ける会社へと成長。会社のホームページに掲載されているこれまでに作った着ぐるみの写真リストを見ると、有名なキャラクターからローカル色の濃い個性的な着ぐるみまで、まさに着ぐるみ百花繚乱。どんな注文にも応えるという確かな自信を感じます。
「着ぐるみは平面で描かれているキャラクターを立体化するわけですが、多くのキャラクターはちょっと頭が大きく描かれていることが多いので、そのまま立体化すると、頭でっかちでちょっと怖い印象になってしまうんですね。さらに、キャラクターによっては正面しか描かれておらず、横向き、後ろ向きが設定されていない。そこを考案することも含め、“着ぐるみとしてかわいい形”に、デザインを調整していく作業が必要になります。キャラクターの魅力とオリジナリティを崩さずに、いかに着ぐるみとしてかわいく成立させるか。その作業が、初期段階の山場のひとつだと思います」
着ぐるみを作り始めて30年以上。取り巻く状況は本当に大きく変わった、と加納さん。企業や自治体のキャラクターに加え、最近はVTuberやアニメ、ゲームのキャラクターを着ぐるみにしたいというオーダーが増加中。
「もともと着ぐるみは、“重い・暑い”というのが課題だったのですが、空気で膨らますエアータイプの登場でそこが解消されました。そして、かつては着ぐるみをあちこちに移動させることはあまりなかったのですが、今は国境を越えてイベントに呼ばれたりもする。登場回数が増えると、移動しやすい=運びやすさが求められるようになり、いま我が社の製造比率で言うと、折りたたんでスーツケースに収納できるエアータイプが約半分くらいを占めています。またAIの進化もあり、ロボット的な着ぐるみを作る会社も出てきているので、この先どんなタイプが増えてくるのか気になります」
これまでに作ったのは…
着ぐるみを作る上で一番大切なのは、クライアントが納得し、喜んでくれるものを作ること。珍しい色を使ったキャラクターの場合、自社で糸を染め、ボア生地を作るところから手掛けることも。
「量産品ではなく1点ものですから、お客様の熱意も高い。“おまかせします”というよりも、“一緒に作りたい!”という方が多いです。結果、打ち合わせも長く、また回数も増えるのですが、こちらとしては良いものを作るためのヒントをたくさんいただけるので、ますます頑張ろうという気持ちになります。ただ、やり直しがきかないモノづくりでもあるので、石橋を叩きながら、叩きながら作っている感じですね(笑)」
応援とは、その先にハッピーが待つと信じて行う行為なのでは、と加納さん。着ぐるみの中には応援される側・する側が持っている愛や思いが詰まっていて、彼らはそれを、世の中に伝えるメッセンジャーなのでは、と言います。
「着ぐるみを前にするとみなさん笑顔になりますし、実際に握手をしたりハグをすると、幸せホルモンのオキシトシンが分泌されるということが、科学的に証明されているんです。私は着ぐるみは、幸せを届ける存在であってほしいと思います。もし抱きつける環境であればぜひハグをして、愛とパワーを貰ってくれたら嬉しいです」
知っておくと楽しい! 実は着ぐるみにはこんな種類が…
“着ぐるみ”には、実はいろんな形があるらしい。どんな場所で使うか、持ち運びが多いか、どんなふうに動くかなど、総合的な観点からどの種類で立体化するのが良いかを判断します。
すべてはチームワークの賜物。オーダーから完成までの道のり
「この子を着ぐるみにしたい…」。たった1枚の絵から始まることもある着ぐるみ作り。実際どのように進むのか、工程を追って、説明していきます!
STEP1|クライアントと打ち合わせ

まずはどんな場所やシチュエーションで使うのか、どう動かしたいのかといったことをたくさんヒアリング。また、正面の絵だけの用意の場合、横向き・後ろ向きのデザインを考案することも。エアータイプなど、どの構造にするかを決め、図面を起こし、使う素材も選んだら、再度クライアントと相談。先方の確認がとれたら、製作スタート。
STEP2|社内会議を経て、各チームが動き出す!
4つのチームから代表が集まり分業方法を会議。図面や使う素材などを見ながら、「この形の靴だったら、縫ったほうがいいから縫製チームに頼もう」「この脚は布を貼ったほうがきれいに仕上がりそうだからボアチームが」など、各チームの得意分野に当てはめながら、どのチームが担当するかを決める。
STEP3|中間検査で、各チームが作ったパーツを合体し、社内&お客様にも確認
各チームごとに作業を進めながら、ときどき集合して進捗を報告。「この部分はこっちの高さに合わせたい」であったり、「ここはもう少し広く削ってほしい」など、細かいことをすり合わせながら、ある程度出来上がったところでそれぞれ作ったパーツを合体。クライアントにも確認をしてもらい、問題がなければ仕上げに向かって一直線!
STEP4|完成! そしてクライアントの元へ旅立ち…

完成したら、最後にアドミチームが、出荷前の検針や検品を担当。自ら着用し、不具合はないか、クライアントの希望通りに出来上がっているかを確認。問題がなければ梱包をし、クライアントの元へ発送。「海外に旅立つ場合、もう二度と会えないかもしれない…。ちょっと切なくなることもありますが、幸せを祈って送り出します」(加納さん)
anan 2513号(2026年9月30日発売)より












































