避妊の方法にはどんなものがある? 知っておきたい“生理・妊娠・避妊”について

ビューティ
2023.08.20
体と体を重ね合うセックスは、幸せでとても気持ちのいいものですが、無防備な状態で行う行為でもあるので、そこにはさまざまな落とし穴もあります。

「意外と忘れがちですが、“生理がある体は、妊娠できる体”です。自分の体の自己決定権を守るために、まずは、そのことを覚えておいてほしいです」(産婦人科専門医・稲葉可奈子先生)

またここ数年は、若い世代に性感染症が広がっていることも見逃せない。ちなみにそれは日本だけでなく、世界的な流行だそう。

「ananの読者世代の女性たちにとって、性感染症はあまり自分とは関係のない病気だと思うかもしれません。でもこの病気も、セックスとは背中合わせの間柄。セックスをする以上、絶対にうつらないとは言い切れません」(産婦人科専門医・川名敬先生)

安全な状況で楽しくセックスをするために必要なのは、自分の体や性感染症などに関する知識。正しい知識を身につけさえすれば、安心して体を委ねることができる。

生理と妊娠、避妊

生理や妊娠、そして避妊。なんとなく知っているようで、実はきちんとした知識が身についていないかも…? 今年の新しい動き“経口中絶薬”の承認についても解説します。

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生理

月に1度、“妊娠への準備”をリセット。ある・なしのコントロールは自分でやっていいんです。
生理とは、女性が妊娠するための体のシステム。人間の場合はほぼ毎月1度排卵が起こり、同時に子宮の内膜が厚くなり、受精卵が着床しやすい“ふかふかのベッド”のような状態を作る。卵子が受精しなかった場合、子宮内膜は剥がれ落ち出血となって体外に排出されますが、これがいわゆる“生理”。

「毎月生理があるということは、毎月1度排卵があるということ。実は排卵のたびに卵巣に負担がかかっており、昔に比べて生理の回数が多いことが女性特有の病気のリスクを高めている可能性が。そして長期間卵巣を休めたほうが妊娠率が高いというデータも。今すぐ妊娠を希望していないなら、後述の方法で排卵を止めたり、回数をコントロールするという選択肢も。ごく自然な状態で生理が来ないのは放置してはいけませんが、お医者さんの診察のもとコントロールするのは体に悪いことではありません」(稲葉先生)

妊娠

腟を通った精子が子宮に入り、卵管で卵子と出合って受精。着床して成長するのが、妊娠。
卵巣から排卵された卵子は、腟に挿入された男性のペニスから射精された精子と卵管の中で出合い、受精。受精卵はそこから細胞分裂を繰り返しながら子宮に移動し、ふわふわの内膜に着床すると、自然妊娠が成立したことに。

「卵管など子宮以外に着床してしまうのが“子宮外妊娠”。これは危険なので、妊娠したら必ず受診し、子宮外妊娠でないことを確認しましょう。排卵のタイミングはおおよそ28日ごとといわれていますが、突然生理が早く来た、あるいは何日か遅れて来た、といった経験は、ほとんどの人にあると思います。女性の体は敏感なので、ちょっとしたことで排卵日はズレる。排卵日をぴったり予測できるとは限りません」(稲葉先生)

【排卵から受精、そして着床のしくみ。】

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卵巣から飛び出た卵子は卵管に取り込まれる。1回の射精で放出される1億以上の精子の中からたった1つの精子だけに受精の権利が。

避妊

「避妊は男がすべきもの」ではありません。妊娠を望んでいないなら、自分の体のために主体的な避妊を!
生理がある=妊娠できる体である、そして妊娠しうる行為なので、セックスをすれば、子どもができる可能性があります。

「いま妊娠を望んでいなければ、自分の体の自己決定権を持つために、妊娠しないように避妊の手段をきちんととることがおすすめです。日本で避妊というとコンドームを想像する人が多く、その流れで“男の人がすること”というイメージが根深いですが、低用量ピルやIUD・IUSなど女性が主体でできる避妊法もあるので、ぜひそれらについて考えて」(稲葉先生)

また、自分がピルなどを使って避妊していることを、セックスする相手に必ずしも伝える必要はない、とも。

「避妊はあくまでも、“自分の身を守るため”のもの。性感染症予防の観点から考えてもコンドームは使ったほうがいいですし、女性側が避妊しているからといって、男側がコンドームを使わなくていい、というわけではありません」(稲葉先生)

主な避妊の方法

・【低用量ピル】毎日1錠飲むだけで避妊率は90%以上。初潮が来たら、何歳からでも飲めます。
女性ホルモンを2種類含む薬。毎日1錠決まった時間に飲むことで、女性ホルモンの量が低く一定に保たれ、排卵が止まり、子宮内膜が薄くなる。生理時の出血や痛みが減り、排卵時の粘度の高いおりものも抑制される。

「月経困難症などの治療目的の場合は保険が適用されるので、ジェネリック薬品であれば月800円くらいから+診察料で処方が可能。避妊目的の場合は自費になるので、月2000円前後+診察料の負担。オンライン処方も可能ですが、トラブルが起きたときすぐに相談できる婦人科が近くにあると心強いので、ぜひ受診を」(稲葉先生)

・【アフターピル】“その1回”を凌ぐために使う薬。現在は病院処方、近々薬局でも販売か?
コンドームを着けなかった、あるいは途中で破れてしまった、ピルを飲み忘れたなど、いろいろな事情で避妊ができていない状態でセックスをした場合、性交渉後72時間以内に服用することで、避妊ができるかも…、というのが、緊急避妊薬、通称“アフターピル”。

「メカニズムとしては、排卵を1週間遅らせ、受精を防ぐというもの。ただ逆に1週間後は必ず排卵があるのでそのタイミングは妊娠の確率が高まります。またセックスの前にすでに排卵が起きていれば、そのまま妊娠してしまう可能性はあります」(稲葉先生)

・【IUD・IUS】子宮の中に入れる小さな器具で、着床などを阻害。5年程度使えます。
女性の子宮の中に入れる小さな避妊具。いずれも一度体に入れると5年間使用可能。

「IUSや〈ミレーナ〉と呼ばれるタイプは、放出された黄体ホルモンが子宮内膜の厚膜化を阻止する他、子宮の入り口の粘液を変化させ精子の侵入を防ぐ効果が。過多月経や月経困難症の治療として、保険で約1万円の負担です。避妊目的の場合は、精子の運動機能をなくし受精を阻止するIUDを使用。自費負担で費用は病院により異なります。いずれも排卵を止めるわけではなく、着床を妨げる形で避妊をします」(稲葉先生)

・【コンドーム】最も安く、そして手軽に使える避妊具。でも避妊効果が高いわけではないので注意。
男性の性器にかぶせ腟内に挿入することで、女性の体内に精子が入ることを物理的に防ぐ、コンドーム。

「日本人には“避妊法といえばコンドーム”というイメージが強いですが、実はコンドームは、“性感染症の予防具”として着けるものなので、避妊の効果がものすごく高いわけではありません。ただ前述のように性感染症予防の観点から考えるととても大切ですし、ピルやIUSなどと併用することで避妊効果は上がります。使用の注意としては、射精の直前ではなく、セックスの最初から装着すること」(稲葉先生)

いま注目が集まっている〈経口中絶薬〉とはどんな薬?

妊娠したものの、さまざまな理由で出産できない。そんな場合は中絶という選択肢を選ぶことも。

「中絶とは、子宮の中の胎児を含めた妊娠組織を子宮の外に出すこと。これまで日本では手術という方法だけでしたが、今年から“経口中絶薬”を使った、薬を飲んで中絶する、という選択肢が増えました」(稲葉先生)

手術は、吸引法で行う病院が多い、と稲葉先生。一方の経口中絶薬は、子宮の収縮を促し、内容物を排出させる。使えるのは妊娠9週までの人だそう。

「しかし、服用から何時間後に排出されるかがわからないことや、激しい腹痛が長時間続いたり、なかにはお産より大量に出血するといったケースも。トラブルにすぐ対処できるよう、現在は24時間受け入れ態勢がある、または入院施設がある病院に限っての処方となっています。選択肢が増えたのはとてもいいことですが、必ずしも心身ともに負担が軽いわけではないことに注意して選択を」

稲葉可奈子先生 産婦人科専門医、関東中央病院産婦人科医長。「みんパピ! みんなで知ろうHPVプロジェクト」代表。子宮頸がんワクチン予防や性教育などに関する情報などを、SNSなどで発信中。ツイッターは@kana_in_a_bar

川名 敬先生 産婦人科専門医。日本大学医学部産婦人科主任教授、日本性感染症学会監事。性感染症学、婦人科のがん治療、HPVワクチンなどのスペシャリスト。近年性感染症に関してNHKの番組などにも出演し、啓発に努めている。

※『anan』2023年8月16日‐23日合併号より。イラスト・ながたなつき 性教育いらすと

(by anan編集部)

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