不動産会社の経営者が教える! 選んではいけない、後悔する「マンションのNG物件・間取り」
NG1 エアコンが取りつけられない物件
たとえば納戸のスペースを、リビングやベッドルームなどにしたいと考えてリフォームを計画したとします。ですが、中古マンションのなかには、構造上の問題でエアコンが設置できない部屋があるため、注意しなければなりません。
エアコンを設置するためには、冷媒が通る配管パイプと、連絡電線、水を排出するドレンホースを通す穴(エアコンスリーブ用の穴)、さらには室外機を設置するスペース(室内機を設置した壁の真裏側であるベランダか開放廊下に置くのが一般的)が必要となります。
これらが整っていればいいのですが、配管パイプやエアコンスリーブ用の穴が開いていない場合や、エアコン専用のコンセントがない場合、壁に穴を開けたり、コンセントを取り付けるための工事を行ったりしなくてはなりません。
マンションの壁や開放廊下、ベランダ等は専有部分ではなく、マンション住人全員で使う「共用部分」という扱いになります。そのため、管理組合に相談することなく勝手に工事を行うことができない場合もあるのです。
さらに、築年数が古いマンションでは電気の容量が低いことが多く、30A(アンペア)程度の物件も少なくありません。エアコンと同時に複数の家電製品を使用すると、電気の容量を超えてしまうため、新しくエアコンを取り付けること自体、難しくなります。
中古物件を検討中で、エアコンのない部屋をリフォームしたいのであれば、
- エアコンスリーブがあるか
- 室外機が置けるスペースがあるか
- エアコン用のコンセントがあるか
- 電気の容量は足りているか
以上のことを確認するとともに、エアコンの取り付け工事が可能かどうか、管理組合に問い合わせてみるのが安心でしょう。
NG2 水回りが理想の場所にない物件
中古マンションをリフォームする際、「キッチンやトイレなど、水回りの位置を変えたい」という声はとても多いのですが、これがなかなか簡単ではありません。その原因は「PS」の位置にあります。
「PS」とはパイプスペースの略で、給水や排水に必要な管をまとめている空間のこと。洗面所、キッチン、お風呂などから出る「生活雑排水」と、トイレの「汚水」を分けているため、一般的なマンションでは「PS」は2箇所以上であることが多いです。
「PS」もまた壁やベランダと同様、共用部分という扱いであり、排水時の音の問題や、上階から下階まで縦に配管されている構造上の造りから簡単に移設することができません。マンションによっては配管を移動させることを規約で禁止している場合もあります。
禁止されていないにしても、自然に水が流れ込むよう、排水管に勾配をつけなければならないため、「PS」のある場所からあまりにも遠いエリアに水回りを作ることは難しくなります。つまり、「PS」の位置によって間取りが決まっている(変更できない)と言っても過言ではありません。
水回りに関して理想の間取りがある方はとくに、「PS」の位置をしっかり確認しておくことをおすすめします。
NG3 換気の悪い物件
2003年に施行された建築基準法で、すべての住宅に24時間換気システムの設置が義務付けられました。24時間換気システムとは、家の中の空気を自動的に循環させて空気の入れ換えを行い、部屋の換気を行う設備のこと。
2003年7月以降に建築が計画されたマンションであれば問題ないのですが、それ以前の物件では、24時間換気システムが設置されていないことがあり、うまく換気ができていない場合があるため注意が必要です。
「古い物件であっても後付けすればいい」と思う方もいるかもしれません。ですが、1でも紹介した通り、マンションの壁は共用部分ですから、管理組合への相談なしに設置することは難しいのです。
また設置するためには最低でも35㎜のパイプを取り付ける必要がありますから、壁に大きな穴が開けられない構造の物件では、そもそも設置自体ができないということになってしまいます。
24時間換気システムを設置していない物件では、将来的に、結露やカビに悩まされる可能性も出てきます。古い物件をご案内しているとき、壁紙にまでカビが広がっていることがありますが、壁紙をはがしたら奥がどうなっているか……想像しただけでも恐ろしいです。
特に一般的に日当たりの悪い1階北側の物件の場合は注意が必要です。
2003年以前の物件を検討する場合、24時間換気システムが設置されているか、設置されていない場合後付けは可能か。また、現時点でカビっぽくないか、換気の状況はどうか――。そのあたりのこともしっかりチェックしておいてください。
Information
<教えてくれた人>
石岡茜さん。2013年に「女性のための不動産会社を作りたい」と、東京・学芸大学に「ことり不動産」を設立。女性ならではの細やかな視点と「幸せな家選び」をモットーに、物件選びをサポートしている。宅地建物取引士。著書に『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)がある。
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取材、文・髙倉ゆこ
©Mustafa/Adobe Stock