BTSメンバー初のソロツアー! SUGAとしてAgust Dとして、ファンと一体となって作り上げたD-DAY TOUR完全レポ

取材、文・本田珠里 — 2023.6.13 — Page 1/2
BTSとして10周年を迎えた2023年。各メンバーが本格的にソロ活動を始める中、’16年にAgust D名義で『Agust D』、’20年に『D-2』をミックステープとして既に発表していたSUGAが、今年4月にAgust Dの3部作最終章としてリリースした『D-DAY』を引っさげて、メンバー初のワールドツアーを開催。今回はその『SUGA / Agust D D-DAY TOUR』の日本公演最終日をレポートします。

メンバーの想いをのせて、ソロツアーに挑んだSUGAの約束。「100%の僕は、次に7人で日本に来た時に確認してもらえると思います」


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大きなスクリーンをバックに、フロアがスケルトンになったステージ。ソロアーティストとして、どんな姿を見せてくれるのか期待が膨らむなか、映画のワンシーンのようなVCRが流れる。雨の中で倒れているラストシーンを再現するように、オールブラックの衣装に身を包んだ仰向けのSUGAが、ダンサーに抱えられて「Haegeum」のイントロでもある伝統楽器・奚琴(へグム)の音と共にステージに登場。

Agust Dのキラーチューンでもある「Haegeum」と「Daechwita」で幕が開いたステージ。バンド編成で編曲され迫力の増したサウンドで、客席のボルテージを一気に最高潮まで持っていくのは、まさに“バンタン(BTS)スタイル”だ。
息つく間もなく、ソロ名義の名刺代わりとも言える楽曲「Agust D」へ。自然とコール&レスポンスが始まると、「みなさん、こんばんは。D-DAYツアーにようこそ! 日本で最後の公演です。全力でいきます。みなさんもそうですか?」と叫んだSUGAは、立て続けに「give it to me」まで、Agust D三部作のメイン曲を一気に披露。


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圧巻のオープニング4曲が終わると、汗だくのSUGAがニッコリとほほ笑み、「みなさん、こんばんは。SUGAです。みなさんに会えてうれしいです。日本でのソロコンサートは初めてで、すごく楽しみでした。もう最後の公演で寂しいです」と日本語で挨拶。先ほどまでの鋭いイメージから一変した姿に歓声が上がる。「BTSのSUGAとしては、初めてお見せするステージをたくさん準備しました。楽しみですか? …本当に?」と客席を見渡し、ニヤリと笑う。

椅子に座ったSUGAが、メンバー全員からのメッセージが書かれたギターを手に取り、BTSのソロ曲「Trivia轉: Seesaw」のイントロを爪弾くと、スクリーンにゆっくりとギターのボディが映し出される。まるでAgust Dから、BTSのSUGAにバトンタッチしたように、アコースティックバージョンの「Seesaw」をしっとりと歌い上げる。


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続いて、ステージの一部がむき出しになったフロアに降り立ち、ソファに座って「SDL」、ステージ上で「People」を熱唱。途中で咳き込みながらも、一緒に大合唱するARMYを見てうれしそうなSUGAがスクリーンに映る。「みなさん、一緒に歌いましょう」と、「People Pt.2(feat.IU)」が始まると、IUのパートを完璧に歌うARMYとSUGAがデュエットしているような愛おしい光景が広がる。

「雰囲気を変えてみました。もっといろんな人生の話を描いてみたいと思います。一番スローダウンなセクションが終わったので、もう一度雰囲気を変えてみましょうか?」と始まったのは「Moonlight」。歌詞にも含まれる、韓国ではNGワードとされる言葉を思い切り叫び、いたずらっ子のように笑ったSUGAは、ハイテンションのまま真っ赤に染まったステージと火炎に包まれて「Burn It(feat.MAX)」を熱唱し、クールにステージを退場。


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VCRが終わると、激しいレーザー光線とともにBTSのソロ曲「Interlude : Shadow」が流れ、全身真っ白な衣装に着替えたSUGAが登場。ラップラインの楽曲「BTS Cypher Pt.3: Killer」、「BTS Cypher 4」、「UGH!」、「DDAENG」に加え、Agust DとしてJ-HOPEをフィーチャリングした「HUH?!」と怒涛のメドレーへ。演出も、レーザーや映像、ダンサーをフル活用したBTS公演並みの壮大なスケールで魅せる。また、高速ラップにヘッドバンキング、ペットボトルの水をかぶるなど、自身のラッパーとしての実力と存在感をこれでもかと見せつけた。


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MCでは「メンバーがいなくて一人で歌うと、すごく寂しいですね。でもみなさんが一緒に歌ってくれて心強かったです」と伝えた。そして、突然「みなさん、もう一回いきましょう!」と「BTS Cypher 4」のフックをドスの効いたアカペラであおり、また豹変したように「AMRYしか勝たん!」と褒めてくれる、塩と砂糖のギャップも彼ならではの魅力だろう。そのせっかくの褒め言葉がうまく聞き取れず即反応できなかったARMYに、韓国語で「あれ、違うのかな? 流行ってるって聞いたんだけど…」と、戸惑ったように呟くかわいい姿も。

再びフロアに降りて、ピアノ演奏を披露したのはAgust Dバージョンの「Life Goes On」。どこか肩の荷が下りたように、そして幸せを噛みしめるように、透明感あふれる姿と声で魅了する。暗転したスクリーンに、ピアノの前で談笑する故・坂本龍一さんとの姿が映り、坂本さんがSUGAの肩を抱いて「いい子だ」とつぶやき、“長い旅路が平穏でありますように”と追悼の言葉で終わった映像に、自然と会場から拍手が沸き起こる。「Snooze(feat.Ryuichi Sakamoto, WOOSUNG of The Rose)」で、「墜落が恐ければ喜んで受けて止めてあげる。大丈夫、きっとうまくいく」と訴える姿に、会場はもちろん、オンライン配信で見ていた全世界のARMYが感動したことだろう。

メッセージ性の強い「Polar Night」へと続き、中央ステージだけを残して周りのステージも全て撤去されると、いよいよ佳境に差し掛かったことを知る。「みなさん、本当に盛り上がってますか? ほんま盛り上がってますか(笑)? 僕もとっても幸せな時間でした。あっという間の3ショーでした。最後のステージも全力で楽しみましょう。準備はいいですか? Make some noise!」と叫び、本編最後の曲、「AMYGDALA」へ。自身のトラウマを保存する役割を果たす扁桃体という意味を持つこの楽曲で、彼は自らのつらい過去の記憶を吐露している。BTSのSUGAではなく、Agust Dというアーティストとして表現することを選んだ個人としての思いの丈が詰まった曲を、あらん限りの声で歌い上げたSUGAはステージの上で再び倒れ、運ばれていく。


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自身の過去から現在をストーリー仕立てにした、1本の映画のようなVCRもここでエンディングを迎える。アンコールでは、Tシャツとジーンズというラフな姿で、ステージがすべて撤去されたフロアに現れたSUGA。「D-DAY」を披露しながら楽しそうにハイタッチをしていると、「あ、歌詞間違えちゃった」と苦笑していたが、それを補うように合唱するARMYの声にうれしそうに耳を傾けていた。

「日本での公演はいつも楽しくて幸せです。これからは韓国語で話します」と最後のMCへ。(以下、韓国語)「今日は最終日です。ご覧になっていてお分かりだと思いますが、実は100%のコンディションではありません。今は60、70%くらいまで上がっていると思います。でも……! ライブはどうでしたか? 100%だったらどうなると思いますか? それは次に僕が来た時に確認してもらえると思います(笑)。3日間、本当にいい思い出を作ってくださって、ありがとうございました。次に僕が日本で公演する時は、7人でやります。今日は本当に楽しかったです。みなさんにとってもいい思い出として残りますように」と、BTSとして来日の約束をしてARMYを喜ばせた。

再び日本語で感謝を伝えたSUGAは、BTSの楽曲「Intro: Never Mind」をファンと大合唱。「ミン・ユンギ」コールが湧き上がる中、フロア中央で四方に囲まれたカメラの前に立ってすべてをさらけ出すように「The Last」を披露すると、颯爽とステージを立ち去り深い余韻を残したまま、自らステージの幕を下ろした。

自身のコンテンツで「ソロツアーを準備しながら、演出面でも新しい発見があった。他のメンバーがソロツアーをするときに助言できるよう、このタイミングで自分がやらなければと思った」と語っていたSUGA。新たなことに挑戦し続けるのはチームのため、というSUGAの思いは、全世界のARMYにも、そしてメンバーにも伝わったに違いない。
6月24、25日のソウル公演で締めくくられるD-DAYツアーは、オンライン配信も決定している。Agust Dの、SUGAの壮大な物語の全貌は、是非その目で見て体験してほしい。

Information


Agust D

<Agust D>
BTSのメンバーSUGAのソロ名義。SUGAの出身地である大邱の英語表記「Daegu Town」の頭文字DTとSUGAをつなげて語尾から読んだ名前。BTSのSUGAとしては表現できない、幼少期からのトラウマをストレートな歌詞で表現するアーティストとして、’16年にミックステープ(プロモーションのための無料配布)形態で『Agust D』を発表。’20年に発表した2作目のミックステープ『D-2』は、米ビルボードのメインチャートにもランクインした。’23年4月にはAgust D三部作の最終章として『D-DAY』を、正規アルバムとしてリリース。発売初日から韓国でミリオンを達成、米ビルボードでもK-POPソロ歌手最高順位のにランクインするなど大きな反響を呼んだ。


https://bts-official.jp/

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