夏帆、『いつぞやは』は「セリフの複雑なニュアンスを汲み取って表現していくことが求められる」

2023.8.27
昨年にドラマ『きれいのくに』で市川森一脚本賞を、今年、舞台『ドードーが落下する』で岸田國士戯曲賞と、『もはやしずか』『ザ・ウェルキン』で読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞するなど注目を集める加藤拓也さん。夏帆さんにとっては、今回の新作舞台『いつぞやは』が2018年の短編映画『あおいろなおし』以来の加藤作品への出演となる。
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「前回は撮影が1日だけだったんです。しかもその作品はわりとハッピーな話だったんですが、のちのち舞台を拝見させていただくようになったら、普段書かれるものは全然違う。今回、縁あってまたご一緒させていただけるのが嬉しいです」

夏帆さんが演じるのは、窪田正孝さん扮する一戸のかつての劇団仲間で、結婚を目前に控えた小久保。仲間が久々に集う中、一戸がステージ4の癌を患っていることを告白するところから始まる物語だ。

「加藤さんの舞台って、観るたびに言葉にできない気持ちが渦巻くんですよね。自分の経験とリンクするような瞬間があったり、考えさせられることがあったり、持ち帰るものはたくさんあるのに、それをうまく言語化しづらいんです。こういうお話でこう感じましたと簡単には言えない。でもそれが加藤さんの作品の魅力だと思いますし、今回の舞台もまさにそう。すごく共感するけれど、簡単に言葉にしちゃいけないような…そんな気がするんです」

まさにその、明確な言葉では説明できないような複雑で繊細な感情を描いていくのが、加藤作品の魅力。

「そこに書かれているセリフと、思っていることとが裏腹な場面がたくさんあって、そのまま素直にセリフを言ってもダメだったりするんですよね。セリフ自体が砕けたものだけに、サラッと口にしてしまうと、大事なことまで流れていってしまう。言葉の裏にある気持ちが複雑に絡み合って進んでいく話なので、セリフの複雑なニュアンスを汲み取って表現していくことが求められるというか。まだ今の私は、他の方のお芝居を見ながらそこを、こういうことなのかなって探っている段階ですね」

夏帆さんといえば、話題を呼んだドラマ『ブラッシュアップライフ』での、安藤サクラさん、木南晴夏さんとのリアルな“あるある”満載の生っぽいお芝居が記憶に残る。

「頭で考えてそこに辿り着くというより、現場で相手の俳優さんとやり取りしながら徐々に役ができていくことが多いんですよね。人って、他人との会話や関係性の中で、キャラクターというものが出来上がってくるものだと思いますし。やっていくうちに、役が馴染んできたなって思う瞬間があるんです。映像の現場だと、そうも言ってられないことも多いんですけれど」

昨年、向田邦子原作の『阿修羅のごとく』で6年ぶりに舞台に立ったが、「いまだに、立つと新人の気持ちになる」と話す。

「どうしてもまだ苦手意識はあって、慎重になってしまうんですけど…。ただ今は毎日、役者としても人間としても学ぶことが多いです」

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シス・カンパニー公演『いつぞやは』 ステージ4の癌であることがわかり、実家の青森に帰ることにした一戸(窪田)。帰郷を前に、かつての劇団仲間たちと集まるが、それぞれがそれぞれの事情を抱えていて…。8月26日(土)~10月1日(日) 三軒茶屋・シアタートラム 作・演出/加藤拓也 出演/窪田正孝、橋本淳、夏帆、今井隆文、豊田エリー、鈴木杏 全席指定9000円 トラムシート7000円 シス・カンパニー TEL:03・5423・5906(平日11:00~19:00) https://www.siscompany.com/itsuzoya/ 10月4日(水)~9日(月)に大阪公演あり。

かほ 1991年6月30日生まれ、東京都出身。近作に、ドラマ『silent』『ブラッシュアップライフ』など。Amazon Prime Video配信中の『モダンラブ・東京』で、荻上直子監督作の第4話「冬眠中のボクの妻」に出演。

トップス¥31,900 シューズ¥36,300(共にRhodolirion/NEPENTHES WOMAN TOKYO TEL:03・5962・7721) スカート¥41,800(Lautashi/BRAND NEWS TEL:03・3797・3673) ピアス¥10,120(graey https://graey.jp) その他はスタイリスト私物

※『anan』2023年8月30日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・李 靖華 ヘア&メイク・秋鹿裕子 インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)