窪田正孝「ずっとご一緒したいなと」 石橋静河と『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』で共演

2023.4.12
言葉、芝居、ダンス…境界線が融けた、ひとつづきの身体表現で魅せる『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』。シディ・ラルビ・シェルカウイさんが構成・演出・振付を手がける本作品に挑む、窪田正孝さん、石橋静河さんのインタビューをお届けします。
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窪田正孝:僕はお芝居は4年ぶりなんですけど、舞台って、常に丸裸で人前に立たされている感じがしていたんですね。役者は物語のなかで、「ここで悲しみを表す」など、流れがあらかじめ決められていたほうがラクなんだと思います。でも、舞台ではそれが通用しない。そこに一番の魅力を感じましたね。石橋さんは何作も舞台に出ていらして、ずっとご一緒したいなと思ってました。

石橋静河:嬉しいです。私もです。

窪田:『未練の幽霊と怪物―「挫波/敦賀」』(’21年)を観せていただいたんだけど、舞台での居方が独特でした。ダンスをされていたこともあって、軽やかさもありながら、立ったときには地面に根っこが生えているような印象。うまくセリフを言おうとかいうのとは、別のアプローチをされている。だから唯一無二な感じがするんでしょうね。

石橋:ありがとうございます。褒められすぎてちょっと恥ずかしいです(笑)。私は舞台が好きで、自分の居場所のように思っています。映像は、画面によって観る人の視点が定められます。演じながら、カメラと演出が迫ってくる気がして、ちょっと怖く感じるんです。

窪田:それ、よくわかるなあ!

石橋:だけど、舞台はお客さんがフォーカスを自由にあてられます。私は、舞台上で完結する物語より、観た人に解釈を委ねるような作品を割とやらせていただいていて、それが楽しいですね。『~ビヨンド』もその匂いがプンプンしています。

窪田:そうだよね。ストーリーはもちろんあるけれど、一冊の台本から肉付けして具現化していく作り方ではなく、みんなが動いて、アイデアを出し合い、ラルビさんがやりたいと思っているたくさんのことからチョイスしていく、外側から作っていく舞台になるんじゃないかなという気がしています。

石橋:そんな感じがしますね。

窪田:僕はいま、物語を伝えることよりも心情を伝えるほうに興味が向いているんです。そうしたら、コロナ禍以降、そういう作品に縁がつながっていきました。『~ビヨンド』もその一つ。情報で埋めすぎない、想像の余白を大事にした舞台にしたいです。

作る過程のセッションが面白いエンタメにつながる。

石橋:私は2020年のロックダウンのときに『未練の幽霊と怪物』が上演中止になってしまって。でも、作・演出の岡田利規さんのお声がけで、発表の目処もないままリモートで1か月ぐらい稽古を続けて、最後にはワーク・イン・プログレスとして配信で発表しました。その経験が私のなかで衝撃だったんです。

窪田:どんなふうに?

石橋:知らないうちに、作品がどう世の中に受け入れられるかや、興行・評価が一番大事なことと思い込んでいたと気づいたんです。発表予定もないのに稽古することに「意味あるの?」と言う人もいるかもしれないけど、その創作時間がものすごく楽しくて尊くて。試行錯誤しながらものを作る、過程の楽しさ、面白さは効率重視のなかで削られてしまいがちだけど、そこを楽しむことが結果、面白いエンタメを生むような気がして、大切にできたらと思います。

窪田:その通りだと思います。今回の作品なんて未知の領域、どうなるかわからないけれど、みんなでセッションし合って、エヴァンゲリオンというひとつのクラウドができればやる価値があるのかなと思います。いまは情報化社会になりすぎて、「知る」ことに重きを置かれがちだけど、知識よりも自分がどう感じて何を思うのかのほうが価値はあると思います。自分の感覚に蓋をするのはもったいない。余白のある演劇やエンタメには想像力を注ぎ込めます。そこを思い切り楽しんでいただけたらと思いますね。

THEATER MILANO-Zaこけら落とし公演 COCOON PRODUCTION 2023『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』 人生にかけられた重い枷。そこから目を逸らし生きてきた渡守ソウシ(窪田正孝)。贖罪、そして再生のため、彼は世界の秘密を解き放つ――。日程/東京公演・5月6日(土)~28日(日)THEATER MILANO-Za、長野公演・6月3日(土)・4日(日)まつもと市民芸術館、大阪公演・6月10日(土)~19日(月)森ノ宮ピロティホール 構成・演出・振付/シディ・ラルビ・シェルカウイ 上演台本/ノゾエ征爾 出演/窪田正孝、石橋静河、板垣瑞生、永田崇人、田中哲司ほか チケット/S席1万3000円 A席9500円(全席指定) Bunkamura TEL:03・3477・3244

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くぼた・まさたか 1988年生まれ、神奈川県出身。『ある男』(’22)にて毎日映画コンクール男優助演賞、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。公開待機作に『スイート・マイホーム』『春に散る』がある。
シャツ¥60,500 Tシャツ¥40,700 パンツ¥70,400 シューズ¥80,300(以上エムエム6 メゾン マルジェラ/マルジェラ ジャパン クライアントサービス TEL:0120・934・779)

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いしばし・しずか 1994年生まれ、東京都出身。初主演作『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(’17)にてブルーリボン賞新人賞ほか多数受賞。主な出演作に大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)など。
ワンピース¥253,000 ブーツ¥94,600(共にsacai TEL:03・6418・5977) ピアス¥17,600(JUSTINE CLENQUET/THE WALL SHOWROOM TEL:03・5774・4001)

Sidi Larbi Cherkaoui

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演劇やコンテンポラリーダンス、バレエ、オペラ、映画など多ジャンルで、独創的な演出・振付をし、世界中から注目を集める。受賞多数。’17年にはビヨンセのグラミー賞パフォーマンスの振付も担当した。日本では、『テ ヅカ TeZukA』にて、手塚治虫の漫画の世界、思想、「描く」という行為自体もモチーフに、森山未來らの圧倒的肉体表現と映像で、手塚を浴びるような劇場空間を創出。ワールドツアーも成功させ、3年後に『プルートゥ PLUTO』でも日本発の舞台を作り上げた。

※『anan』2023年4月19日号より。写真・森山将人(TRIVAL) スタイリスト・菊池陽之介(窪田さん) ヤマモトヒロコ(石橋さん) ヘア&メイク・菅谷征起(GARA/窪田さん) 秋鹿裕子(W/石橋さん) 取材、文・黒瀬朋子

(by anan編集部)