将棋のマンガだが、ルールを知らなくても十分に楽しめるマンガである。作者は、移民社会としての日本をSF的に描いた『バクちゃん』で話題を呼んだ、増村十七さんだ。
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「名人を目指す過程に焦点を当てたマンガは、読むのは好きなんですけど、自分が挑戦するようなものではない気がして。先人たちが描いていなくて、かつ気になっていたのが、トップの戦線に行くことのできていないプロの人たち。プロになった時点でみなさん天才といえますが、上には上がいるので一番になれない人はどういうモチベーションでやっているのだろうと思ったのです。そしてそれをコメディで描けたら、だいぶ読みやすいんじゃないかなと」

花四段こと花つみれは、プロのなかではピラミッドの下のほうにいる棋士。将棋にはごく真剣に取り組んでいるものの、対局中にちょくちょく雑念に惑わされてしまう。浮世離れした雰囲気は、たしかに並外れた頭脳を持つプロ棋士っぽいのだが、こちらが“つかめなさ”を感じるのには、実はこんな理由があった。

「この作品は最初にツイッターで発表しているのですが、ストーリーもキャラクターもまずはそこで反応を見て、だんだん固めていきました。第1話で、対局に関係ないことをいっぱい考えてしまう展開も、ギリギリまで勝敗を決めていなくて。だけどあそこで花四段が負けたことで、“負けてもいい将棋マンガ”になったんですよね。今思うと、あの選択は大きかった気がします」

花つみれの日常は些細な事件が頻発する。対局に向かう途中、工事現場でずぶ濡れになったり、対局時に昼食のメニューがなかなか決められなかったり、ネット中継の解説の仕事でハプニングに陥ったり……。笑いが幾層にも重なっている。

「棋士の方への取材で聞いたことや、配信を見て気になったことなど小ネタをストックしておいて、どんなエピソードとつなげられるか考えるんです。でもこれだけは言っておきたいのですが、実際のプロの方は本当に真面目で、このマンガほどふざけている人はいませんので(笑)」

2巻では、花四段を一方的にライバル視している友人の意外な一面や、女性初のプロ棋士を目指す、花四段の妹弟子の苦悩も描かれ、感情の振れ幅がより大きくなっている。

「プロ棋士は全員幼なじみといえる関係性で、子どもの頃から知っている相手と戦い続けています。だからこそお互いの過去の話が面白いというのも、描きながらわかってきました。3巻でどう動くかわかりませんが、花四段の過去を掘り下げるような展開も描いていきたいです」

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増村十七『花四段といっしょ』2 雑念多きプロ棋士・花つみれ四段と、将棋界の愉快な仲間の日常を描いたコメディ。最新話はTwitter公式アカウント(@hanayodan)で読むことが。朝日新聞出版 770円 ©増村十七/朝日新聞出版

ますむら・じゅうしち マンガ家、イラストレーター。2012年、「のんちゃん!の破壊☆日記」で商業誌デビュー。代表作に『バクちゃん』(全2巻)。

※『anan』2023年4月12日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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