「このマンガがすごい!2023」オンナ編第1位を獲得するなど各賞を受賞し、話題を集めているトマトスープさんの『天幕のジャードゥーガル』。13世紀、世界に名を轟かせたモンゴル帝国が舞台なのだが、構想はなんと10年以上。
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「学生の頃、世界史に興味を持ち始めたのですが、モンゴルって大草原の勇壮なイメージがありますよね。だけど国の仕組みや遊牧民の暮らしなどを調べていくと、先入観が覆されてどんどん好きになり、趣味で調べる時間が長く続いていたんです」

そしていよいよマンガにする段になって焦点を当てたのが、後宮、つまり女性たちの生き様だった。

「当初は歴史上、より有名なドレゲネ(チンギス・カンの三男オゴタイの第6妃)を主人公にするつもりでしたが、モンゴル帝国はスケールが大きいので動きのある人物がいいと思いました。それと私自身、イスラムの歴史も好きなので、そっちの世界から来た人を、と考えたのです」

シタラ、後のファーティマ・ハトゥンは、当時世界最高レベルの医療技術や科学知識を誇ったイラン出身。1巻は、奴隷でありながら高い教養を身につけたファーティマが、モンゴル帝国の捕虜となり後宮に仕えることになる、いわば序章にあたる。

「ドレゲネはファーティマというイスラム教徒の女性から意見を操られていた、などと歴史書には結構悪しざまに書かれています。だけど裏を返せば、侍女が国を操っていたという話は、マンガ的にも想像の膨らむ余地があって面白いと思いました」

2巻では、ファーティマとドレゲネの運命的な出会い、ファーティマ同様、モンゴルを憎むドレゲネの過去、チンギス・カン亡き後のパワーバランスの変化などが描かれ、いよいよ本編が動き出した感がある。

「話作りも、作画も時間がかかるのですが、調べ物をしている時間が一番長いかもしれません。この論文にヒントがありそうだけど、今から取り寄せていたら間に合わないから、国会図書館に行ってみようとか、そんなことの繰り返しです。絵に関しては、残っている中世の写本が平面的だったりするので、あえてそういったリアリティに寄らない描き方を真似してみたりもしています」

多くの人にとって未知の世界の物語が、こうして注目されることには素直に驚きと喜びを感じている。

「私が面白いと感じたことをそのまま描けば、きっと面白いと感じてくれるはずだと思っていましたが、こんなに共有できていいの!? という気持ちです(笑)。でもこの時代の面白さが認められて、嬉しいですね」

大帝国を揺るがす女性たちのドラマ、今からでも追いつけます!

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『天幕のジャードゥーガル』2 主人を殺されモンゴル帝国の捕虜となった女性が、後宮に仕え、知識を武器に復讐を決意。史実をもとにしたフィクション。マンガサイト「Souffle」で連載中。秋田書店 693円 ©トマトスープ(秋田書店)2022

トマトスープ マンガ家。主に中世~近世の世界史をテーマとしたマンガを制作。実在した冒険家をモデルとした『ダンピアのおいしい冒険』も連載中(既刊4巻)。

※『anan』2023年3月29日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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